6 魔女のお買い物!
十二月二十四日!
そう、クリスマスイブ!
今日もパパは朝からお仕事だけど、今日はおばあちゃんとママが私とエマをクリスマスの街へ連れて行ってくれるのだ。あと一月末の新学期に向けて、魔法学校で使う教科書とかも買いに行く予定だ!
パパも行きたかったみたいで、パパは玄関で泣いてた。
四人で坂道を下り、おばあちゃんの家から近いバス停でバスに乗る。二階建ての紺色のバスだ。もちろん二階の席に乗る。
エマはバスの座席からぴょんぴょんとお尻を浮かせて大はしゃぎだ。
住宅地を抜けると少しずつ建物が高くなる。
ガラス張りの大きなビルや白い石の古い建物がごちゃ混ぜの街でなんだか不思議だ。
十五分ほどバスに揺られ、スカイタワーの近くでバスを降りる。
あ、スカイタワーっていうのは、オークランドのシンボルタワーだよ。形はちょっとだけ東京のスカイツリーに似てるかも。私はスカイツリーの方がスマートで好きだけどね。
海のある方へ歩いていくと巨大なクリスマスツリーが見えてきた。
「ママ、見て! クリスマスツリー!」
エマが必死でママの手を引っ張って歩く。そんなに急がなくても、クリスマスは逃げないのに。
でも、私も手足がそわそわするから、気持ちは分からないでもない。
塩の匂いがする。海が見える広場に巨大クリスマスツリーがそびえ立っていた。
空気は夏なのに、街中クリスマスなのが本当に不思議だ。街を歩く人たちは、半袖だったりサングラスをしていたりする。
その後私たちは、オークランドのクリスマスを存分に楽しんだ。
クリスマスの飾りの前で写真を撮ったり、屋台を見たり!
エマはおもちゃ屋さんの大きなガラス窓にぴったりくっついて、しばらく動けなかったんだから。
ゆっくりクイーンストリートを見て歩いているとあっという間にお昼になった。
「ママ、お腹すいた」
エマが自分のお腹をさする。
私もそろそろ何か食べたい気分だ。
「じゃあ、そろそろエルドラド百貨店に行きましょうか」
とママが答えたその時。「おーい!」と手を振りながら、パパが走って来るのが見えて、皆して驚いた。
「あなた! お仕事は大丈夫なの!?」
「ハハハ、午後から休みを取ってきたよ。さあ、この街のどこに魔法の世界が隠れてるんだい?」
パパは写真を撮りたいのか、もうすでにスマホを構えている。なんだか目がこわい。
ママは、「仕方がない人ね」と言って肩をすくめた。
ママの案内で到着したのは、大きな古いデパートだった。
大通りに面するショウウィンドウには、マネキンがポーズをとって立っている。入っていく人たちも普通の人だ。どこが魔法使いのお店なんだろうか?
「ママ、ここって普通のデパートじゃない?」
聞いたのはパパだ。パパはどこに不思議が潜んでいるかずっとスマホを構えっぱなしだ。
「まあ見てて」
ママはさっと杖を抜く。デパートの入口、ガラスの扉についた金の取手を杖で、とんととんと不思議なリズムで叩いた。
すると自動ドアではないはずなのに、ガラスの重そうな扉が勝手に開いたのだ。
私とエマはびっくりして顔を見合わせ、パパはまたスマホを構え直した。
「さあ早く入って。早くしないと閉じちゃうから」
ママに急かされて、皆でデパートに入るとガラスの扉が閉まった。
中に入って、また驚いた。
さっき外から見えていた景色とは、全く違う世界が広がっていたからだ。
入ってすぐ。真っ先に目に入ってきたのは、大きな木だ。しかもこの木、ただの木ではない。幹は黒い普通の木のようなのだが、枝についた葉っぱが虹色に光っていたのだ。なんのためにこんなところに木が生えてるんだろう……
しばらく見ていると、隣のカラフルな瓶の並ぶお店から、三角帽子を被ったお姉さんが出てきて、葉っぱを数枚採る。そして、それを店の前の大鍋に入れるとぼわんと紫の煙が出たから、私もエマも飛び上がった。
よく見るとそのお店には、私とエマが杖を作るときに使った『Wand Colour《杖の色》』も並んでいる。絵具屋さんってこと?
「じゃあ、先にランチにしましょうか」
ママの後を大人しくついて歩く。
パパは大鍋の動画をスマホで撮っていて動かなかったので、おばあちゃんにつつかれて我に帰った。
「さあ、このテレポートストーンに乗って。レストランは六階だから、『6』って数字を言うのよ」
ママが案内してくれたのは、紫の平たい岩が置かれた場所だった。岩には金色の文字で何か呪文のようなものが書かれている。
おばあちゃんは使ったことがあるのか、エマの手を引いてテレポートストーンに乗って「6」と唱える。その瞬間、テレポートストーンがピカッと光っておばあちゃんもエマも消えてしまった。
「じゃあ、次はパパと杏でやってみて」
ママの言葉で私は恐る恐るテレポートストーンに乗る。
パパは「ちょっと、動画で撮っておいて」と、ママに自分のスマホを預けて、にっこにこの笑顔でテレポートストーンに乗った。
私はドキドキしながらも「6」と数字を唱えた。
ピカッとまぶしい光で、思わず目を瞑ってしまう。
「あぁ! 目閉じちゃった!」と横でパパが悔しがっている。
美味しそうなケチャップの香りがして、私はそっと目を開けた。
さっきまでいた一階とは違う景色が私たちを待っていた。
ドラゴンの絵が描かれたステーキ屋さん。オレンジ色の麺のパスタ屋さん。雲のようにふわふわ浮かぶパンにハムや野菜を挟んだサンドイッチ屋さんなど、たくさんのご飯屋さんが並んでいたのだ。
私とパパがテレポートストーンを下りるとすぐにママも現れた。
「エマ、パスタがいい!」「ドラゴンのステーキも捨てがたい」とパパとエマが言いあっている。大人げないよ、パパ。
「パパ、エマはお肉は固くて食べられないかもしれないから、パスタにしよう」
私がそう言うと、パパはしゅんとうなだれて、諦めた。




