15 ユニコーンを助けるぞ!
「お前たち、あの子供たちを捕まえて。私はジャックの相手をするわ」
ヴェロニカの命令で五人の下っ端が一斉に杖を抜いた。
「杏、ユニコーンを助けるぞ!」
私の肩に乗ってきたのは、タマちゃんだ。
「で、でもどうやって」
威勢のいいことを言ってヴェロニカを挑発したのは私だけど、策なんかない。
「やつらの隙をついて、俺様の魔法で一緒に檻の近くへ跳ぶ。杏はユニコーンに回復魔法をかけるだけでいい。ユニコーンは本来、あんなところで大人しくしている生き物じゃないんだ。回復さえしてしまえば、本来の力を取り戻すはずだ」
「時間稼ぎなら任せて。それくらいならできそうだ」
オリバーが制服のポケットからビー玉のような魔道具を出した。
メイジーも泉の水を操って、何匹も水の鳥を浮かばせる。
「手筈は承知した。この子たちのことは、俺が守ろう」
「ジャック……」
話に加わってきたジャックに、メイジーがうっとりして、水の鳥がみんな地面に落ちた。
「皆行くよ!」
皆がアーク団に向き直り、杖を構えた。
ヴェロニカのツタが伸びてきて、下っ端たちの出した葉っぱが緑の光を放ちながらこちらへ飛んで来る。
ジャックがすぐに前に出て、青い炎の魔法を杖から出して葉っぱを燃やす。ヴェロニカのツタだけは、燃えずにこちらへ伸びてきたがメイジーの水の刃が燃え残ったツタを断ち切った。
皆が気を引いてくれてるうちに!
私は逃げるふりをして、後ろの森へと入った。
「これでもくらえ!」
「な、なんだこの煙は!?」という声が聞こえる。オリバーも頑張ってるみたい。
「タマちゃん、どこに行けばいい?」
「気がつかれないようにもう少し近づくんだ。杏を連れてだと五メートル飛ぶのが限界だ」
「分かった!」
私はタマちゃんを肩に乗せて、恐る恐る身をかがめて進む。
「さっきの女の子は、逃げ出して一番お利口さんね。あなたたちも帰るというなら、追いかけたりはしないのよ」
ヴェロニカの声だ。
「誰が逃げたりするもんか!」
「そうよ! ユニコーンを森に放しなさい!」
オリバーとメイジーが必死に注意を引いてくれている。
私は、木の陰を選んで少しずつユニコーンまでの距離を詰めた。
「杏、ここからなら飛べそうだ。回復魔法の準備だけしておいてくれ」
「分かった!」
私は杖の先にヒールの光を溜める。近づいた一瞬の隙に使わないと、アーク団のやつらに気がつかれて捕まっちゃうかもしれない。
「行くぞ」
「うん!」
私とタマちゃんは目を見合わせて頷いた。
「リープ!」
タマちゃんが飛び上がるのと同時に、私の腰にくっついて私も跳ぶ。
アーク団のやつらは背後で跳んだ私とタマちゃんに気がついていない。
「今だ! ヒール!」
ユニコーンが捕まっている檻の前に降り立った瞬間――私は準備していたヒールをユニコーンに放った。まばゆいライトグリーンの光がユニコーンを包み込む。
「な! いつの間に!」
「ヒヒーン!」
ユニコーンの嘶きが森に響き渡る。
足をけがして横になっていたユニコーンが飛び上がるようにして、あっという間に檻を破壊した。
ヴェロニカが短い舌打ちをする。
「お前たち、檻が壊れてしまった以上、長居は無用。撤退よ」
ヴェロニカが杖を天高く掲げると、杖の先から黒い煙が出て下っ端たちを包んだ。
「待てヴェロニカ! 今日こそ逃がさないぞ!」
ジャックが杖を振り、青い炎がヴェロニカ目掛けて飛んでいくが、ヴェロニカのツタがそれを難なく防いでしまった。
「あら?」
ユニコーンがまるで私を守るかのように寄り添っているのを見てヴェロニカは目を見開いた。
「ユニコーンがそんなに人間に気を許すだなんて」
赤い唇がニヤリと笑みを作る。
「お嬢さん、お名前を教えて」
「私は杏! この森をアーク団の好きには、させないんだから!」
「杏、素敵なお名前ね。また会いましょう」
「待て!」
ジャックの制止を聞かずに、ヴェロニカの体も黒い煙が包み込む。
ふっと風が吹いて、黒い煙が消えると、そこにヴェロニカや他の下っぱたちの姿はなかった。
「はぁ……緊張した……」
メイジーがその場にへたり込む。
「助けてくれて、ありがとう。君の魔法、すごかったよ」
ジャックがメイジーに手を差し出すと、メイジーは顔を真っ赤にして震え上がった。
「皆、怪我してない?」
私とタマちゃんも走って皆と合流する。
皆、怪我はしていないようだ。
「驚いた……どうやらその子は、君のことが好きみたいだ」
ジャックの声で後ろを振り返ると私のすぐ後ろにユニコーンの顔があった。
私のおでこにユニコーンが鼻先を擦りつけるからくすぐったい。
「皆、良かったら、うちに来てお茶でも飲んでいかないか? 少し、ゆっくり話をしたい」
「行きます!」
ジャックの誘いにメイジーが即答する。
私とオリバーは、顔を見合わせて笑った。




