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赤き日  作者: 溶接作業
二章

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夢の中へ

「まず、城壁の外観だが高さは四メートルほどで、厚さが五メートルって所だ。正面切って戦うには不利すぎる。ハシゴを掛けようにも城壁は深い堀に囲まれてるし、内部には川から引っ張って来た水も入ってる。だから正攻法は無理だ」とジョン。


「だから、内部から攻撃を?」


 オキタルの質問に大きく頷いた彼は続ける。


「では我々がするべきことは何かについて話すぞ? まず一つ目に落とし格子と跳ね橋を解決すること。そもそもこれをどうにかしないと先には進めない。二つ目に集まって来た敵兵を蹴散らすこと。これは作戦を遂行する上で少人数でやらなくてはならない。腕っぷしのあるニッケランとザザンが適任だろう。三つ目に城門の内側にかかってる閂を外す作業だ。大型の閂が設置されていると予想しているから、ここに人数を裂きたいところだ。そして最後に仲間へ合図を送る。火矢でも思い切り上に放てばいい」


 これが作戦の大まかな概要のようだ。出来るかどうかはさておき、理屈としては通っている作戦だ。しかし、この作戦を遂行する上で必要な大切な物が欠けている。


「武器はどうするんだ?」とニッケラン。


 城壁内部に侵入し、敵と交戦する際に武器がないのでは話にならない。どうにか内部で調達する算段を立てなくてはならないだろう。


「武器はもちろん用意する。と言っても兵舎から奪うだけだがな」

「奪う? 城壁に入る前に騒ぎになるんじゃ?」とザザン。


 イトク町と同様。下手に騒ぎを起こせば少人数で行動するニッケランたちはひとたまりもない。出来る限り無駄な争いは避けなければならないのだ。


「帝国軍の常備兵がどのぐらいの規模か覚えているか?」


 ジョンの質問にザザンが即答した。


「三十万人だ」


「その通り。ではシュンカリにはどの程度、常駐していると思う?」


 帝国三都の一つであると考えるとかなりの人数が常駐していると考えられる。当てずっぽうで言葉を飛ばす。


「十万とかか?」とニッケラン。

「惜しい、七万だ。しかし、七万だ。七万人分の武器を用意して予備は用意しないとは考えずらいだろ? 兵舎から数個盗んだところでばれやしないさ」


 ザザンが「それなら武器は手に入りそうだな」と言った。しかし、一つだけ分からないことがある。主要都市にも関わらず兵士の数が七万人しかいないとはどうもおかしく感じる。


「主要都市の割に七万人って少なく感じるな? こっちとしてはありがたいが…その辺はどうなんだ?」


 ニッケランの質問にジョンは大きく頷いた。


「シュンカリはここから一時間から二時間ほどで着く距離にある。王国との国境も近く、反乱軍も近くに潜んでいる訳だ。そんな危険な地域に大量に兵士を置くわけにはいかないのさ」

「逆じゃないの? 前線に大量に兵士を置かないと簡単に攻め落とされちゃうんじゃ?」


 オキタルに深く共感したニッケランは大きく頷いた。ザザンも同じように疑問の表情を浮かべている。


「確かにそんな運用方法も可能だろう。しかし、あの城塞都市は中間地点として利用されているんだ。なにせかなり強固な作りになっているからな。簡単に攻め落とせるような柔な城じゃないから、他の都市か

ら援軍が派遣されるまで耐えられるようにしているはずだ」


 七万という数字にも納得がいった。そして彼の作戦にも。七千人で攻め落とせるような城のつくりではないのであれば、内部から攻めることは正解と言える。


「まあ、作戦自体、一か月後に開始するから今スグ作戦を頭に叩き入れろとは言わない。もちろん演習もするしな」


 そう言うと彼は別の部屋へ移動してゆく。「どこに行くんだ」とニッケランが声を掛けると「茶を入れる」と答えてくれた。どうやら人数分用意してくれるようだ。


 ジョンが返ってくる間に彼らは別の話をする。


「ニッケラン。あばら、一か月で治せそうか?」とザザン。

「あぁ。そんな無茶苦茶な折れ方はしていないはずだ。二週間でもくれれば治して見せるぜ」


 ザザンは安心した顔を見せ、息を吐き出した。


「ジョンの作戦じゃ、お前は重要な役回りだったからさ、あばらが心配でつい」


 彼は照れを隠すような笑いを飛ばしていたが、ニッケランにはそれが嬉しかった。自分が仲間に頼れるというのは心地がいいものだ。


「ところでザザンさ! あの拳狼と戦った時、その盾使ったの?」とオキタル。

「お前にわざわざ持ってきて貰ったってのに使わなかったんだよな…ニッケランの攻撃でだいぶ弱ってた

からな…だが、盾がないのとあるのじゃ安心感が違ったよ。そういう意味では盾は十分役を果たしたと言

えるな」


「その盾は今後使い続けるのか? お前が愛用してた盾、直して貰ってるんだろ?」


 ニッケランの言葉に彼は唸った。彼もその点について悩んでいたようだった。


「予備だな。いつもの盾にはやっぱり敵わねぇよ」


 彼がそう言うと同時にジョンが盆を持って現れた。盆の上には人数分のカップ。


「ほら、茶を入れてきたぜ。モヤトだったか? あいつの差し入れだ」


 鼻を刺激する茶の良い香り。決戦の前に飲んだ茶の香りだ。


「この茶、異常にうまいよな」とザザン。


 それにオキタル、ニッケランの二人は大きく頷いた。ジョンは茶の香りをしきりに嗅いでいる。


「なんか体の底から…」

「うまいな…これ」


 ニッケランの言葉を遮るようにジョンが言った。しかし、彼らはそんなこと気にも留めずに茶に集中する。部屋には茶を飲み込む音のみが響いていた。





 茶を飲みほしたところで彼らは会話を再開した。


「一か月の間、俺は何をすればいい?」


 口火を切ったのはニッケランだ。彼は続ける。


「派手な動きは出来ないが…例えば役に立つ装備とか…ほらオキタルが使った目つぶしとかさ」

「それもいいと思うが…武器の手入れとか、武器を作ってもらったりでいいんじゃないか? だってロングソード壊れたんだろ?」


 ジョンの方を向き彼は答える。


「確かになぁ…追い詰められることも増えたし、ロングソードじゃ頼り無くなって来たんだよな」


 この発言にザザンが目を光らせた。


「モンタンテとかどうよ? パワーのあるお前にはもってこいの武器だぞ?」


 聞いたことのない武器だ。しかし、彼が武器の話を始めるとなかなか終わらない事を同時に思い出した。


ニッケランは他二人の様子を窺がう。


ジョンは苦虫を噛みつぶしたような顔でザザンを見ている。オキタルは現実を直視していないような虚ろな目でニッケランを見つめていた。どうやら二人とも彼の話を中断させることを望んでいるようだ。


 彼はザザンに「じゃぁ、その武器にしようかな」と言い話を終わらそうとする。しかし、遅かった。


「なんだ? あんまり知らないって顔だな。仕方ない、モンタンテについて詳しく説明してやろうじゃないか!」


 話が始まるとジョンとオキタルは彼を睨んだ。ニッケランは別に悪いことをしたわけでもないのに睨ま

れたことに残念な気分になる。しかし、そんなこと気にも留めないザザンは話を続ける。


「モンタンテはロングソードよりも長い剣でな、長くて重いもんだから騎兵でも使えない特殊な武器なんだーーーー」


 彼はニッケランたちの顔が死んでることにも気が付かず話を続けた。ニッケランは後悔する。彼が居る場で武器の話をするべきではなかったと。





 彼の話が終わるころには窓に差し込む光が茜色に変化していた。


「つまり、モンタンテってのは遠心力を利用して敵を切りつける武器で長さゆえに槍のようにも使えるお前向きの武器って訳さ」

「――ありがとうなザザン。最高に丁寧な説明だったよ」


 ザザンは鼻を高くして「いつでも任せろ」とニッケランへ言った。彼の高く留まった鼻をへし折りたい気分になるが堪える。


「明日からお前たちは基地に戻って準備だからな…今日は良く寝ておけよぉ…」疲れ切った様子でジョンが言った。


 これ以上何かを語るような気分にも慣れず、三人は素早く自分の部屋へと移動してゆく。ザザンが「もう⁉」と言っていたが三人はそれを無視する。彼の声を三か月分は聞いた気分だ。


 ニッケランはベットへ移動すると素早く寝具へもぐりこんだ。


「今日はよく眠れそうだ」


 激戦を繰り広げた後のような疲れを感じていた。ザザンの言葉には人を疲れさせる力があるのではないかと思うほどだ。


 目を閉じ、攻城戦の妄想にふける。敵を素早く始末し、仲間を城内へ乱入させる想像。そして魔操志の首を吹き飛ばす。


 そんなことを繰り返しているうちに睡魔が現れた。目の帳はゆっくりと下がり、最後には閉じてしまった。


 彼の意識は夢の中に入ってゆく。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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