次の戦
突然扉をノックされニッケランは目を覚ます。窓から日が差し込んでいる所を見るに、一日中寝ていたようだ。
「どうぞ」
彼の声に反応し入って来たのはザザンだった。
「調子はどうだ?」
「あばら以外は絶好調」
そう言うと彼は笑い、起きるのを手伝ってくれた。
部屋を出ると一階へ降りる。すでに仲間が椅子に座っているのが見えた。
「よう、ニッケラン。調子は?」
彼に気が付いたジョンが言った。彼の手にはカップが握られており、茶のいい香りを漂わせている。
「あばら以外は良いぜ」
ニッケランはザザンの手を借りながら椅子に座る。すると、ジョンが口を開いた。
「よし、全員揃ったところで今後の話をしよう」彼は茶を一気に飲み干すと続ける。
「昨日報告した通り、お前たちがこの町で戦ってくれている間、我々も他の町を奪還したと伝えたな?」
「そうだね」とオキタル。
「このイトク町は例外として、他の町の人間から兵士を募ることが出来た。これにより反乱軍は七千近い兵力を有することに成功した」
「かなりの数だな。小さいぐらいなら攻め落とせるな」とザザン。
ニッケランも過去に体験した城攻めを思い浮かべる。地方領主が帝国側に寝返り、王国軍の傭兵として参加したあの戦争。
「戦力として十分だが…城を落すとなると、帝国軍も相手どらなきゃいかんだろ? そうなると魔操志も来る。案外十分とは言えないかもな」
ニッケランは大型の都市を攻め落とす想像をし意見する。城を攻めるだけならまだしも、帝国軍まで相手どるには心もとない数だ。それに兵士の質も違う。
「まぁ、正攻法の攻め方をしたら即壊滅だな」
ジョンも同じ意見なようだ。しかし、彼の発言には裏がありそうだ。何やら不敵な笑みを浮かべている。
「先に言っておこう。次に攻める場所は主要都市のひとつ。シュンカリだ」
三人は目をまん丸にさせ、ジョンの顔を見入った。彼が冗談を言っているようには見えない。彼は続ける。
「お前たちの言いたいことは良くわかる。現実的じゃないと思っているんだろ? 正直言えば正攻法では絶対に無理だ」
「正攻法以外でやりようがあるのか? 主要都市って言えば強固な堀と壁に守られてるだろ?」とザザン。
「直接戦ったら中に入る前に全滅だろうな。だが、今回は一味違う」
彼が何を言おうとしているのかさっぱりわからない。ニッケランはじっれたくって仕方がなかった。
「その作戦ってのは?」とニッケラン。
「簡単に言えば内部から攻め落とす」
「内部から? どうやって内部に入るんだ?」とザザン。
「主要都市ってのは基本的に出入りは可能なんだ。問題は検問で剣を持ち込めないってぐらいさ」
彼の言う通り、許可さえ下りれば都市内に足を踏み入れることは容易だ。しかし、戦争が激化している今、武器を持っている者を中に招き入れることは必然的に避けられることだろう。
「そこで俺はこう考えた。なんの武装もしていない俺たちが内部に侵入する。そして夜闇に紛れ込み、城壁を開けちまうんだ。そして反乱軍を乱入させて、ついでに魔操志も殺す」
「完璧だろ」と言う彼の表情に謎の信頼を置いてしまう。しかし、今回の作戦もギリギリだったことを考えると失敗する確率の高そうな作戦だ。
「ジョン。お前の作戦を否定するつもりはないんだが……無理がないか? なんというか、そもそも門の巻き上げ機までたどり着けるのか?」
「良い質問だニッケラン」と彼は身振り手振りで説明し始めた。
「結論から言えば、スピード勝負の作戦だ。城門を守る構成要素をいかにして早く解決するか。これにかかっている。まず一つ目に城門の二階に設置されている巻き上げ機。落とし格子を動かす機械のあれだが、ここにたどり着くのに衛兵と交戦せねばならん」
ニッケランは城壁内部を想像した。螺旋階段を上り、城壁の二階へと上がる。巻き上げ機にたどり着くまでに何回か敵と交戦し、そして機械に手を付ける。
「なかなかハードだな」とザザン。
ジョンの言う通りいかに早く作戦を遂行するのか。これが重要だ。
「次に跳ね橋だが、巻き上げ機と同じ部屋、もしくは近くの部屋に巻き上げる鎖か紐かがあるはずだ。壊すなり落とすなりすればいい」
跳ね橋は落とし格子と同じ要領だ。巻き上げ機にまで到達してしまえば対応は容易だろう。しかし、最大の問題はそこに到達した後に起こる。
「問題はここからだ。落とし格子を引き上げる際、かなりの大きさで金属の擦れる音が響くだろう。そうなれば異変を感じ取った兵士たちの波が押し寄せてくる」
すると彼はニッケランとザザンを見て言った。
「戦うことに長けたお前たちが時間稼ぎをする必要が出てくる。頼んだぞ」
「無茶なこと言いやがるな相変わらず」
苦笑いを見せたザザンが言った。ニッケランも同じ気分だったが彼の作戦を遂行するには適切な役回りだった。
「ちょっといいかな? 城壁を開ける作戦なのは理解してるんだけど、そもそも僕たちがやらなきゃいけない事って何なの? 巻き上げ機のくだりだけでも頭が混乱しそうだよ」
オキタルの言い分も理解できる。彼は攻城戦を経験したことがなく、そんな知識を持っている人間の方が少数だろう。それをジョンも理解したようで解説を始めた。
「まず、俺たちがやればいいこと、これは三つある。一つ目に城門の解放。これは仲間を迎え入れるため
に必要なことだ。二つ目に仲間を迎え入れる合図を送る事。城壁の外側に展開させるわけにはいかないからな。近くの森で待機させて、一気に侵入させる。三つ目に魔操志を殺害すること。内部で仲間が暴れている隙に俺たちは奴の元へ一気に駆けてゆく。これが作戦の大まかな概要だ」
オキタルは理解したようにうなずいている。それを見た彼は続ける。
「では、ここからは一番重要な城門について解説する。城門が何で出来ているだとか、どうして城門があ
るのかについては解説を避けようと思う。作戦に必要ないからな。では、俺たちが何をすべきなのか、こ
れに焦点をおいて話を進めるぞ?」
「うん」とオキタル。
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