表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤き日  作者: 溶接作業
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/102

復活!

 突然、奴が飛び退いたことに彼は驚いていた。しかし、それ以上に奴の構えに胸騒ぎがする。


(なんだ? あの構え)


 急所を守ることを辞め、完全に開いた脇。顔を守ることを辞めた腕は中途半端な位置で構えられてい

 る。しかし、特筆すべきは足だ。


 片足を上げた状態で静止した姿には明らかに攻撃性が宿っている。足技を使うぞと主張するそんな足

 だ。


 すると奴が動き始めた。先ほどまでの俊敏な動きとは対照的な着実に歩みを進めるような進み方。


 嫌な雰囲気に息をのむ。


 奴も命を刈り取ろうと覚悟を決めたようだ。


 じりじりと、確実に距離が縮まってゆく。そして互いの間合いに入った。


 二人とも中々動かない。円を描くように二人は動き、隙が無いかを窺がう。


 ニッケランは剣を振るう動作をフェイントで仕掛けた。しかし、罠にはかからない。


 お互いにフェイントを繰り出し、隙を伺う。繰り返し、繰り返し窺がう。


 拳狼が動いた。


 足を後ろへ振り上げたと思った瞬間、避けるようでは遅い速度。残像すら残らない速度で奴は蹴りつける。


 先ほどまでの彼であれば、成すすべもなく攻撃されていただろう。


 しかし、今の彼は違う。


 足を振り上げようと動いた一瞬で彼は軌道を読み、地面を這うようにして攻撃を回避する。同時に足の関節を狙い勢いよく切りつけた。


 彼の切り込む速度と移動速度が合わさり、甲高い音を発しながら剣は突き進む。先ほどの攻撃までとは違い威力も十分。並の人間であれば足を吹き飛ばされ決着がついていただろう。


 しかし、奴も違う。


 彼の動きに即座に反応し、蹴りを無理やり中断すると目標めがけて足を突きおろした。


 あまりの威力に石畳は割れ、周囲にある花瓶の花も振動に揺れている。


「くそ!」


 土埃が舞って何も見えない。


 拳狼は腕を勢いよく振り、煙をどかす。しかし、足の下に目標の姿は無い。


 前を見ると、態勢を整えようと立ち上がる彼の姿があった。


「どうやって避けた」

「秘密」


 ニッケランは駆る口を叩く。しかし、内心はかなり冷え込んでいた。


 奴の足が軌道を変え、彼を踏みつぶさんと動いた瞬間、地面を掴み無理やり前方へ飛んだのだ。


 無理に移動したことで綺麗に着地することも出来なかった。その瞬間、奴に攻撃されていたら今頃肉塊に返還していた所だ。


(やっぱ強いなコイツ)


 今のところ状況は五分五分。奴の腕を切りつけ続けたことによる打撃技の減少。これにより実現している。


 しかし、完全に打てない訳ではない。隙を見せればため込んだ一撃をニッケランへ打ち込むことは確実だった。


 しかし、勝機はそこにある。そう感じたニッケランは刃走りの構えを取った。


「またそれか」


 嘲笑する目を向けた奴を無視し、自分の世界へ入り込む。


 いつもよりも集中力があるからか、一瞬にして目標は定まった。


 月明かりに照らされた彼は流れ星のように進んでゆく。しかし、奴の目は彼を捉え、離さない。


 剛腕を引くと矢のように飛び出す拳。顔めがけて一直線に飛んで行く。


 奴の顔には笑顔が浮かび、勝利を確信しているように見える。


 拳はそのまま直撃し、奴の手には頭蓋を割る感触が広がるかに思えた。


 しかし、拳は空を切り、その下を彼は通ってゆく。


 彼は攻撃ではなく移動に刃走りを使用した。その結果、異常な速度で奴の攻撃をかいくぐり、急所めが

けて突き進むことを可能にしたのだった。


 彼は構えを変える。柄を両手で強く握り、力一杯に奴の腹めがけて突き刺すモーション。


 奴は避けようと必死になるが、腕を振る遠心力に負け動けない。


 彼の手には肉を割く、内臓をえぐる感触が伝わった。次には彼の顔に返り血が飛び散り、奴の顔は苦痛に染まった。


 しかし、ハーフソードの長さが足りず、体を貫通出来ていない。致命傷ではあるが、即死するほどではないようだ。


 ニッケランは奴の腹を横一線に切り開けようと剣を逆手に持ち替える。しかし、奴はそれを許してくれるほど甘くはない。


 火事場のバカ力とでもいうべき攻撃がニッケランの体に当たる。彼は避けようと後ろへ下がったが、彼の膝を突き上げる動きが想像以上に早く回避できなかった。


 二度目の浮遊。着地の構えを取るべき時間だ。


 しかし、今の彼にそれを起こせる余力はない。今の攻撃であばらが折れたようだ。彼の脳には骨の折れる鈍い音と共にナイフで刺されたような痛みが届いていた。


 地面に激突し、さらに痛みが走る。体中が痛むが、それ以上にあばらへの直撃を避けようと腕で庇う。


 その結果、剣はどこかへ吹き飛び、ニッケランは民家へと激突した。


 全身に鈍痛を味わい、上手く空気が吸えない。変に焦点の合わない目で奴を見ると、ゆっくりと確実に近づいてきている。


(ここまでなのか!)


 どうにか立ち上がろうともがく。しかし、あばらの痛みに耐えきれず何度も地面に突っ伏してしまう。


 もうすぐ奴は目の前にたどり着く。このままでは瓦割りの要領で頭を勝ち割られてしまう。何度も、何度も立ち上がろうともがいた。


 すると、奴に向かって何かが投げつけられた。それは何の効果ももたらさず、地面に自由落下する。


「石?」


 拳狼は息の荒い声で飛んできた方を向く。同時にニッケランも。


「借りを返しにきたぜぇ!」

「ザザ…痛ぇ…」

「ニッケラン。後は任せてそこで寝てろ!」


 彼はうなずくと起き上がるのを辞めた。彼が奴にとどめを刺すことを信じて観戦するためだ。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ