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赤き日  作者: 溶接作業
二章

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90/102

 拳狼の拳が空を切る。何度も何度も殴りつけるが彼に当たる兆しはない。


 先ほどまでの展開とは真逆。今度は自分が獲物へとなり下がっていた。


 フェイントを交え攻撃する。顔面を殴ると見せかけ、腹へ拳を移動させた。


 さすがの速度にニッケランも対応できない。彼に直撃した拳は皮膚を貫き、肉をえぐるかに思えた。


 しかし、彼は殴られると同時に同じ方向へ飛び退き威力を相殺させてしまう。


「お前…何が起こった!」


 先ほどまでの勢い任せの彼の姿はそこには無く、まるで別人と入れ替わったような気分になる。


 拳狼の内心はどんどんと荒れ果て、恐怖すら沸きあがりつつあった。


「覚悟だ」


「あ?」


 彼は睨むと凄みのある声で言った。


「お前を殺す覚悟だ。覚悟さえ決まればお前なんて怖くない」


 ニッケランは一気に間合いを詰める。


 速度重視の構え。突きを中心に繰り出すその構えは、拳狼の拳を振るう速度の何倍もの速さだ。


 刀身は残像すら残さない。唯一見えるものは剣を握る彼の手だけだった。この雷のような速さの斬撃についてこられる者は一人も居ない。


 傷だらけの体で必死に避ける。しかし、避けたと思った次の瞬間には体のどこかに新しい傷跡が出来ていた。


 始めはこんな浅い傷、なんの役にも立たない攻撃だと思っていた。しかし、この傷が蓄積されてゆくほどに、その恐ろしさを目の当たりにしてゆく。


 どんどんと体力を奪ってゆくのだ。腕を重点的に切られたことで、血が足りなくなったのか、筋を切られたのか腕の力が入らなくなってきている。


 しかし、それを感じ取ったころには遅かった。彼の隙をついて一撃をくらわせようと剛腕を振るったが、明らかに速度が落ちている。


 体は汗を発し、動悸がどんどんと激しくなっている。


「くそ!」


 拳狼は大きく後ろに飛び退きニッケランを睨んだ。間合いを取らなければじり貧だ。


「おい。その体は見せかけか?」


 彼のあおりに怒りが湧き立つ。しかし、拳狼には秘策があった。


(ここで奴を沈める!)


 構えを変える。


 その構えは先ほどまでとは違い、攻撃的な構えだった。


 顔を隠していた拳を顔の横へ移動させ、片足を上げた状態で静止した。


 ニッケランと同様、拳狼の目にも覚悟が宿っている。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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