参戦
オキタルはニッケランが吹き飛ばされる瞬間を目の当たりにしていた。
あんなにも追い詰められているニッケランは初めてだった。先ほどの出来事も相まって、彼の惨い姿が目に浮かぶ。
しかし、彼の力では足手まといになるだけだ。手伝いたい欲求を抑え、周囲を観察する。
ザザンがいない。どこを探しても見当たらない。
落ち着けと何度も頭で唱えるが彼が死んでしまったのではと思うと動悸が早まるばかりだ。
大男に見つからないよう周囲の建物を捜索する。ここで様子を窺がうだけなんて考えられなかった。
背後の建物で物音がした。木材が落ちる音だ。そこに目を向けると何やら窓が割れている。
「もしかして…」
ニッケランを軽々と遠くへ吹き飛ばしたパワー。もしかすると、ザザンも同じように吹き飛ばされたのではないだろうか。
気が付くとオキタルは、その家のドアに手を掛けていた。しかし、鍵がかかっているのかびくともしない。
どうにかこじ開けようと蹴りを入れてみる。しかし、残酷にも子供の力ではどうにもならないようだ。
周囲を見渡し侵入できそうな場所を探す。
割れた窓の下。そこに足場のようなデザインの花瓶置きが設置されている。大人の体重なら壊れてしま
うそれもオキタルであれば大丈夫そうだ。
彼はそう思うと後先考えずに手を掛けた。割れた窓の小粒が手に刺さり痛む。しかし、そんなことはどうでもいい。
今は仲間のために体を張るときだ。どうにかよじ登り、窓から家の中へ侵入する。
「ザザン!」
彼は力なく横たわっているが、本棚へ衝突したようで目立った外傷は無かった。彼に近づき、脈を図る。
暖かな手には命の脈動が走っている。命に別状はないようだ。
「グハッ!」
「うわぁ!」
ザザンが息を吹き返したようにせき込み、オキタルは驚いてしりもちをついた。
彼は目を開けるとザザンに問う。
「…状況は?」
「ニッケランが戦ってる。あの大男と」
彼は「そうか」と一言いうと自分の上に乗っていた本を払いのけ立ち上がる。
「すまないな無様な姿を見せちまって……それ、盾か?」
あまりの出来事で忘れていた肩に掛けた盾の存在。それを彼に渡す。
「良い盾だ」
彼は盾を少しの間眺めていると出口へ向かってゆく。後ろ姿には覚悟が宿っているように感じた。
「ザザン! 大丈夫なの?」
「任せておけ」
彼はそう言うと扉を蹴り開け、駆け出した。彼の行方を追うと、ニッケランの元へ一直線に駆け出している姿が見えた。
もう一話投稿します。
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