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赤き日  作者: 溶接作業
二章

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83/102

実行

 作戦を決行する時間だ。モヤトは募った仲間の顔を確認する。

 この状況を打開したい一心で参加を決めた誇り高き同志たち。全員の目には炎が宿っている。


「全員いい目をしている。今作戦が失敗すれば俺たちは殺される、だが何も起こさなければこの状況は変えられない! この場に集まった皆を誇りに思う」


 彼らは静かに、しかし、大きく頷いた。皆が期待を膨らませ、背を伸ばす。


「よし、行くぞ! 皆、持ち場に着け!」


 号令と同時にそれぞれが持ち場へと駆け出す。モヤトはBを暗殺する部隊を率いて持ち場へと足早に移動した。


 月と割れたガラスのように光る星々。彼らを今宵の主役のように照らしている。彼らにとって月明かりが出ていることは好ましくはない。しかし、不思議と悪い気はしなかった。


 Bの家が見える路地裏へ入ってゆく。入ってしまえば彼らの姿は闇に紛れ見えなくなる。


 様子を窺がうと護衛の兵士たちが松明をもって巡回している。


 仲間の一人が囁いた。


「モヤトさん、放火の準備整ったみたいです」

「燃やせ」


 彼の一声に仲間が反応し、別の仲間へと伝える。


 今のところは完璧にことが進んでいた。後は、護衛の兵士どもがどれだけ火事に対して混乱を起こすのかにかかっている。


 パチパチと爆ぜる音が聞こえ始めた。周囲の家を確認すると窓の中が赤く光っているのが見える。


 護衛の兵士を確認する。


 松明の音と光で分からないようで、周囲の家が燃え始めている事には気が付いていない。


「どのぐらいで燃え上がりそうだ?」


 モヤトが後ろで待機している仲間に問う。彼は他の仲間に耳打ちし、答えた。


「かなり早く燃え上がりそうです。外壁と内壁の間にある防音材がいい塩梅らしいですよ」


 彼の言う通り、家の窓の中の光はどんどんと強くなっている。

 すると、周囲の路地に仲間が集まりつつあることに気が付いた。


「完全に火はつけ終わったみたいだな」


 モヤトの目の前に火の粉が一つ舞った。同時に雷のような轟音が響く。


 B宅の一番近い家が崩れ去り、火の粉と共に火柱が舞い上がるのが見えた。

 敵に目を移すと、露骨に焦り燃えている家の方へ走っているのが見えた。


「今だ! 行くぞお前ら!」


 確認したと同時に駆け出す。彼が率いていた仲間以外も路地から飛び出した。


「二人着いてこい! それ以外は奴らと剣を交えろ!」


 指示に従い仲間は散開していく。作戦通りの理想の流れだ。


「なんだ貴様ら! 謀反か!」


 敵の一人が叫んだ。しかし、時はすでに過ぎ去った。モヤトと仲間の三人を止める前に他の仲間と乱戦

になる。


「ゴラァ!」


 勢いよくドアをけ破る。何回か蹴る必要があると思っていたが、一発でドアは開いてくれた。


 三人は顔を一瞬見合わせると、気合のまま中になだれ込む。


「探せ! 見つけ次第大声で叫べよ!」


 モヤトの声に彼らは家の中に散らばってゆく。一人は二階に。モヤトともう一人は一階を捜索だ。


 慎重にドアを開け、部屋の節々にまで気をめぐらせる。どこに奴が隠れているのか分からない。慎重に確実に部屋の中を捜索する。


「うおおお!」


 二階で大きな物音と共に仲間の声が響いた。二人は足音も気にせず一気に階段を駆け上がってゆく。

 二階の声のする部屋のドアを蹴破ると、仲間が下に奴が上に乗った状態で殴り合いをしている。


「貴様ら! 私が誰か分かってやっているのか!」

「当たり前だ!」とモヤト。


 Bに対し思い切り蹴りを入れ、部屋の隅へと吹き飛ばす。奴は「ぐえっ」と情けない声を出し、その場でうずくまった。


「ま…まて! 貴様らを推薦してやろう! 良い暮らしを約束してやる! お、女だって付けてやるぞ!」


 悪の最後にふさわしいセリフだ。モヤトはそう思うと同時に、近くの花瓶を持ち上げ、奴の顔めがけて投げつけた。


 陶器の割れる音と共に顔に無数の破片が突き刺さり、血が大量に流れ出ている。


「ぐああ! 愚かだ! 愚か者ども! 貴様ら無様に死ぬ! そういう運命なのだ!」

「黙れ」


 モヤトはBに近づくと剣を抜き去った。


「後悔するがいい! 魔操志様に逆らい、私を殺したことを!」

「死ね!」


 腹に向かって勢いよく剣を突き刺す。手には肉が裂け、内臓がブチブチと千切れる感触が伝わり、奴の口からは血が滝のように流れた。


 人を殺すのはこれが初めてだ。心には動揺が満ち溢れ、懺悔する日々が待ち受けているとモヤトは思っていた。しかし、実際にはやり遂げたという達成感と未来への期待感が押し寄せた。


 突然、外で轟音が鳴り響き、窓の外に火の粉が待っているのが見えた。その音に彼は現実に引き戻される。


「コイツの首を切り落とすぞ!」


 仲間の一人が服の中から小型ののこぎりを取り出し、そして奴の首に当てた。


「あとは任せてください! モヤトさんは番兵を!」


 仲間の厚意に甘え、彼は部屋を後にする。一階にいるというのに、無機質な拽鋸の音が鳴り響いている。


 モヤトにはそれが希望の音に聞こえたが、それを無視して家を飛び出す。


 目の前には仲間と敵の乱戦が広がっていた。


「手の空いている奴は着いてこい! 番兵の元へ行くぞ!」


 しかし、返事は無い。全員が敵と交戦中なようで手の空いている者はいないようだ。


 一人で番兵を救える自信は少ない。そう考えるとこの乱戦にモヤト自身も飛び込み、数人を引き連れることが得策だ。


「うおおお!」


 突然、大通りの奥で大勢の叫び声が上がった。

 火柱と火の粉。そして黒々とした煙のせいではっきりと見えない。目を凝らして確認すると、大勢の兵

士がこちらへ向かってきているのが見えた。


「どっちだ…」


 仲間か敵か。これでは判断がつかない。このまま全員で撤退し様子を窺がう手もあるが、作戦失敗の確立が高くなってしまう。そう考えると撤退することは出来なかった。


(一か八かだ!)


 乱戦へ飛び込み、仲間に加勢する。敵の背後から剣を突き刺し、仲間に問う。


「あ、ありがとうございますモヤトさん。――こいつら強くて…なかなか…」

「御託は良い! 早く他の仲間の所へ!」


 彼は荒れた息のまま別の所へ走っていった。すると、炎の音とは別の声が届いた。


「この状況は!」


 声をする方を向くと、大量の兵士を引き連れている男が一人。


「お前たち! この逆賊どもを殺せ! 殺せば報酬を与えるぞ!」


 Bの護衛の一人が言った。


 状況を理解したようで男は周囲を見渡す。まだ、どちらに加勢するのかを決めかねているようだ。


「見ろ!」


 突然Bの家の扉が開き、聞き覚えのある仲間の声が響いた。


 彼の手には、髪を紐のように掴んだBの首がユラユラと揺れている。


 その光景に護衛達は呆気に取られ、戦うことも忘れてしまっている。それとは対照的に仲間たちからは

歓喜の声が漏れ、勝った勝ったと連呼していた。


「決まりだな」


 男が声を出したと同時に、背後の兵士たちがなだれ込んだ。


 モヤトは攻撃されるのではと身構えた。しかし、杞憂だった。彼らはモヤト達を無視し、敵に一直線に走ってゆく。


「アンタかい? 首謀者は」


 長い顎髭を生やした体躯の良い男が話しかけてきた。もちろん、彼が兵士を引き連れてくれた張本人だ。


「ああ、そうだけど。アンタが彼らを?」


 彼が引き連れてきた兵士たちに指を指す。彼は静かにうなずき続けた。


「ゴラムだ」


 手を指しだけてきた彼にモヤトも合わせる。


「よろしく。ゴラムさんよ、よく俺たちに加勢する気になったな。大博打だぞこりゃ」


 鼻で笑った彼はBの生首を見て満足そうに言う。


「俺もああしてやりたかったのさ」


 彼の笑顔にモヤトも微笑む。初対面だというのに昔からの戦友のような気分にさせられた。


「モヤトさん! 手が空きましたよ!」


 仲間の一人が言った。うなずき指示を出す。


「よし、番兵の所へ先に! すぐに追う!」

「ところでアンタの名前は?」

「モヤトだ」

「モヤトさんか。逆賊同士よろしくな」


 彼ともう一度、固い握手を交わすとモヤトは走ってゆく。番兵を救い出すために今までにないほどの速度でかけてゆく。


 背後でゴラムの声が響いた。


「一人も逃がすな! この町を奪還するんだ!」


 呼応した仲間の声が響き、火が燃え盛る音も一段と強くなった。人々の熱気に呼応されたように。


余裕が無くなってきたため、二日に一回の投稿に切り替えます。二日に一話になります。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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