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女子高生流 ただしいゾンビの殺しかた  作者: 原案:首狩りうさぎ 執筆者:六角 橙
正しいゾンビの殺し方
13/18

女子高生と謨吝クォ➊

 挿絵(By みてみん)

 

 ハッと気が付くと、お弁当の香りがいっぱいする教室に私はいた。ご飯、ノリ、お醤油の香り。楽し気な笑い声、楓がこちらを見ている。


「ねぇ今日、どこか遊びに行かない?」


 黒板を見ると『4月4日』の文字、そして時計はお昼休みの最中であることを示している。

 バケモノに襲われて死んで、すぐのことだったから、かなり動揺した。ああまたループしたんだ、そう分かっているのに、体が動かない。


「……悠ちゃん?」


 不思議そうに、雪ちゃんが声をかけてきて、ようやく体が動いた。


「っ、あー、そうだ! 隣町にいかない?」


 咄嗟に、そう声が出た。周りの大人は信じてくれない、なら。

 それなら、逃げるしかない。


「えー、隣町? 何かあったっけ」


「いいじゃん。この前、楓の映画に付き合ったでしょー」


「それを言われると痛いなぁ、でも放課後行くには遠すぎない?」


 隣町に行くには、学校から電車で30分もかかる。楓が言うとおりだけど、譲れなかった。


「いいじゃん行こうよー。あっ、電車じゃなくて、駅前からのバスは? あれ、ちょっと歩くけど、隣町のショッピングモールの近くにつくじゃん」


「あー、それはアリだねぇ」


 話を聞いていた留美が頷いた。


「ショッピングモールにさ、新しくクレープ屋できたらしいんだよね。しかもほら、あの、なんだっけ。歌手のMICHIがプロデュースしたっていう、あの」


「ポッテンモーってクレープ屋!? あそこだったのね! それ行きたい!」


 興奮気味な雪ちゃんが、きらりと目を光らせる。これは、いけるかもしれない。

「あー、それ気になってたんだよね! いきたーい!」


 私が珍しく乗り気になったのもあって、すぐにショッピングモールへ行くことが決まった。町の外に出て、上手く逃げれば、そもそも被害に遭わない可能性だってある。

 午後の授業を受け終わってから、私は楓たちと一緒に駅前のバスに乗った。隣町へ行くバスの中は、何事もなく平穏だ。

 当たり前と言えば当たり前で、あんなバケモノがたくさん出てくる状況が在りえない。


「で! あの湖がやっぱりキーだと思うんだよね!」


 留美の歴史談議が、ヒートアップしている。


「留美ちゃん、流石に湖が人工物って説はどうかと思うよ……池とか、ダムならともかく、湖規模なんて」


「そうそう。工事で作られたのなら、留美が言う、何だっけ? 郷土史? それにも残りそうじゃん」


「そうなんだよねぇ」


 腕組みをして悩む留美は、とにかく楽しそうだ。私たち3人も、留美から話を聞くうちに、自然と湖の話は気になっていた。


「神話からしても、やっぱりあの湖がポイントなんだよね」


「神話?」


 そんなものがこの町にあるとは知らず、話を聞こうとした時だ。


『お待たせいたしました、篠田町前、篠田町前。お降りの方は前のドアよりお願いいたします』


 到着を知らせるアナウンスに、それぞれ手に握り締めた運賃をもって前へ行く。支払いを済ませて降りると、隣町との境のバス停がすぐに目に入る。車通りも多い通りで色々お店もあり、ここから歩いた方が今日の行先であるショッピングモールに近いのだ。


「んで、何話してたっけ?」


「留美ちゃん、ほら、神話だよ」


「あー、そうそう! 寓 羅 ぐらきって神様のお話なんだけどね」


 聞いたことのない、神様の名前だった。


(でも、なんだろう。背中が、ぞくっとする)


 思わず足を止めた私の方を、留美が振り返る。


「悠!!」


 留美が私に向って、凄い顔で叫ぶのが見えた。なんだろう、と、私は考える。バスは通り過ぎていくし、車も変な動きはしていない。

 すると彼女は、思いもよらぬ言葉を叫んだ。


「逃げてっ!」


 視界の端から、白くて大きなものが迫ってくる。


「え?」


 振り返った瞬間、私の視界の上下がくるんっとさかさまになった。同時に体から力抜けて、大勢のバケモノたちにぶつかられた時のように、体が吹き飛んでしまう。

 どさり、と地面に落ちる。

 なんで、どうして。そう言ったはずなのに、声が出ない。こひっ、こひっ、音がする。


「いや、いや、やめてっ!」


「きゃあああっ!」


 誰かの悲鳴。真っ白い。姿。あれは。


「狼!? どうして!」


 口を真っ赤に染めた、白い毛並みの狼が見えた。意識がどんどん遠のいていく。楓が泣いている、雪ちゃんが怒っている、留美が叫ぶ。



4月4日、私は、死んだ。


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