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それから。
夏希は変わっていった。
笑わなくなった。
食事もまともに取らない。
夜になると、失った子のことを思い出して泣く。
そして。
司の身勝手な行動によって、夏希は再び妊娠した。
今度は。
司との子だった。
妊娠が分かったとき。
夏希は喜ばなかった。
「……嫌」
お腹を抱えて震える。
「どうして……」
司は何も言えない。
自分の子。
待ち望んでいたはずのもの。
けれど。
今の夏希にとって、それは幸福の象徴ではなかった。
恐怖そのものだった。
それから夏希の精神状態は、さらに不安定になった。
一人になるとパニックになる。
夜になると泣く。
司が部屋から出ようとすると、必死に服を掴む。
「……行かないで」
「夏希」
「お願い……」
「ここにいる」
「置いていかないで……」
司は動けなくなった。
「司さんがいないと……怖い」
以前なら。
その言葉を聞いて喜んでいたかもしれない。
――俺が必要なんだ。
そう思っていたかもしれない。
でも。
今の司には分かっていた。
夏希が自分を求めているのは、純粋な愛だけではない。
恐怖から逃れるため。
自分がそばにいることで安心しようとしている。
自分自身が夏希を追い詰めた結果、生まれた依存だった。
「……ごめん」
司は何度も謝った。
夏希は司の胸元に顔を埋めた。
「怖い……」
「大丈夫」
「司さん……」
「ああ」
「どこにも行かないで」
「今はここにいる」
司は夏希を抱きしめながら。
自分が一番守りたかったはずの女性を、自分自身が壊してしまったことを思い知った。




