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10年越しの愛に、もう一度名前をつけるなら___  作者: きなこ


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6/9

6

それから司は、二年間。


夏希を探し続けた。




妻を取り戻したかった。


娘に会いたかった。




けれど。




二年が過ぎる頃には。


ただ、夏希が生きていてくれればいいと思うようになった。


自分のところへ戻らなくてもいい。


幸せなら、それでいい。




そう思えるようになった頃。

夏希を見つけた。



 司は、二年間探し続けた答えを目の前に突きつけられた気がした。




 海の見える小さな町。




 そこに、夏希はいた。



 隣には裕翔。



 そして、小さな美桜。





 夏希は笑っていた。




 司と暮らしていた十年間、一度も見せてくれなかったような笑顔だった。




「……夏希」





 その声に、夏希が振り返る。


 笑顔が消えた。


「……司さん」


 怯えたような目。


 それだけで、司の胸は締め付けられた。





 本当なら。


 ここで謝るべきだった。




 無事だったことを喜ぶべきだった。




 自分から逃げた夏希の意思を尊重するべきだった。


 けれど。




 司の視線が裕翔へ向いた瞬間。


 胸の奥に、醜い感情が湧き上がった。




 ――こいつと暮らしていたのか。


 ――俺ではなく。




「帰るぞ」




「……え?」



「神崎家へ帰る」


「嫌です」




 夏希は即座に首を振った。




「私はもう戻りません」


「夏希」


「司さんとは終わったんです」


「俺は終わったなんて認めていない」


「でも私は認めた」




 司の表情が固まる。


「……俺の娘もいる」


「美桜は私が育てる」


「俺の子でもある」


「だからって――」




 夏希の言葉を遮るように、司は手を伸ばした。


「来い」


「嫌!」




 夏希が後ろへ下がる。




 裕翔が間に入った。


「彼女が嫌がっています」


「どけ」


「どきません」




 司は裕翔を睨みつけた。


「これは夫婦の問題だ」


「あなたは彼女を二年間探し続けたんでしょう」


「……」


「だったら、やっと見つけた彼女をまた苦しめないでください」





 正論だった。


 けれど。




 司には届かなかった。




 夏希を失った二年間が、司の理性を壊していた。





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