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10年越しの愛に、もう一度名前をつけるなら___  作者: きなこ


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4

夏希が選んだのは。


海の見える小さな街だった。





財閥令嬢として生きてきた夏希には、何もかもが新鮮だった。







そこで出会ったのが。


斉藤裕翔。




不器用だけれど優しい男だった。




「子どもの父親は?」


ある日、裕翔が聞いた。





夏希は答えなかった。






すると。




「言いたくないなら、言わなくていい」



それだけだった。




私と娘を優しく包み込み、何よりも私の気持ちを大切にしてくれる人。


私は少しずつ裕翔に惹かれていった。





私はそこで初めて知った。


「愛すること」だけが愛ではない。


「愛されること」も、こんなに幸せなのだと。






一緒に買い物をして。


子どもと公園へ行って。


くだらないことで笑って。

 



気づけば。


夏希は裕翔の隣で安心して眠れるようになっていた。






やがて二人は恋人になる。




そして。




夏希のお腹に新しい命が宿った。




「結婚しよう」


裕翔は言った。





夏希はしばらく黙って。


「……今は、このままがいい」


と答えた。






裕翔は無理に迫らなかった。


「分かった」





それだけだった。


二人は籍を入れず。




それでも。




二人の子どもを迎える準備をしながら、一緒に暮らした。

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