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夏希が選んだのは。
海の見える小さな街だった。
財閥令嬢として生きてきた夏希には、何もかもが新鮮だった。
そこで出会ったのが。
斉藤裕翔。
不器用だけれど優しい男だった。
「子どもの父親は?」
ある日、裕翔が聞いた。
夏希は答えなかった。
すると。
「言いたくないなら、言わなくていい」
それだけだった。
私と娘を優しく包み込み、何よりも私の気持ちを大切にしてくれる人。
私は少しずつ裕翔に惹かれていった。
私はそこで初めて知った。
「愛すること」だけが愛ではない。
「愛されること」も、こんなに幸せなのだと。
一緒に買い物をして。
子どもと公園へ行って。
くだらないことで笑って。
気づけば。
夏希は裕翔の隣で安心して眠れるようになっていた。
やがて二人は恋人になる。
そして。
夏希のお腹に新しい命が宿った。
「結婚しよう」
裕翔は言った。
夏希はしばらく黙って。
「……今は、このままがいい」
と答えた。
裕翔は無理に迫らなかった。
「分かった」
それだけだった。
二人は籍を入れず。
それでも。
二人の子どもを迎える準備をしながら、一緒に暮らした。




