凄いだろ!?このバナナ!!
突然だが私には体力がなかった。生まれ持った力に半比例するように、強大な力は持ちつつも持続させることは苦手だった。だからこそ、持つのにも体力を使う武器は苦手だった。おまけに、レベルも上がりづらく上昇すらも見込めなかった
しかし、ゴブリンキングやカゲリ、現影使いと圧倒的強者との戦いを短期間で繰り返したことにより、私のレベルは急上昇したのだ
それでも常に力を一定にセーブしていたせいで今まではあまり実感を得られなかった。しかし、枷を外した今
初めて私は上昇したレベルの恩賜をフルに感じることができた
足に力を入れると大地がひび割れる。そして膝をバネのように曲げて、体を斜めに
そして、思い切り大地を蹴り飛ばす
「そらッ!!!!」
結果、私は超高速での擬似的な低空飛行に成功していた
以前から持っていた力はより強く、ネックであった体力問題も改善されたが故の力業による飛行
私はまるで砲弾のように風を切り、目的地へと突き進んだ
やがて、進んでいく内に大きな崖が見えると、私は足を伸ばし地面に当てると移動を止めた
「リノアさん!リノアさん!!」
すぐに捜索を始めるがそれらしき影は見当たらない
それから3分ほどたった辺りだろうか、上からケガレさんが降りてくる
「上から見てきた!この辺りには居ないよ」
「となると…」
崖の下…。
すぐにその深い闇に向けて目を向けると、更にあるものが目に止まる
「これは…」
地面に落ちていたのは間違いなくリノアさんの持っていた杖だった
杖を拾い上げた私をみて察したのだろう。ケガレさんが崩れ落ちる
「嘘だろ…?」
「諦めないでください!まだ無事な筈です!」
オウカの言い方が正しいのなら、早くしろ。つまり、まだ助けられるということになる
「とりあえず見に行ってきます」
「ちょ!?ミリノちゃん!?」
とりあえず私は崖に飛び込む
流石に真っ逆さまは不味いと、所々岩を足場にしつつ落ちていく
遅れて何らかの魔法を使ったらしいケガレさんも降りてくる
「どんな身体能力してんのミリノちゃん!?」
「生まれつきです」
そうしてある程度まで落ちていくと、誰かの声が響いてきた
「リノア!ねえ!!」
「カゲリだ!」
「今リノアって!」
何故こんな所にいるのかは分からないが、ちょうど良い
私は残りの崖を一気に飛び降りた
「ッ…」
「カゲリ!!」
リノアを介抱している途中、上から見知った声が響くとすぐに衝撃音と共に土埃が舞い散った
「ミリノ!?貴女今どっから落ちてきたの!?」
「そんなことよりリノアは!?」
どうやら、リノアがピンチであるということは知っていたらしいミリノに横たわるリノアを指差した
「ごめんなさい…間に合わなかったみたい」
「あ…」
おびただしい血の量にミリノも察したのだろう。ただ一言だけ声が響いた
「まだだ!」
そんなとき、見知らぬ男の声が響く
ミリノとは対称的にふわりとその場に舞い降りるとリノアに駆け寄る
その黒衣には見覚えがあった
「貴方は…!!」
間違いなく、私のドラゴンを斬った男だ
しかし、様子がおかしい。彼は慌てた様子でリノアに駆け寄り、ミリノもそれを止める様子はない
わけありだろうか?…口を挟むことではないと判断し私は口を閉ざした
「おじさん…まだって?」
「あぁ。まだ生きてはいる…」
そう呟いた男の片目は光が灯っており、何かしらの能力であろうことが察せられた
「でも…この傷じゃ…」
「ええ。治療できる場所に運ぼうにもこの絶壁。登るまでに時間切れになってしまうわ」
「それでも…それでもまだ生きてる」
そう言うと男はリノアに杖を翳す。するとその体がゆっくりと輝き始める
「スーナ」
本当に初歩的な治癒魔術だ。治せても擦り傷程度の子供の実験レベルの魔術。しかし、男は諦めずに何度もそれを唱え続けた
「スーナ」
「スーナ」
「スーナ」
見た目に変化は起こらない。しかし、男は諦めなかった
関係が全く読めないが男にとって、それほどまでにリノアが大切な存在であることが理解できた
「私もやります!!」
立ち尽くしていたミリノが声を上げる
術者が二人になったことで光はより強くなる。しかし、まだ無駄だ
二人もわかっている筈なのに、それでも目映い光を放ち続ける。なんどもなんども目を細めたくなるような光を…
「…そうだ」
「二人とも!!」
治癒魔術を掛け続ける二人に声をかける
「私に賭けがあるわ」
すぐに二人が振り向く。策ではなく掛け。しかし成功すれば確実にリノアは助かる
二人は話を邪魔しないつもりか何も言わずただ頷いた
乗ったと判断した私は全身全霊を込めて、長い、長い槍を生み出す
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
時間にして10秒。貯めていた魔力全てを吐き出した私の前には槍…否塔が建っていた
「これに治癒魔術を!」
一瞬理解できないという表情をするが、二人はすぐに塔に治癒魔術を掛ける
「スーナ」
「スーナ」
すると、リノアの時と同じように塔は光輝く。当然、リノアと同じように全体が目映くだ
「掛け続けて!!」
何度も何度も治癒魔術を掛け続ける。その度に塔は光輝いていた
あとは賭けに勝つか負けるかだ
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謎の物体が現れて早10分。ようやく私はここにたどり着いた
道中の騎士の話からしても間違いないだろう
私は手に生み出したバナナを飲み込むと助走をつけて崖に跳ぶと光輝く物体に手をつける
「やっぱりな!!」
その感触はいつぞやの決戦。現影使いとの戦いで触れたものと同じ『影の槍』だ
いきなり点滅する細い線が出てきたときは何事かと思ったが、こんなこと出来る奴は一人しかいない
バナナによって強化された皮膚で摩擦を防ぎつつ一気に槍を滑り降りる
影の塔を作り出して既に10分。ようやく彼女はここにたどり着いた
「いや勢揃いだな!?」
賭けは大勝利。少女の生命はいまここで繋がれた
そして、この瞬間。ついに災厄に対抗する最強の勇者パーティがこの世界に誕生したのだ




