粉砕の現在
『おや?これは、これは勇者様?生きて』
「うるせぇ!!!」
剣をその場に捨てると、素早く奴の腹に一撃めり込ませる
『ふぐぅ…!?』
62回。私は死んだ…だから私は今からコイツを62発程ぶん殴ることにしました
体をくの字に曲げる男の腹をサンドバッグに、まずはウォーミングアップを開始する
「はぁぁぁぁーーーッ!!!」
リズミカルに一定タイミングで一撃、一撃を丁寧に打ち込む…!!
『ぐあっ…ァァッ!!』
しかし、物事はそう上手くはいかない。不意打ちをするように謎の花が奴の手に生み出される
呪術使いだし、刺さったらどうなるか分からねえですね…
そう考えた私はラッシュを中断し、体制を変えると男の手に絡みつき、全体重を掛けてへし折ってやった
『ギャァァァァァァァァッ!?』
そのまま傾く体を足蹴に跳ぶ形で距離を取る
「よっ!」
そして…着地した瞬間に助走をつけて走りだし、ぶっ倒れた男の体を崖に向けてボールのように蹴り跳ばしてやった
『ァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』
崖から断末魔が鳴り響いた
「43発しか殴れなかった…」
『ゴーレム軍団と化け蛇の時からポテンシャルは感じてたけど…想像以上だなコレ』
あまりに凄惨な光景に思わず声が出る
『……もーうちょっと…おしとやかさは残した方が良かった…かな?』
まあ過ぎたことは仕方がない!第一あんなので本気で傷ついて拳封印するくらいだし、根は優しくピュアな子だ!!一線は越えないだろきっと!
駄目だったら駄目だったで…それは保護者の仕事だろう
一目を気にせず戦える場所では時々彼女は本性を表していた。だが、それでも心のどこかでセーブが掛かっていたのだろう
だからこそ、現影使いとの戦いでは一目がないにも関わらず、本性は表せなかったし、蛇のときも剣を使っていた
……蛇といえば。あの時に出てきたナナのアレは一体…?
だってあの力は間違いなく
「ただいま」
『うおっ!早かったね…』
「はい…。やはり本気でやればあの時に現影使いを倒せていたみたいで…皆さんに申し訳ないです…」
あっ良かった。敬語だ
『どのみち実際のアレは影がないと倒せないから…君が洗脳されるかどうかの違いだよ』
ミリノの体が光始める
『さて。私の手助けはここまで!あとは好きにするといいさ』
『君は本気を出せば君のパーティの誰よりも強くなれる。きっとあの未来はもう訪れないね』
「本当にありがとうございました…。最後にアナタのお名前は…?」
『名前…?ルー…じゃなかった。そうだなぁ…オウカ。オウカって呼んでくれたまえ』
「オウカさん…ありがとうございました!」
『おーう。まあ私にも必要なことだったしね…ってあぶねえ!最後にもう一つ!!』
「はい?」
『今すぐオーバーフィールド行って!リノアがやば』
言い終える前にミリノの姿が消えてしまう
『やっちまったぁ……』
試練を終える前に話すべきだったか…
…まあ、意味は伝わったろ。多分!
にしても、私のダンジョンにたまたま迷い込むなんてなんて運の良い…いや運が良いのは私か?
とにかくやるべきことの一つが早くも終わってしまった
ミリノは真実を。リノアには発想を。カゲリには救いを
三人の勇者の覚醒は終わった。足りない要素は黄果に補ってもらえばいいだろう
…いずれ来る災厄。彼女達が戦うのは魔王なんかじゃない。もっとおぞましいものだ
どうかこの悲しい結末が変わるように私も奔走を続けよう
さあて次はフロスティアか。暖かい格好をしていかないとね




