真実の現在
「ぐあっ!?」
ハンカチのような刃物は私の首を切り裂き、周りには血がほとばしる
激しい痛みと共に、私の意識は闇に堕ちた
そして、覚醒する
「はぁ…!はぁ…!」
『61回目。そろそろ分かってきたんじゃないの?』
「うるさい…!!」
『はぁ…。ボクにそんな口聞く奴初めてよ』
瞬時に景色が切り替わる
『おや?これは、これは勇者様?生きていましたか』
「…。」
倒壊したダンジョンの前に奴は立っていた
「カヅチ!!」
手のひらから現影使いに向けて放電を放つ
『おっと。物騒な』
余裕そうな顔でハンカチを使い放電を防いだ現影使い
その広げられたハンカチが視界を阻む位置から彼に接近し、剣を突き刺す
『ッ!…なんてね』
「あっ…!」
目線を向けると彼の体を黒い影が多い剣先を飲み込んでいた
そして、下から付き出した槍が私を貫いた
『あれ?32回目と同じ死にかただね?』
「……」
少女の差し出した試練。それは現影使いに勝利することだった
「勝てるわけないですよ…。ナナさんですら皆が居ないと負けてたんですよ!?私一人でなんて…」
『そうかなぁ…?ボクはそうは思わないけど』
「だって…!現にこれだけ負けて…」
この62回。全て失敗に終わった。剣をメインにしても魔法をメインにしても。あるいはその両方にしても敗北。ならば逃走か、一か八か落下か…
やれることは全て試した上で、私は死んでしまった
痛みはないとはいえ、流石に滅入ってしまう
『やれることは全部試したねぇ…』
「ッ…?」
『あぁ。ごめんね。ちょっと覗いちゃった』
やはり得体の知れない
『失礼だね君。ってそうそう!試したとか言ってるけど、まだ一つあるでしょ?君の戦い方』
「………」
『それとも。そんな下らない意地を死ぬまで張り続けるかい?』
…
「下らない…?アンタに何が分かるの!?私の苦しみの何が分かるって言うんだよ!!!」
『え~?そりゃ分かんないよぉ。ボクまだこんなに小さいし』
「ッ!!」
やっぱりコイツに従っても無駄だ…。さっさと倒して外に…!
『分かるわけないだろう?そんな意味の分からない理由』
「!?」
下から現れた木々が私を貫き、磔にしてしまう
『拳を振るったせいで親友が傷ついた。仲間が出来なくなった?違うだろ。全然違う』
『アレは例え剣で打ち負かしてようが同じことをしてたし、周りも同じだったよ』
「…?」
『だって周りはアレに脅されてるだけだしね』
は…?皆野蛮な私が怖かったんじゃ…?
『君も分かっていたは…………え?ほんとに気づいてなかったの?』
『いやだって強いから怖いもクソも味方じゃん君。怖くて強くても味方だったら普通に頼もしいだけでしょ』
「だって…皆言ってて…」
『いやピュアか!!本心からそう思ってんなら皆もっと早くやるでしょうし、そもそもリノアも近づかないでしょ!!』
『嘘でしょ!?……アイツ娘にどんな教育してたのよ…。まさか礼儀良くなるんならこれでいいとか思ってた…?娘こんな苦しんでんのに!?』
一人でブツブツ言い出した少女の言葉が分からないほど頭が真っ白になる
皆に嫌われた訳じゃなかった…?私のせいでリノアさんが酷い目にあったんじゃ…
いつの間にか無数の木々は消えていた。私はその場でへたりこむ
『…いーやアイツに限ってそりゃないわ。うん。絶対…第一そんなことしてたらアイツにぶっ殺されるわwあん時みたいにw』
『…って危ない危ない。とにかく、君が拳を使わない理由はない!!』
「…じゃあなんで皆、アジナがいなくなった後も…」
『そりゃあ理不尽にリンチした相手とか後ろめたすぎて近寄れないでしょ』
『なんなら過去みる?』
先程と打って変わって、本気で困惑した様子の少女から全てが真実であると伝わってきた
『いやほんとに予想外。もうちょっと深い思い込みだと思って呼んだんだけど…ドストレートかぁ…真っ直ぐ受け止めてたかぁ…』
『まあでも小さい頃のトラウマだもんね…そういうこともあるかぁ…』
この少女は拍子抜けといった様子だが、私にとってはあまりに重い。重たすぎる楔が抜けていくのを感じた
無理して…無理してこんなことしなくても良かったんだぁ…そっか…
『あーとりあえず。落ち着いたら最後いこっか?』




