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戦慄!チョコバナナ!!

「沈め!クソゴーレム!!」


もう何度目になるかすらわからない、バナナの投擲。それにより、ようやくゴーレムの巨体が海に沈む


マジで地道な作業だっとけどなんとかなるもんだな…いやほんとに


自我が薄い(というより存在しない?)ゴーレム相手だからこそ出来た戦法だろうが…これを島にいるゴーレム全てに行えばひとまずなんとかなるだろう


地面は少し凹むがまあ許してほしい


とりあえず…さっさと次のゴーレムに…


その瞬間だった


「スラッシュ」


空気を震わすその言葉


そして恐ろしい気配と光、背後からの風圧に思わず左へ飛び退く


その瞬間さくっという軽い音と共に、地面には細く深い切り傷が刻まれていた


振り替える


そこに立っていたのは黒いフードで身を包んだ謎の人間


コイツが黒幕か…?



なんて悠長に考えていると、ふとフードの隙間からチラリと目が見える


「………ッ」


今でこそ勇者の仲間なんてファンタジックな戦闘職を行っている私であるが、その本質は単なる現代日本人。魔物を見てもミリノ達を見てもどれがどう強いかなんて判別出来なかった


しかし、今そんな私が恐怖をしている。ド素人でしかない私が強い…そう感じられる程目の前の男の覇気…?は強かった




考えている暇はないと、横払いに光の剣が振るわれる



不味い…!!一手遅れて私は咄嗟に一口、バナナを皮ごと齧ると上に向かって跳んだ


バナナによって強化された身体能力の助けもあってか、縄跳びのように難なく剣を飛び越えることが出来た


しかし、相手はそれを見て、さらに空中の私に振り下ろそうとする形で剣を構える



不味いな…!!



私はそのまま空中で弓を引くと、振り下ろされる直前に黒服の腕に向けて矢を放つ


「っ!?」


どうやら現影使いのような実態のないタイプではないらしく、矢の突き刺さった腕からの出血と共に男は光の刃を展開していた杖を手放す


男の手を離れた瞬間刃が消滅したことからやはり、アレはこの男の魔法だろう



「ッ…その弓…!やっぱりテメエは!」


今まで無言だった黒服が突然焦ったように何かを話し出す。私が勇者パーティだと気づいたってところだろうか?


だとすれば既に弓を使用する勇者の仲間の存在に感付いていることになる…つまり、最低でも私が加入した後のミリノ達の情報が魔王側に漏れていることになるが…


まあ考えるのはあとだ。私と奴には確実な実力差があるにも関わらず奴は狼狽え…冷静さを失ってくれている。少なくとも今この瞬間は


ならばこの隙を逃すようなことをするつもりはない


私はここぞとばかりに乱雑に狙いを付けると数を重視で男に矢を放ちまくる


「チッ!」


黒服は慌てて杖を持ち直すと、次はその杖で乱暴に矢を振り払っていく



放った矢は銃弾とまではいかずとも普通に考えて、少なくとも私には反応できない速度のはずなのだがそれをあの荒々しい杖捌きで弾くとは流石に畏れ入る


しかし、焦っていることに代わりはない。ならば何度でも矢を打ち続けてより焦燥させてやる



…その瞬間、目映い光が私を照らす


「ドロップ」


「ッ!?」


全身が一気に冷える。理由はその声色だ。発された声には確かな理性が、落ち着きが感じられた


そして、次に焦るのは私の番だった。あるはずの物…現影使いとの激しい戦いですら体から落ちることはなかった矢入れのヒモが千切れるでもなくほどけ、床に矢が散乱してしまっているのだ


「スラッシュ」


戸惑っているその隙を狙ってか、再度剣が構築され間髪入れずに振り下ろされる


「ッ!」


左に回避。身体神経によるゴリ押しでほぼ飛ぶように転がり落ちることで剣の直撃を避ける


しかし、落ちた矢は剣に巻き込まれほとんど焼けてしまった。むしろ、こちらの方が狙いだったのだろうが



ドロップ。あの男の発した言葉…否呪文か。落ちるという意味通り物を落とす呪文か


一見馬鹿馬鹿しく地味な呪文だが、弓兵にとっては間違いなく即死技に相応しい、恐ろしい効果だろう


油断した…!おかしいと思うべきだった強者だとは感じ取れていたのだ、獲物が大物だと分かったからって取り乱すような奴にあんな覇気は出せないだろう


つまりは、私に油断させる罠。そして私はしっかり弓兵としての力を失ってしまった



男もこれで私に攻撃方法がないと見てか、隙だらけの大降りに力の入った一撃が振りかざされる


「スラッシュ」


回避も不可能な斜めの斬撃


確かに弓兵ならば迎え撃つ手立てもなく、剣を受けるしかないだろう


弓兵ならばな




私は強化された身体能力に身を任せ男に急接近すると、そのままの速度でバナナの皮をその足元に投げつける


いつも通り、踏んづけた男はその場で宙を舞う。予想外の事態に集中力が途切れたのか光の刃も再び消滅してだ


宙を舞った男が落ちてくるその瞬間、野球のバッターのように硬さを調節した冷凍バナナと腕力で男の脇腹に一撃叩き込む


「これで終わり…!オォォォォ―――――」


「がぁッ!!」


内部構造も人間とそう変わらないのか、苦痛の声と骨の折れる感触をバナナ越しに感じつつ腕にかかる抵抗を振り払う


「ラァッ!!!!!!」


私の渾身の叫びと共に吹き飛ばされた男の体がドボンと海に落ちた


「やっ――――――」







「王国式剣術…朝焼(あさやけ)」


「は?」


体に鋭い痛みが走る。まるで一瞬時が止まったように男の落ちた海が視線に入り


急速に離れていく




遅れて聞こえるバシャァァァァンという水の吹き飛ぶ轟音と風と金属の擦れる音


そして、私から吹き荒れる赤い液体に吹き飛ばしたはずの男が視界に移ったところでバキィ!という音共に全身を声がでない程の激痛が駆け巡る


「な…にが」


続いてこの場をすさまじい風圧、ソニックブームが襲ったのだ













「ッ…」


「驚いた。まだ命があんのかテメエ」


攻撃の衝撃で木々が吹き飛び、更地になってしまった平野で未だ息の残る少女に男は驚く





意識が飛んでた…。全身に激痛は走るが今度は意識が飛ぶほどではない。先程木に叩きつけられた時は間違いなく全身の骨が折れたと思ったのだが…


バナナの効力のお陰だろうか


新たにバナナを生み出し食らう。瞬間みるみる内に痛みは引き、調子が戻る


目の前の男は先程とは違い杖ではなく、本物の剣を握りしめており、間違いなく私は男の反撃を受けたのだろうと確信した


「テメエ…なにして」


「喰らえボケェッ!!!」


そして戻った瞬間冷凍バナナを地面に投げつける


「っ!?」


警戒した男はその場から下がり、爆発の圏外へ移動する。しかし、構わない。これは攻撃ではなく目眩ましなのだから


そして間髪入れずに空気が凍ることで生み出された氷柱をへし折ると、弓にかける



「なっ!?」


これは…というより冷凍バナナの挙動から想定外だったのか先程とは違い本気で驚いた様子の男に少しほくそ笑みながら容赦なくその体に氷柱を打ち出す


ミリノ達見たく名付けるなら『アイス・ショット』とでもいったものか



驚きに距離、速度や氷柱の大きさ様々な要因が重なった結果であろうが氷柱は男の胸…とまではいかなかったがそこに近い部位に突き刺さる


「ぐっ!?」


その隙に間合いを取り、宣言する


「第二ラウンドだ…!!」



逃げは不可能。先程の一撃、音が遅れて聞こえた…つまり音速を越えていることになる


流石にそんな一撃を放つ化け物に背を向けて逃げ切れるわけがない



だが、だからといって勝てるわけがない…!!こんな化け物!!


というかなんで私生きてんだよ…!頭おかしいだろアイツ!!こんないたいけな少女にあんな化け物みてえな一撃かましてくるとかどうなってんだ


てか森消し飛んでるし…!ソニックブームで消し飛んでるし!!


とにかくあのアサヤケとかいうクソ技を次かまされただけで私はあっさり死んでしまうだろう


正直心臓もバックンバックンだし。私の予感は間違っていない、この男は間違いなくこの世界で対峙してきた敵の中で最も危険だ



だが、逃げも不可能、勝利も不可能。じゃあ大人しく殺されるかと言われるとそれも否だ


せっかく拾った命をここで捨ててたまるか


ならばどうするか…それは簡単な話だ


私が逃げれないのなら、アイツが逃げてくれればいい


「――――――アッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」


「っ…!!」


少しでも自分を強く、恐ろしく見せるために盛大に笑いを演じつつ、警戒してかいつまでも行動をしてこなかった男に私から先手を仕掛ける


冷凍バナナを手にした私はそれを狙いも定めずに、ただ男に向けて投げ飛ばす


目眩ましの時にこのバナナの能力は思い知っただろう。男は先程と同じ距離体を下げる


そう、先程と同じ距離だ


「なっ!?」


先程のは至近距離だったことや目眩ましが目的だったことから威力を抑えていた。対してこちらは攻撃として放った…最大火力だ


当然、範囲もこちらの方が上である


凄まじい冷気と共に男の体が凍りつく…。いつもならばこれで私の勝利であるのだが、相手は音速を越えるような攻撃を放つ化け物…つまりその速度に耐えられる体を持っているわけだ


そんな奴が氷漬け程度で死ぬとは思えない


そう考えた私は更に三つ、冷凍バナナを氷漬けになった男からあえて外す形で同時に放り投げる



ちょうど冷凍バナナが手から離れたタイミングで氷像とかしていた男が動き出し、自身を拘束していた氷塊から後ろに下がる形で脱出する


「っ…!なんだ今の」


当然、予測済みだ


少し離れた位置で一つ目の冷凍バナナが爆発する


すると、その爆風と空気を凍らせ凄まじい勢いで精製された氷柱が、男を拘束していた氷塊の残骸にぶち当たる


当然、同じ硬さの氷か勢いよくぶつかれば勢いよく破裂する


勢いよく吹き飛んだ氷の破片が男に降り注ぐ


「なぁっ!?」


慌てて剣を振り回す様子が目に入る。続いて二発目、三発目と爆発し破片の量を増やしていく



ところで、男の武器が切り替わっている件だが。普通に考えて現実的な金属の刃よりも自由のきく魔法の刃の方が火力や殺傷能力は高い筈だ


それにも関わらず、男はわざわざ武器を金属の剣に持ち変えた


じゃあその理由は何か?


憶測するにあのクソ技はなんかしらの理由であの剣、もしくは魔法では放てないのではないだろうか?


少なくともそれに私は賭けることにした


「くっ…の!?」


丁度破片を捌ききった瞬間、バナナの皮を投げつける


捌ききられた頃には男も冷静さが戻り、私を警戒しているようだった


だが、だからこそこの必中の皮は効くだろう!!


宙に舞った男の顔に再び驚きが浮かぶ。今度はさっきよりもだ


当然だろう。不意打ちでもなく、未知の技でもなく…一度喰らった技を一切の余裕がない状況で再びかまされたのだから


自分の強さに理解があればあるほど、その驚きは大きいだろう


その隙に足元の氷柱をへし折り、先程と同じくぶっ放す


次はその剣を狙って、だ


「ッ…!!」


狙い通り、弾き飛ばされた剣が男と共に地面に落ちる


そして男が立ち上がる前に剣に駆け寄り、冷凍バナナを投げつけて封印だ


矢のお返しだ。これで剣士だったらなにも出来なかったな!…剣士だったら


「…スラッシュ」


すぐに立ち上がった男が呪文を唱える。手にはさっきまでの光の刃だ


そしてスッと光の刃が横に伸びる


横払いの動作だ


このタイミングでクソ技じゃなく横払いということはやはり私の予想は合っていたのだろう


確かに凄まじい一撃だが、あの技よりはマシだ。先程とは違い、次は剣を潜り抜ける形で避ける。さっきと同じ避け方じゃあ次は対策されそうだからな!!


そこからは回避続きの私と猛攻を仕掛ける男の近距離線だ


伸縮自在の剣から繰り出される攻撃はまさに自由自在。ナイフのような使い方をしてきたと思えば、時代劇でみるような刀に。慣れてくればミリノ達のような西洋剣


身体能力のゴリ押しでどうにかなっているが、流石に辛いな!


「アハハハハハハッ!!」


勿論、強キャラアピールも欠かさずにな!!


出来ればこのまま私の強さを誤認して撤退して欲しいのだが…まあ上手くはいかない


しかし、いくら魔物でも生物は生物。流石に無限に動き続けられる訳がない


飲まず食わずの男とミラクルバナナを摂取している私。どちらが先に果てるかは言わずもかなだろう


まあ、果てる前にやられちゃあ元も子もないのだが…!!


にしてもコイツさっきのドロップといい、目潰しだの、体が重くなるだの陰湿な技ばかり使ってくるな


デバッファーって奴だろうか。案外適正としてはサポーターだったりも…いやねえな



なんて考える余裕も戻ってきている。この男、やはり凄まじい強さではあるのだがその一撃一撃はどこか乱雑で慣れてくれば(身体能力の底上げ込みならば)回避くらいは余裕で出来る


もしかしたら本質は大雑把な性格なのかもなこの男






しかし、その余裕が良くなかった


「は?」


気づけば私は宙を舞っていたのだ。何故か


視界の端に移るのは土に汚れた黄色い物体。バナナの皮だ


「なんかおかしいと思ったが、それやっぱり必中か」


ぷすっなんて気の抜けた音が私の胸の中央から響いた


そのまま私は凄まじい勢いで地面に磔にされる


「あ…」


男はずっと状況を伺っていたのだ。私に余裕が生まれるこの状況を…先程と同じように


男は磔になった私に容赦なく蹴りを浴びせてくる


「…ふーん成る程な。俺の剣を耐えるなんてどういうことかと思ったけど…こりゃあ傷口が再生してやがるのか」


蹴られて出来た痣が瞬時に回復するのをみてそう呟く


「完全再現だな」



男は杖を引き抜こうとはしなかった。私を貫いた状態で放置すれば傷を癒そうにも剣が邪魔で削れた部位を再生することが出来ないと踏んでだろう


そしてそれは正解だったようだ。私は身体中から力が抜けていくのを感じる


心臓を貫かれているというのに即死しないのはやはりバナナの力か…だがそれも長くは持たないだろう


今までの気絶とは訳が違う。深い闇が私の意識に襲い掛かる


完全敗北だ。この状況では冷凍バナナも普通のバナナも役には立たない。そして弓も使えない、つまり打つ手が無くなってしまったのだ



いや…まだだ…そういえば…!


「オイ!なにして…」


私は残る力を振り絞って、手に生み出したバナナを口に含む


口の中に広がるのは、通常のバナナよりも遥かに甘いチョコレートの味。チョコバナナだ


現影使いとの戦いのあと使えるようになったこれは、まだどんな能力か試していない


私の生み出すバナナは例えば普通のバナナの疲労回復、冷凍バナナの投げることによる爆発といった具合に口にする、もしくは投げることでなにかしらの効力が発生する




もしかすれば、このバナナにこの状況を打開する能力かあるかもしれないと一途の望みをかけて飲み込んだ


「………」





なにも…起きなかった…。投げるタイプだったのだろうか…それにしてももう終わりだ


「…なにも起こらねえのかよ!警戒させやがって」


近づいてくる男。それに恐怖してか、あるいは命乞いのつもりだったのか。その時私は男に手のひらを向けた。…その瞬間だった


「なっ!?」


しゅーっ!という心地の良い音と共に男に向けて手から何かが放たれる


続いて凄まじい轟音と共に色取り取りの炎がその場で咲き乱れる


アレは…花火?


「ッ!?」


爆発は一回。それでもその場には焼け跡が残るほどの爆発だった


そして何よりの収穫はその一撃で光の刃が消失したのだ


傷口が瞬時に塞がり、急速に意識が戻る


「ッ……危なかった…!」


男は立ってこそいるが身体中から煙を上げ、纏ったフード等に至っては未だに火が灯っている



チョコバナナで花火…祭り繋がりだろうか?ほとんどバナナ関係ねえな!!でも良く考えたら冷凍バナナの時点で割りと関係ねえな!!!


だがまさに一発逆転だ


私はこの能力がバナナ1本につき花火一発なのか、バナナを食べることで一定時間花火を放つことが出来る力なのかがまだ分からなかった為、念のために二本目を口に含みつつ男に手を向ける


さあ…第三ラウンドか?それとも…


「チッ…」


男は撤退を選んでくれたようだ








男が去ったとたんその場に崩れ落ちる


いくら傷が回復したとはいえ、精神的疲労や痛みの恐怖は抜けないのだ。腰の抜けてしまった情けない姿勢になりつつ、現状について考察する



位置からしてカゲリはアイツにやられた可能性が高いな…


逃げ延びてくれていれば良いのだが…。それにゴーレムの対処もだ


余計な時間をくってしまったせいでバーフ達の安否も気になる


ここからでは戦闘の音も聞こえず何もわからない


どうやら…休憩している時間はないようだ

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