↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/90

現実の過去

「うぐおっ…!?」


鈍い声を上げてアジナが宙を舞う


ぼとっ。という音と共に私の目の前で横たわるのは幼い頃のアジナ。アジナの近くには木刀が落ちているにも関わらず、幼い私の手には何も握られていなかった


…どうやら私は再び夢を見ているらしい。しかし今回は前回のように夢を現実と錯覚することはないだろう


何故ならば、今回の夢は物語などでいう三人称視点なのだから



「て…てめえ…!!」


「まだやるの?」


「化け物が…!!」


悪態を付きその場から走り去るアジナ。これは忘れもしない…。私が落ちこぼれになった時だ


走り去るアジナはボロボロで顔が腫れ上がっていた。誰がどうみても『やりすぎ』だ



リノアさんは余程私が怖かったのか、うずくまって泣いていた


そんなリノアさんを見て、幼い私は声をかけるでもなく何処かへ歩いていってしまった



これは私にとって最も記憶に残っている出来事


あの手この手で私に試合を申し込むアジナに嫌気が差し、本気で暴力を振るってしまった時の出来事だ




「お帰りミリノ」


「ただいま」


「また剣の稽古をサボったのかい?」


「剣なんて必要ない。私にはこの拳があるから」


「うーん…そうは言ってもねえ…」


あの後、結局その辺を散歩して家に帰ってきた私だ。


お父さんはいつまでも剣を使おうとしない私にいつも頭を抱えていたのを覚えてる


これもいつもの日常会話だ


「まあまあナノ。使いなれないなら使わなくてもいいじゃねえか」


「っといっても魔王を倒すにはこの剣がないと…」


「ようは止めの時に使えば良いだけだろ?」


「そりゃそうだけど」


友達と話し込んでしまった父をみて、私は何をいうでもなく部屋にはいっていってしまった


父達は話しに夢中なのか気づいていないようだ



この時の私の頭にあったのはアジナへの罪悪感かそれとも単なる疲れか、よく覚えてはないけど何か考え事をしていた気がする



まあどうでも良いだろう。恐らく前の夢のようにこの夢…過去を最後まで見続ければ目が覚めるのだろう


本当に趣味が悪い…




再び場面が変わる


次は朝の訓練場だ


「…?」


皆がヒソヒソと私を指差し話している


「何かよう?」


「ひっ!?」


話しかけたらその瞬間に逃げてしまうので理由も分からなかった


よく考えれば分かることだったのだが



やがて私は広場に人溜まりが出来ていることに気がついた


人混みの嫌いな私はこの時、すぐに立ち去ろうとしていた


人混みの中央から数少ない聞き覚えのある泣き声が響く前までは



「やめて…!やめてよ!?」


「リノア?」


思わず声を発する


「ミリノ…」


「ミリノだ…」


見たところよってたかっていじめか何かだろうか?それも暴力


あまり気持ちの良いものでもない。止めようか


なんて考えながら私は拳を握りしめた


「…そうやって僕らも殴るのか?ミリノ」


「は?」


「アジナ様みたいに私達も理不尽に殴るんでしょ?」


何を言っているんだろう?っと本当に理解に苦しんだ


「だから違うの!!!」


「まだ言うか!!」


何かを弁明しようとしたリノアさんに手が振るわれた


間違いなく、昨日のことが広まったのだ。アジナを力任せに傷つけた悪行が


挙げ句、その報いがどういうわけかリノアさんに振りかざされている…


誰がみても明らかだった



その後どうしたのかは覚えてない。ただその日以降、私は拳を振るえなくなり、私とリノアさんは家族とお互い以外、誰とも話せなくなったのだ


私にとって拳を振るうことは何よりも最悪な選択だったのだ







目が覚める


「………」


目の前には光が差している。出口だ


私は何も考えず、光に向かって足を進めた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。