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影の戦い

いやな予感がする…ふと窓に目を向けた私はその瞬間足元に影を生み出す。


「なっ――――――」


近くに居たナナを巻き込み、私は影に潜った。







「……はぁ…はぁ…」


心臓の音がなり止まない。本当に危なかった。


「ッ…!?なんだ!?」


「落ち着いて、私の影よ」


そういえばナナを入れるのは初めてだったか


「影って…なんで急に」


「魔物よ…巨大な魔物が窓に」


「は?巨大な魔物ってここオーバーなんちゃらで魔物は出てこないんじゃ…」


「いいから…出るわよ」


影ごとある程度移動した先で私達は外に出る。



「なっ!?」


目にはいってきたのは宿泊施設の五分一くらいだろうか?とにかく規格外に巨大なゴーレムと、一階部分が破壊された結果グシャグシャに崩れてしまった宿泊施設だった。


「嘘だろ……ミリノとリノアは!?」


声を荒げるナナに返答する。


「リノアは遊びにいくって言ってたし、ミリノはリノアが訪ねたとき居なかったみたいだからたぶん無事よ。施設も私達の貸しきりの筈」


「!!……」


見るからに安心したと言う顔で胸を撫で下ろす



瞬く間に周辺の建物から人が出てきて逃げていく


「大惨事だな…」


「次の標的を決められる前にどうにかしなきゃね…」


「あぁ…ってどうにかするってあれを!?」


「止めないとどれだけ被害が出るか分からないわよ!!」


「……っ!!とりあえず建物から離すぞ!!」


そういうとナナは自分達の背後に何もないのを確認してから、弓をゴーレムに向け放ち始める


「いけ!!」


それを見て私も影の槍を放つ


大きさ故大したダメージにはなっていないようだが、何かを延々と投げつけられるというのはやはり気にくわないようでゴーレムが私達に振り返る


「急ぐわよ!!」


「分かってる!!」


それを確認した私はすぐに影を生み出す。いくらゴーレムがとろいとはいえ、あれだの大きさならば私達の元にたどり着くなんてすぐだ。


そう考えて負担はあるが影による移動に切り替える。


「出るわよ!」


「おう!!」


影から出たときには既に私達が居た場所はゴーレムに踏み荒らされていた


「とりあえず人里離して何もないところで貴女のバナナで転ばせる…っていうのはどうかしら」


「賛成だ。ただあれ自重なんかで壊れるか?」


「時間さえ稼げればいいわ!!だってあと少しで」


「なるほど!!!」


私の言葉を遮りナナが声を上げる。


「と言うわけでとりあえず一発目を!!」


「了解!!!」



―――――――――――――――――――――――――


鳴り響く警報に耳を塞ぐ


先程捨てたリノアが引っ掛かったのだろうか。ともかく悪い選択だったようだ。


「死んでもめんどくせえ奴だな」


本当に何から何まで俺の邪魔をする…









「ミリノ!!俺と決闘しろ!!」


「……」


竹刀を片手に青髪の少女にそう告げる


「お前なんかより俺の方が勇者に相応しいってのを証明してやるんだよ!!」


「…」


「ビビってんのかよ?シカトしてんじゃねえぞ!!!!」


叫びに気づいたのか赤髪が割り込んでくる


「ちょっとアジナ!やめなよ!!」


「うるせえ外野!!父さんに言いつけんぞ!!」


「言ってみれば良いじゃん!」


俺は何をしても許されてきた。コイツを庇おうとした奴だって結局は権力にビビって怖じ気づく。


戦いだって一級品。誰も俺には勝てなかった。


だと言うのに勇者に選ばれたのはコイツ。俺じゃなかった。


「て言うか、落ちこぼれのゴミが俺に意見すんじゃねえぞリノア」


「これから強くなるんだよ!」


「お前みたいなんが努力したところで意味ねえんだよ!!」


「やってみなきゃ分からないじゃん!」


俺に対して無礼にも反論を続けるコイツにカチンと来て俺は持っていた竹刀を振り上げた。


その竹刀をガッシリと捕まれる


「少なくともいつまでも父親頼りのおこちゃまよりゃマシだと思うけどね。私」


「…なんだと?」


「やるなら早くかかってくれば?」


何度挑んでも無視して何も言ってこなかったコイツがその日は何故か俺の決闘を受けたのだ。


「っ…!後悔すんなよ!!!!」


「……」


それが初めての敗北だった




青アザまみれの体を起こす。気がつけばアイツは何処かに消えていて俺は地面に倒れてた。


本当にウザイ。権力も力も…全てアイツに負けた。


視界の端にこちらを覗き込む赤髪が見えた。敗者を嘲笑ってやがるのか…そうだ…コイツのせいだ。


コイツと無駄な時間を過ごしたせいでアイツに勝てなかったのだ。ふざけるな。コイツのせいで勇者になる資格を逃したのだ。



















死んで清々したな。やっと俺に歯向かった報いを受けた。

―――――――――――――――――――――――――――


何度目かの凄まじい轟音と共にゴーレムの巨体が地面に倒れ伏す。


「そろそろか!?カゲリ!」


「ええ…十分暗くなった。私の本領発揮よ」


私の魔法はある種闇と影を同一視している。簡単に言えば純粋な暗闇を影として扱うことが出来るのだ。


最も本物の影より汎用性は低いが。しかし本物の影から生み出したものを無制限に維持、拡大する程度なら余裕で出来る。





そして今この時間、日は完全に沈んだ



ゴーレムの影が一瞬で巨大化する。


「…………!!」


その自身の影に溺れるようにゴーレムが沈んでいく


やがて首から下を完全に呑み込むとゴーレムはそこで止まった


「とどめよ」


そんな身動きの取れないゴーレムの頭を更なる影が覆う。


首だけを動かしたゴーレムの目に入ったのは巨大な黒い金槌だった。

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