勇者!スネーク!現影!その2
フレアです。
やあ!私はナナ!!戦闘中だ!!!
「やらせるかァァァァァ!!!!」
攻撃が効かないという圧倒的有利を失った上、私の必中による効果で即死にも近い攻撃を行うことに感づいたのだろう。
私が矢を放つよりも先に、奴は影の槍を構えて急接近してくる。
冷静さを失ったのだろう…。この技は何度も食らっているはずなのに。
「っあ!?」
奴は足元のバナナを踏みつけ、宙を舞う。
流石に回転している奴の体で心臓を狙うのは難しく、背中に一発矢が決まる。
恐らく、必中といっても狙いを定められなければ発動しないのだろう。
念じただけで相手に飛んでいく便利アイテムではないらしい。
そういえば気がついたのだが、奴は影の体で実体が無いから私達の攻撃は効かない。と言う話だったのに、何故バナナは効くんだ…?
これも、バナナの力なのだろうか?
ふと考えるが今は戦闘中、余計な考えは捨てる。
「ッアァ…」
今の一撃が効いたのだろう…カゲリを捕らえていた影魔法が途絶え、消滅する。
「っあ!!」
外から聞こえてきていた戦いの音も止んでいた…。
現影への供給が途切れ、新たな現影が現れなくなったのだろう。
カゲリへの変装も解け、元のノロが転がる。
「よくも…!!」
奴は恐らく純粋な治療魔法で、傷の応急処置をして、立ち上がる。
アイツ普通の治療魔法も出来るのか…。
「…どうやら私の残しといた矢を使ってくれたみたいね」
状況を理解したカゲリが口を開く。
「あぁ…。」
「きさまら…!!」
恨めしそうな声で現影使いが叫ぶ
「後は頼めるか」
「もちろん。」
復活したカゲリに前線を任せ、私はサポートに回る。
「70年に終止符をうってこい!!」
ある意味、現影使いによる一番の被害者だ。自身の手で決着をつけるべきだろう。
「!!」
「シャア!!」
「…?」
ひたすら、作業のようにポズインスネークを切り裂いていたサルベルだが、ここで気がつく。
傷の再生が止まっている…。
先程まで、切っても切っても再生した傷が、一向に再生しないのだ。
どうやらナナ殿がやってくれたらしい。
そう判断した私は、愛用のサーベルを構え、蛇に飛びかかる。
キシャア!!とポズインスネークが飛びかかるサルベルに反撃しようとするが、もう遅い。ポズインスネークが反撃しようとした瞬間には、首を落とされていた。
本物のポズインスネークならば、首が落とされる直前に、策を練り、形成を逆転することも出来ただろう…しかし、このポズインスネークはただの蛇、回復能力を失ったその瞬間、騎士長にとっては、ボスモンスターではなく、ただの大きな蛇でしかなかったのだ。
ばたり、と蛇の体が倒れ、影に変わって消滅する。
戦闘終了だ。
「ッ…!」
体が痺れて動かしずらい…。
ミリノちゃんは倒れる私にゆっくり近づいてくる…。
いつものように、手を差し伸べてくれるのならどれだけ良かったか。今のミリノちゃんの手に握られているのは、剣。敵を切り裂く勇者の剣だ。
「ッ…!!」
ダメ元で魔法をうってみるけど、やっぱりまるで効果がない。当然だ。
風邪を引かせるとか、痒くさせるとか、なんの役にも立たないふざけた魔法ばかり…。皆にもよくばかにされたなぁ…。
ここで、何故か昔のことを思い出してしまう。ミリノちゃんと戦って、稽古のことを思い出したからだろうか…。
そういえば…ミリノちゃんだけはこの魔法、褒めてくれたなぁ。
スタスタとミリノちゃんが歩いてくる音が聞こえる。
確か、体の状態を変えられるなんて凄い!とか言ってくれたよね…。
ふと目の前には剣を振り上げるミリノの姿。
そんなときにふと思った…。体の状態を悪く出来るなら、その逆も出来るんじゃないか…って。
試したこともなかった。魔法と言うのはそもそも相手に害を与え、倒すための技術。治療魔法以外の魔法を自分に使うなんてもっての他だ。
でも、やってみようと思った。ここで負けてしまうなら、賭けてみようと思った。
普段、攻撃魔法を出そうと思う時とは逆に、穏やかな気持ちで、自分に魔法をかける。
振り下ろされる剣。それはリノアを切り裂くことはなかった。
ガッシリと、リノアの杖に遮られている。
「ハァ!!」
「っ!!」
普段よりも全然力が出しやすい。成功したのだ。
私の魔法。ふざけた効果しかないように見えたけど、体の調子を変える力があったんだ…。
聞いたこともない。自分に魔法をかけるなんて…。
でもこれが、私の戦い方。
「見つけた…!」
力任せに杖を振るう。けれど、その力は圧倒的で、ミリノちゃんを簡単に吹き飛ばす。
害を与えるのではなく、利を与える。
ナナの世界の物語では、強化魔法と呼ばれていた技術。
この世界にはまだ、存在していなかったのだ。
故に誰も、自分自身すらもその適正に気がつくことはなかった。強化魔法の適正に。
「それ!!」
凄まじいスピードで、吹き飛ぶミリノの背後に回る。
ミリノも回られたことに気がついたのか、何とか剣で防ぐ。
ガキン!と金属のぶつかり合う音が響いていた。
「私…ガァ!!」
「ッ!」
しかし、圧倒的にリノアが押しているのだ。
「私ガァ!!!!」
力で勝てないならと、リノアを感電させようと、再び剣に雷を纏わせる。
しかし、リノアは一切力を緩めない。自身の魔法で、一時的に雷への耐性を得たのだ。どういった原理で発動しているのか、それは本人も理解していない。ただ、出来そうだからと実現させている。
「それ!!」
「ァ!!!」
押しきられる。剣を弾かれて、守るものがなくなったミリノに、力一杯杖を振るう。
「あっ!!!」
決着だ。
肉体のスピードを極限まで強化したリノアの無数の突きを全身に食らったミリノはあまりのダメージにその場で意識を失う。
「わたし…が…」
強化魔法を使用して、僅か一分も立たないほどの瞬間決着だった。
「やっ…たぁ…。」
しかし、リノアもその場で同じように倒れ伏す。魔法を使用して無理矢理動かした体へのフィードバックをくらったのだ。
「ナナ…カゲリ…後はよろ…しく…」
酷使した肉体の痛みの中、先のフロアで戦う仲間に全てを託し、意識を手放す。
次回、最終決戦




