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第九十三話 「単騎決戦 急」

白髪の男は屋根から飛び降りて、私の目の前に着地した。さっきの様な通信は無かった筈だが…、何故此処に?


「最上位旧英雄が一人、はちじゅうわぁぁぁっ!!?」

「ルギル殿!?」


なんかウザかったので足元に『雷帝』で敷いた電床で足を痺れさせて転ばせた。うーん。頭打って死ねば良かったのに。


「っつぅぅ…。いきなり転ばせるとは無粋な長耳族だな!」

「うるさい。背後から殴っておいて何を言う」


そう言うと、旧英雄はぐっと押し黙ってしまった。言いくるめられちゃうのかぁ…。なんかチョロいぞこの旧英雄…。


「しかしおかしいな…ルギル殿の物理攻撃を喰らっているにもかかわらず何故生きているのだろうか?」

「手加減してくれたんだろ?」


なんか奴の背後から小声で会話が聞こえてきた。普通の人が物理攻撃を喰らったら死ぬのか。へぇ。てことはこの外装はそんな奴の攻撃をあれぐらいの衝撃にまで抑えたわけか。やっぱり凄いなこれ。


「まぁいい…。九十級が仕留め損ねた此奴を人皇に持っていけば、さぞお喜びになるだろう」


そう言って彼は拳を構えた。戦闘態勢だ。奴の武器はその殺傷能力から拳という訳か。だが、確かに人皇には会いたい。会った瞬間には刃を向けるぐらいには会いたい。でも、そんな奴隷みたいな状態で行きたくない。

なら抵抗しよう。相手が満身創痍になるまで。


「ほう、弓を構えるか!その様な弓をこの拳で破壊してやろう!」


旧英雄は一歩踏み込み、拳を振り抜いた。それを弓で軽くいなそうとする、がゴキンッという音を立てて火花を散らした。結構ヤバイ音が鳴ったな。大丈夫かな?


私は左手で『雷帝』と『霹靂』を混合させた魔力弾を放つ。思い切り体が前に出ているのでこれは防ぎようがない。


思い通りに旧英雄は真っ正面から被弾し吹っ飛ばされた。思い切り目的の家屋へとぶつかり壁を破壊して地に落ちた。よくよく見ると気絶している様に見えるのは私だけだろうか?


「あのさ」

「は、はいぃ!」

「あれ、もしかして気絶してる?」

「馬鹿め!こんなちんけな攻撃で気絶するとでも思ってるのか!」

「あ、そう。じゃあもう百発行こうか」

「えっ?」


なんだろう、こんなに旧英雄相手に気楽に戦えるのも多分最初で最後だろう。楽しんで行こう。

百発は案外早く終わった。気付いたら目的の家屋は完全に無くなってたし、旧英雄もボロボロになり、気絶していた。…………勝ち、で良いのかな?


「勝ちでいいかな?」

「…えぇ」

「人皇のいる場所、分かる?」

「あちらの王宮に御座います…」

「ありがとう。じゃあ、貴方達もこうなりましょ?」

「あれ?」


目的を忘れてたので急遽思い出して兵士達にも魔力弾を放つ。唐突な攻撃だったので兵士たちは成すすべも無く、それを受けてしまった。即死だったみたいだ。

とりあえず地下室に潜り込んで長耳族の人達を探す。4人。


「大丈夫ですか?上で色々してすいません…もう終わったので」

「あ、いえ…大丈夫です」

「『治癒』は必要ですか?」

「大丈夫です」

「そうですか、でしたら『転移穴』がある地下室へと誘導しますね」

「分かりました」


この人は何か落ち着いていた。大体は何かしら怯えたり、精神がやられて居たのか反応してくれなかったりだったのだが、珍しい。


「あの、なんで貴方は一人でこんな所に?」

「それは、長耳族の仲間を救出するという義務があるので。それに…人間族には他にも恨み…って言うのかな?まぁ、色々事情があるんです」

「そうですか…」


他の三人は喋ろうとしない。ていうか皆それぞれ傷がマチマチだ。良い事なんだけど、買った奴の飽きが来て追加してったのか。よくもまぁ飽きずに…。なんて思っていると、『叡智』から通信が飛んできた。


『やぁやぁお疲れ様。これで南側は制覇だ。でも『探知』で見渡してるともう北東西側の兵士たちが引き返してきてる。出くわしたら分かってるね?』


勿論。生かす必要がない。


『あぁ、それと。彼処に戻ったら、そのまま広場へ向かってくれ。場所は教えるからさ』

「了解」


そう言って急いで戻る。一番傷が多い子を担いで走ったからか、結構疲れたけど、まだ動ける。『転移穴』がある地下室に辿り着いて『転移穴』に通した後、私は『叡智』に誘導されながら広場へと向かった。


──────────────


広場に出たが、閑散としていた。おかしいな、少しぐらい人が居ると思ったんだけど。じゃあ人間族達は何処に避難してるんだ?


「…ふぅ。それで?私を此処に誘導したのはなんで?」

『なんでもなにも、前哨戦は終わりだって事さ。これから君は人皇と対面する事になる』

「ちょっと待ってよ。長耳族の救出だってまだ終わってない。そんな状態で神器を抜いたら巻き込んじゃう」

『大丈夫。王宮以外に囚われている長耳族以外はこれで全員だ。僕が南門から攻めろって言った理由は長耳族が囚われているのが南側にしか無かったからだよ?だから、安心して人皇に引導を渡してきてくれ』

「違う…全員じゃない。お母さんとお父さんをまだ見てない!」

『…確かにね。でも君の両親は、奴に会わないと出会えない。あとは王宮に無数にある長耳族の反応のみだ。その中に君の目的である君の両親と、僕らの目的の旧英雄が居る』

「……そう言う事なら。行くよ」

『うん』


私は真正面に見える、王宮へと足を踏み出した。巨大な門があったが邪魔だったので破壊する。そして、王宮内へと侵入する。此処からは敵の本拠地中の本拠地、気は抜けない。いつ何処から兵士や旧英雄が襲ってくるか分からない。私は周囲を警戒しつつ、進む。


───────────────


その頃。王の間にて、二人の王が王宮内を彷徨うラルダを視ていた。一人の王は冷や汗を垂らしながら、もう一人の王は顔に笑みを貼り付けながら。


「まさか…九十級と八十七級が出張っても止められないとは…」

「ふふ、はははははは!だから言ったのだ。今のあの小娘は何人張っても止められぬ。何故あの二人を出張らせれば止めれると思ったのか。我なら殺せたものを、つくづく詰めが甘い男よな……ん?何処へ行く?」

「…こうなれば」


そう言って、人皇は一つの小部屋へと入っていった。それをもう一人の王、リーゼリットが見据える。


「(あの部屋は好かん。奴の性癖の何たるかって言うものが詰まっている故か…或いは我が子孫達があのような酷い有様になっているからか…)」


そんな事を思いつつ、再び王の間の外にある廊下を見る。そこからカツッ、カツッと足音が鳴り響いて来る。その音は段々と近くなり、遂に姿を表す。黒い外装を身に纏い、黒緑色のマフラーで顔を半分だけ隠した小娘が。


「…………」

「よくぞ来たな。『救世』を名乗り、長耳族の英雄とならん者よ!」


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