第四十八話 「創術師の創生術」
「ところでお前はどうしてここに来たんだ?」
「んー。親に追い出されたのだ」
「追い出された?」
「そうなのだ。習得すべき魔力が習得出来なくて、習得するまで下界を旅しろって追い出されたのだ。『大地』を習得出来ないと恥になるのだ」
土人族だし土系の魔力が必須だろうしなあ。それが習得出来ないと恥になるのか。んでそれを避けるために下界に放ったと。成る程。
「因みにどういう魔力を持ってるの?」
「『創造』なのだ。作った物に魔力を込めれば動かすことが出来る物なのだ」
「へぇ。ちょっとやってみてよ」
そう言うとチャゼルは鞄から一つの粘土の塊を取り出し一部千切って、捏ね始めた。ブロック状の粘土は暫くして人型に変化を遂げ、それをそっと床に置いた。
「できたのだ」
「え?これで動くの?」
「うん。少し見てるのだ」
そう言って、チャゼルが指先を器用に動かし始めた。それに合わせるように、人形も動き出す。おぉ、これは凄い。しかし剣聖が首を傾げて、チャゼルに聞く。
「それだけなんですか?」
「うーん。他にも出来るけど、怪我をさせてしまうから出来ないのだ。治癒魔術を使える人が居れば安心してできるのだ」
「私出来るけど」
「え…ラルダ姐は魔力量を見た時凄いと思ったけど本当に色んな魔力を持ってるのだ?」
「まあ、多少は…ねぇ?」
と、言いながら目を泳がすと、クレスが小さい声で『多少っていうかかなりだな』と呟いた。まぁそうだけど…。それを言ったら怖がらせちゃうかもしれないし…ね。
「じゃあ大丈夫なのだ。安心してできるのだ!」
「一体何をするの?」
「まぁ、少し使えるかな、ってぐらいの物なのだ。今回はクレス兄に的になってもらうのだ。我慢してくれなのだ」
「は!?何をする気だお前!?」
「人形を持って…『同時性人形』」
そう唱えた瞬間、人形とクレスから紫のオーラが溢れ出し、それの一部が流れていき、繋がった。何だろうか?シンクロだからきっと操る事が出来るのだろう。
「これでクレス兄の行動とかを全部僕が操作出来るのだ。だからさっきみたいにこうすると…」
「おぉ…?勝手に腕が…」
指を指すように動かすとそれに合わせてクレスの右腕上がる。やっぱりそういう系か。なんかサテラと同じで単体対象じゃなく広範囲を対象としてたら強いなって感じ。
「あと、動かせるだけじゃなくて、結構凄い事が出来るのだ。この人形自体の腕を千切ると…」
「千切ると?」
「ラルダ姐、治癒魔術の準備をしてくれなのだ」
「ん。分かった」
私はクレスに近づいて手に魔力を込める。そしてそれを確認して頷いたチャゼルは人形の右腕を持って、
「千切るとこうなるのだ」
と言い、千切った。ペキっていう人形の右腕が折れる音がしたと同時に、ブチィッ!っていう肉が千切れる音とゴキンッという骨が外れる音が聞こえた。ふとその音の方向を見ると、クレスの右腕が落ちていた。血が流れるように溢れ出す。
「ヒッ…!!」
「うぉぉぉぉおおおっ!!?」
「け、剣聖!クレスの腕持って!急いで治癒するから!」
「わ、分かりました!」
剣聖が有った位置に腕を持ち上げ、急いで『究極治癒』をする。するとさっきまで離れていた腕がみるみるうちに繋がり、何事もなかったかのように元どおりになった。
「ふぅ…ヒヤッとした。そういう事だったんだ」
「そうなのだ。僕もそんなに使いたくない物なのだ」
「だろうな…っと。もう日没前か。帯をしねえと」
「そうでしたね。早くしてください」
「あぁ」
そう言ってクレスが黒い帯を腕に巻き始めた。厨二病…。いや何でもない。
「クレス、それは何?」
「あぁこれか?これは魔力を抑える帯だ。俺の魔力は日没から濃度が高くなり、ピークには氷の世界にさせてしまうほどになる。それを抑える為の帯だ」
「成る程」
それはそうと、剣聖はさっきから何をモジモジしてるのだろう。『同調』で読み取っても良いが、それも面白くないので、やめておく。何でもすぐに読み取ろうとするのはあまり良くない。
「あっ、そうだ。皆にこれをあげるのだ。本当は僕一人でいただこうと思ったけど味気ないと残してた物なのだぁ」
「…お、酒か!しかも六升!」
「食い付きが良いのだ…。兄はお酒が好きなのだね」
「おう。酒はいい。最高だ。ぃよぅしっ!今日はこいつを仲間に入れた記念として派手に飲むぞ!」
「仲間に入れたかは確かでは無いですがね」
「まぁいいんじゃない?あっ私もお酒飲んでみたい」
という流れで今宵は宴になった。そして余談だが、私は生まれて初めてお酒を飲んだが、結構美味しかった。最初は美味しさを感じなかったけど、段々美味しく感じるようになり、気付いたらぼーっとしていた。チャゼルもあの見た目でも普通に飲めるらしく、クレスと飲み比べしていた。今宵は楽しい宴になったと思う。いい事だ。
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私とチャゼルが気分良く眠りに落ちた頃。剣聖は宴の輪を抜け、一人で川の岸辺に座っていた。少しだけ酒の気が入り、ほろ酔い気分で川に移る月を眺めていた。
「お前は酒はもう要らないのか?」
「クレス…。えぇ。私はお酒に弱いですしね。直ぐに酔って眠ってしまいます」
「………それは建前だな?」
「おや?私が何か隠し事をしているように見えますか?」
「いや…お前ならあの輪に入ったまま、酒を飲んですぐ酔って眠るだろう。お前はああいうのが好きだからな。何か用が有ってここにきたんじゃないのか?」
「うー。ご明察ですよクレス。いやほら、ほろ酔い気分なら結構オープンにイケるのでこの状態で貴方と話がしたかったんです」
「俺とか?」
「えぇ」
そう答えた。しばらくの間が空き、たまらなくなったクレスが口を開いた。
「んで、話ってのは?」
「あっ、そうでした。えっと…。これはその…あれです。言いにくい事なんですが…」
「お、おう…?」
「…………………っぁあー。やっぱり恥ずかしい!もっとお酒飲めば良かった!ん、こほん…すいませんクレス。私は先に眠りますね。では」
「えっ、ちょっ!おま!」
クレスはすぐさま止めようとしたが、剣聖の逃げ足が早すぎて止められなかった。クレスには謎の虚無感がのしかかった。
「なんだったんだ…?凄い気になるんだが…」
クレスは剣聖が逃げていった方向、自分の仮拠点の方向を見ながらそう呟いた。剣聖が何を言おうとしたのか。それは…




