第四十七話 「新たな…仲間?」
「なんで川の底から出て来るのさ?」
「『転移』の場所ミスった」
「貴方でもミスするんですね…んしょっと」
川から湧いてきた月神を二人で陸に引き上げる。しかし、えらく早い転移だ。本当に破壊したんだろうか?
「ねえ、本当にあの世界を破壊したの?」
「ああ。破壊してきた。もうあの世界には行けない」
「そう」
早い破壊だこと。しかし、月神がそんな事してあいつはキレないんだろうか?まぁそんな事どうでも良いんだけどさ。
「しかし…。どうしますか?これから」
「そうだな…。ロンゴヴィギナに行くのも悪くないが…」
「他の集落に行くのも悪くないかな」
「『救世』はロンゴヴィギナに戻らなくても良いんですか?」
「え?」
剣聖にそんな事を聞かれ、考える。正直自分の姿を見てみんな私と気付くのか不安である。まぁ必至に弁明すればなんとかなるかもだけど…。
「うーん…。あそこにいても暇なんだよね。だから、あそこに戻るのはもう少し旅をしてからかなぁ。剣聖達は?あそこに帰る?」
「いえ…貴方について行きます。私と月神様だけで帰ったら私が怒られます…。主に魔神の王と龍帝に」
「俺もラルダについて行くか。こちらの世界ではただの夜行性の一般人だし、お前らとつるんでてもてんで不思議じゃなかろう。…それとレイシュ。俺を月神呼びするのはよしてくれないか?」
「あれ?どうしてです?」
「ただの夜行性の一般人だからだよ…。俺の事は…そうだな。前と同じくクレスと呼んでくれ」
「その名前、旧月神の名前なのにえらく気に入ってるじゃん」
「こっちで名乗る事が多かったからな…」
こっちで、って事はこっちにはちょくちょく来ていたわけか。
「分かりましたよクレス。月神呼びはしません」
「ああ、助かる」
「なんか、剣聖とクレス距離近くなってない?」
「え?いやぁ…。一緒にお酒飲んだりしてましたしね」
そう言って頰を掻きながら頰を緩めた。くそぅ。私もお酒飲みたいなー!ていうか剣聖も剣聖でなんか柔らかくなった気がする。敬語を使うのは変わらないけどなんだか前より親しみやすい感じだ。
「んで、今日はどうする?俺の仮住居で一晩過ごすか?」
「良いですね、なんだかお布団で寝たい気分です」
「あれ、でもあそこの布、二枚じゃ…」
「『救世』も大きくなっちゃいましたしね。なあんですか?クレス」
「俺がレイシュとそい…いてっ」
剣聖がペシっとクレスを叩く。顔が若干赤い。ふーん…。感情が豊かになった剣聖は良いな。私も和む。
「まあ、それは冗談だが…。俺は敵が来ないか見張っといてやる。お前らはゆっくり寝てれば良い」
「これは…ありがたいですね」
「クレスはそれで良いの?」
「良いぞ。基本的に俺は夜行性だし」
「決まりだね。じゃあ仮住居に向かおう」
そう言って私達はクレスの仮住居に向かった。なんだか懐かしい感覚だ。風も太陽光もこの荒野も。私は久々に浴びた太陽光や風に気持ち良さを覚えつつ、歩みを進めた。
_____________
仮住居に来て、家の扉を開ける。すると、そこには焦赤色の髪をした誰かが背を向けて座っていた。
「………どちら様?」
「ん?誰なのだ?」
その誰かがこちらに振り向き、私と同じ反応をした。健康的な褐色肌で黒色の瞳…誰だよ。いや誰だよ。
「んー…どうしました『救世』…って誰ですか?」
「人が増えたのだ…」
「ここは俺の家の筈だが、客が居るとは」
「あれ!?空き家かと思ったから使わせて貰ってたけど主人がいたのだ?」
この子は語尾に「のだ」を付けるのが癖なのか。空き家だと思われてたのはしょうがないか。だって5、6ヶ月はあっちに居た訳だしね。取り敢えず名前と種族を聞いとこう。
「ところで君種族は?名前は?」
「僕は土人族なのだ。名前はチャゼルって言うのだ」
「チャゼルね。私はラルダ、宜しくね」
「あい」
ぎこちないけど握手を交わす。そうしていると二人が顔を覗き込んで、
「ラルダは直ぐに友好的に接することが出来るから凄いよな」
「ですね」
「こういうの慣れてるからね!」
「ところで二人はなんて名なのだ?」
そう聞かれて、二人は押し黙る。まぁそりゃそうか。だって、怪しすぎるからね。何もかも。しかし、剣聖は一つ溜息を吐き、
「まぁ悪い子には見えないし、良いか。私はレイシュです。剣聖レイシュです」
「おぉ!剣聖さんに会えるとか光栄なのだ!宜しくなのだ!」
「はい。宜しくお願いします。ほら、クレスも」
そう言ってクレスに促す。するとクレスはハッとして、チャゼルに向き直る。
「宜しくお願いする…」
「クレスも宜しくお願いするのだ!」
「お、おう」
元気がいい男の子だな。と思った。やっぱり子供の時代は元気じゃないとね。私はそう思い、自分の子供の頃の姿を想像して苦笑いした。




