第14話「獣人皇帝の甘やかな誓い」
昼下がり、カルステンに連れられてやって来たのは、宮殿の最上階にある屋内庭園だった。
外は厳しい冬の雪景色だというのに、魔石の力で温暖に保たれたガラス張りの空間には、色鮮やかな花々が咲き誇っている。
中央に配置された長椅子に腰を下ろすと、カルステンはロマンの膝に自らの頭を預けて横になった。
人間の姿であっても、心を許した相手に見せる無防備な態度は、あの雪山で治療をした銀狼そのものだ。
ロマンはためらうことなく手を伸ばし、月明かりを思わせる銀色の髪を静かになでる。
指先に触れる感触は、上質な絹のように滑らかで心地よかった。
カルステンは気持ちよさそうに目を細め、喉の奥でかすかに満足げな音を鳴らす。
「お前は、本当に私を恐れないのだな」
膝の上から見上げてくる黄金の瞳には、隠しきれない熱情が渦巻いていた。
巨大な狼の姿であっても、冷徹な皇帝の姿であっても、ロマンの態度は決して変わらない。
ただ傷ついた命を慈しむように、純粋な愛情だけを注いでくれる。
「俺は動物が好きだからな。……もちろん、あんた自身のことも」
顔に熱を集めながら告げた言葉に、カルステンは機敏な動作で身を起こした。
そして、ロマンの頬を両手で包み込み、至近距離から熱を帯びた視線を注ぐ。
運命の番としての本能が、互いの魂を強烈に引き寄せ合っていた。
「私の命も、この帝国も、すべてはお前を守るためにある」
静かな誓いが、花々の香りに満ちた庭園に響き渡る。
「だから、お前はただ私の側で、永遠にその優しい魂を咲かせていればいい」
カルステンの顔が近づき、二人の影が重なり合う。
唇に触れたのは、雪山の凍えるような寒さとは対極にある、火傷しそうなほどの熱だった。
前世の記憶の中で、過労に倒れて孤独な最期を迎えた青年の魂は、もうどこにもいない。
ロマンは自らカルステンの背中に腕を回し、差し出された深く甘い愛を余すところなく受け入れた。
美しき獣人皇帝の腕の中で、悪役令息として破滅するはずだった彼の人生は、光に満ちた最高の結末へとたどり着いたのだ。




