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終末戦争  作者: Terra
16/20

第16話 氷解

 寒くて、とても…孤独な感覚―――見える景色は朧気で、断片的な映像が流れていく。これは、どこかの裏路地だろうか。骨が見えそうなほどげっそりとした子供が、幾人も見えた。ごみは当然のように道端に捨てられ、古びたタイルはいまにも崩れてしまいそうだ。腐った光景は、見ているだけで精神が摩耗してくる。手元にあるパンも、ところどころカビていて、とても食べられそうにない。それを口へと運ぼうとした時、テレビのスノーノイズのように映像は見えなくなった―――


「んん…うん?」

 悪夢とはまた違う、不思議な感覚に目が覚めた。ゆらゆらと、どこか揺られているような感じがする。それに木が軋むような、ぎぎぎという音に、金物が揺れる音。暗く、良くは見えないが、おそらく来るときに乗っていた船だろう。目も慣れてきて、うっすらと見える光景にも見覚えがあった。

「俺は…どうなって…」

 記憶がとびとびになっている。なんとなく覚えているのは、銀髪の少女と戦ったことと、首輪のようなものを斬ったような記憶。だが、詳細な部分は何も思い出せなかった。

「いっつつ…」

 体を起こそうとするが、過剰な疲労のせいかひどく痛み、上体すら起こせない。なんとか首を横に向けると、椅子に座ったまま項垂れたガイアと、隣のベッドに横たわったもう一人の人物が見えた。ガイアが誰か連れてきたのだろうか。ガイアに声をかけようとしたが、彼も相当疲れたのだろう。寝息が聞こえるほどぐっすりと寝ているようだった。

「ガイア…」

 あの時、俺は無理を言ってソフィアに挑んだ。だが、今の状態を見るに、ロクな結果にはならなかったようだ。来る前に自分で思っていたことを、おいてきてしまったかのような行動だった。迂闊で、傲慢で、愚かな選択だった。なにより、その選択を尊重してくれたガイアに申し訳が立たない。

「…クッ…なに、やってんだ…」

 事態の全容も分からず、潜入かと思えばいきなり戦闘になり、その結果がこれか。本当に、俺は―――

「ん、おっ…」

 考えに耽っていると、隣で声がした。振り返ってみると、まだ眠たそうなガイアがこちらを見ていた。

「あっ…起こしちゃいましたか…」

「いいや、大丈夫さ。それより、身体の方は?随分無理をしたんだろ」

「いえ…俺は、大丈夫です…少し休めば、すぐ動けるようになると思います…」

 目が、見れなかった。話していると、自責の念で押しつぶされそうだった。あの時早々に離脱していれば…いや、そもそもついてこなければ―――

 気まずい空気がしばらく流れ、沈黙が続いた後、ガイアが口を開いた。

「…氷魔界には、教団のメンバーが三名いた」

「…!!あの時の金髪の男…あいつ以外にもいたんですか?」

「ああ…結局、誰も捕らえられなかった。上手くやられたよ」

「そう、ですか…」

 読みは当たっていたようだが、想定以上の戦力を送り込んでいたらしい。あのガイアでも逃がすほどの相手か―――

「もしお前がいなかったら、俺はソフィアを殺していただろうな」

「なっ…な、なぜ…ですか」

 突然の発言に、背筋が凍る。あれだけ人を想えるガイアが、そんなことをするとは思えなかったからだ。だが、俺の衝撃も気にしていないのか、ガイアは淡々と話し続けた。

「首輪、お前が壊したんだろ?二人が倒れていたところに散らばっていたからな」

 そう言うと、ガイアは懐から透明な箱に詰められた首輪を取り出した。記憶は朧気だったが、確かにそんな形をしていた気がする。

「どうしたらいいのか、分からなかったので…とにかく外さなきゃって思って、それで…」

「いや、いいんだ。首輪のことを話したのは教団の奴らだったからな。自信があったのか、元々ばらすつもりだったのか…なんにせよ、俺が単騎で来ていたらそんな余裕もなかっただろう。だから、押し付けた形になったのは、すまなかったが、感謝もしているんだ」

「それは…でも、結局俺は勝てたわけじゃなかった…もし首輪を外しても、ソフィアさんが気絶してくれなかったら、今頃俺は…」

 きっと、俺が責任を感じているように、ガイアも責任を感じているのだろう。だが、だとしても、自分のことが愚かに思えて仕方がなかった。


「少し…静かにしてくれないか…」

 二人して、黙りこくっていると、不意に鋭い女声が聞こえてきた。まさかと思って横を見ると、ソフィアの姿がそこにあった。

「ソ、フィア…」

 思考から外れていた光景に、ポツリと口から漏れ出た。ガイアが誰か連れて帰ってきたのは分かっていたが、まさかソフィア本人だとは思っていなかった。

「よう、あんたはまだマシみたいだな」

「一時的な精神汚染が取れただけだ。身体の機能に問題はない…というより、ここは…」

「統魔界所有の商船だ。竜魔界のものに偽装しているがな」

「なるほど…で、そこにいるのが…」

「月島…塔夜、です…」

 記憶上では、先程まで殺し合っていた相手が、今は普通に話している。あの時見せていたヒステリックな姿はどこに行ったのか、鋭さを持った声は変わらないが、話し方がまるで違う。こうしているとただの少女だ。あまりのギャップに声が掠れていく。

「改めて、ソフィア・ヨークトルだ。迷惑をかけたみたいだな」

「まったくだ…と、言いたいが。教団について、少しだが知ることもできたからな。チャラにはならないが、収穫はあったさ」

「擁護の必要はない。一国を統べる身として、今回の事態に対し責任を取らなければならない」

 張り詰めたような表情だった。戦闘の時に見せていた、あの歪んだ表情とは違う、本来の彼女の顔がこれなのだろう。

 引き下がらないソフィアに対し、ガイアは呆れた様子を見せた。

「…ま、積もる話はまた着いてからな。今は二人とも休んでおけ」

 そういうガイアの顔には、誰よりも疲れが浮かんでいた。

「ガイアさんこそ、休まなくていいんですか?一番大変だったのは―――」

 こちらの心配を遮るように、ガイアは強い口調で話し始める。

「いいんだ。ソフィアはまだ万全じゃない。かといって塔夜を一人船室に置いておくわけにもいかない。そして残念ながら、この船には三人以上の客室が存在しない…」

「えぇ…設計ミスじゃないですか…」

「商船だからな。荷物を積む方が優先なんだよ。とにかく、今は休め。統魔界に着いたら、また働いてもらうさ」

 そういうガイアの表情には、疲れを隠すように笑顔を浮かべていた。これ以上粘っても、ガイアの厚意を無碍にするだけだ。

「じゃあ…仕方ない、か…」

「このような姿、民には見せられないな」

 どことなく、穏やかな雰囲気に戻った気がして安堵したのか、再び酷い眠気が襲ってくる。もう交わす言葉もないなと思い、瞼の重みに任せて深い眠りについた―――



 気が付けば船は港に着いて、目が覚めた時にはもう統魔城の自室にいた。余程疲れていたのか、数日は眠ったままだったらしい。結局体の痛みは取り切れず、特に頭痛が酷かった。船で見た変な夢は頭から離れず、忘れてはいけないことかのようにへばり付いている。

「孤児…で、いいのかな…あれ…」

 自分もあまり恵まれた環境で育ったとは言えないが、あれを見せられた後では幸せ者にも思えてくる。真相が分からない以上、これ以上考えても仕方がないと首を振るって頭の片隅に追いやった。

 気晴らしに修練場にでも行こうかとベッドから起き上がった時、ドアを叩く音が聞こえてくる。

「月島様、ガイア様がお呼びです。作戦室にてお待ちしているとのことです」

 その声はローレンスだった。作戦室に呼ばれるとはあまりいい予感はしないが、仕方ない。

「わかりました。すぐに行きます」

 軽く身支度を済ませ、部屋を出ようとした時、ふと鏡に映った自分が見えた。氷魔界に行く前と比べ、酷く顔色が悪かった。いや、悪く見えたが正しいか。

「…チッ、馬鹿野郎…」

 悪態をつきつつ、鏡から目を逸らして部屋を後にした。


「失礼します」

 作戦室に入ると、ガイアにリュカオン、さらにソフィアの姿がそこにはあった。魔王が二人に、これまでの情報からして竜魔界の魔王だろう男が一人―――敵でないことに心底安堵しながら、自分も席に着く。

「それで、この集まりは…」

 疑問に思っていたことを口にすると、ガイアが答える。

「特別何かあるって訳じゃないんだがな。一応、氷魔界で得られたことを共有するべきだと思ったんだ」

「先に言っておきますけど、留守番している間は何もありませんでしたよ。妙なくらい平和なものでした」

「それについては感謝している。流石に統魔界を空にするわけにはいかなかったからな」

「ほんと人使い荒いんですから…」

 リュカオンも疲れているようだった。主に気疲れという意味で。二人の様子を見ていたソフィアが、先陣とばかりに口を開く。

「では、私の方から。といっても、私もほとんど記憶がないのだが」

「操られている間の記憶がないんだったか」

「言い訳にしかならないがな。覚えているのは、今から三週間ほど前のこと。絢魔界からの商人を名乗る者が氷魔城に直接現れた。言わなくてもわかると思うが、そいつが―――」

「教団か」

 ガイアの遮るような発言だったが、ソフィアは頷くだけで続ける。

「その時点でいたのは二人。片方は分からなかった、一人はオリュンポスの一員だろう。あの特徴的な鎧は、良く目立つからな」

 ガイアもリュカオンも、考え込んだ姿をしながら聞いていた。ただ、先程の発言に俺は違和感を覚えていた。

「オリュンポスって…ギリシアの?」

 聞くまでもないことだったのか、三人ともキョトンとした顔になったが、ガイアだけはすぐになるほどといった顔になった。

「そうか。確か宇宙界にも神話があると、何かの文献で見たな」

「え、えぇ。オリュンポスと言えば、大体はギリシア神話のことを連想させますから」

 こちらの発言に、今度はガイアが何か思いついたようだった。

「ふむ…ソフィア、そいつの特徴は?」

「…確か、盾と槍を持っていたな。金色の鎧に、トサカみたいな赤色の兜が特徴的な、典型的な戦士のような奴だった」

「盾と槍…金と赤が特徴的な鎧…」

 ギリシアの神々はかなりの数がいる。ただし、戦士と言えばかなり限られてくるはずだ。特に、盾と槍に特徴的な鎧と言えば、嫌でもあの戦神が思い浮かんでくる。

「もしかしたら…アレス神、かも」

「アレス?嫌われ者のアイツか」

 どこか思い当たる節があるのか、ガイアは納得のいった顔をしていた。

「嫌われ者…かは分かりませんが、スパルタみたいな姿をしているのは、彼ぐらいかと」

「アレス…俺が戦った奴らにはいなかったな…これで少なくとも四名が氷魔界に…」

 またしても考え込んでしまったので、自分も気になっていたことを聞いてみる。

「…逆に、ガイアさんが戦ったのって、どんな奴らだったんですか?」

「俺か?そうだな…二人は分からなかったが、お前も見た奴がいただろ?」

「金髪の?」

「あぁ。あれはデュオニュソスだな。能力を直接食らったからわかる。間違いない」

「デュオニュソスって…じゃあまたギリシアの…」

 確か、酒の神だとかなんだとか。どちらにしてもあまりいいイメージはない神だ。というより、ここまでの話を聞いていると、教団についてのイメージが変わってくる。

「…あの、教団の思想って確か、相互理解…とかでしたよね」

 こちらの質問に、ガイアは疑問符が浮かんだような顔をした。

「ん?そうだな。といっても、あちらさんのリーダーが勝手に言ってるだけだが」

「聞いているだけの感覚ですが、とてもそうは見えないというか…アレス神なんかは闘争と破壊を求める神ですよね?目的とやってることが逆な気が…」

「あぁ、そこか…まぁ、教団も一枚岩じゃないというか、リーダーのタナトス以外は割と自由に活動しているようだからな。世界から迷惑がられているのもそこが理由さ」

「う~ん…なんか、変な連中だな…」


 話を逸らしてしまったからか、またしても空気が淀んでしまった。流れを変えようと、もう一つ気になっていたことを聞いてみる。

「そ、そういえば、あの首輪って結局何だったんですか?」

「首輪?あぁ、これか」

 そう言うと、どこからか透明な箱に入れられた首輪を取り出した。装飾もほとんどなく、幾らかの彫刻が彫られただけの簡素な首輪だ。だが、こうしてみているとどこか禍々しさすら感じてくる。それを見ていたソフィアも、あまりいい気にはならなかったのか、首に手を当てながら表情が歪む。

「こいつは遺物の一種だな。教団も相当な数抱えていると聞いていたが、こんな代物まで出してくるとは…」

「遺物…?」

 聞きなれない言葉が聞こえてきた。語感から察するに、古い代物なのだろうが。

「遺物ってのは、現行の技術じゃ再現不可能な過去の遺産だ。俺のガントレットやリュカオンの槍がそうだな」

 名を出されたからか、リュカオンはそばにあった槍をテーブルに乗せる。初めて見た時も思ったが、本当に骨のような見た目の槍だ。

「これは古龍の槍と言ってね、龍の尻尾から作られたと聞いている。代々竜魔王の中で受け継がれている遺産でもあるね」

「なるほど…(というかさらっと言ったけど、この人もやっぱり魔王なんだな…)」

「俺のガントレットは素材すらも分からない。完全なロストテクノロジーってやつだな。俺の拳にも耐えられるから、重宝している」

「それで言えば、私の杖も遺物の一種だ。永久凍土から切り出された小枝らしい。見た目は凍った枝だがな」

「いろんな種類があるってことか…」

 再現不可能な物品、というところが共通点で、あとは多様な特徴を持った代物ということだろう。それで言えば、付けただけで洗脳できる首輪はかなり異色と言える。

「首輪の数が一つとは限らねぇが、可能性は大分低いだろうな」

「…どうして、そう思うんですか?」

「もしまだあるなら、俺ならもっと戦力を集めてから仕掛ける。そうしなかったのは、ソフィアを実験台にするだけのつもりだったのか、あるいは別の目的の為か…なんにせよ、今回の件は教団のいいようにやられたってところだろうな」

「そう、ですか…」

 結局、あまり話が良い方向に進んだわけではなかった。こういう時の重い空気感を払拭できるほど、俺に弁舌の才はない。


 ガイア自身も同じようなことを思っていたのか、急に立ち上がって笑顔で話し始めた。

「ま、何はともあれ、魔界側が食らった被害はほとんどないんだ。まずまずの結果だったんじゃない

か?」

 そうは言われても、氷魔界の惨状を見た後では、そうは思えなかった。

「でも、あそこの住民は…」

「それなら心配いらないだろ。なぁ、ソフィア?」

 呼ばれた本人は、目を逸らすようにどこか遠くを見ていた。すでに手を打っていたのだろうか。

「さぁ、なんのことだか…」

「教団の奴らに逃げられた後、城の上から見渡してみたんだ。氷魔界自体の国土はそこそこあるからな。かなり遠かったが、住居の灯りが点々と見えたよ。教団の動きを早々に察知して、首都を放棄したな?」

「………」

 ガイアの言ったことは、どうやら的中しているらしい。苦い顔をしていたソフィアだったが、やがて観念したのか、ため息をつきながら口を開いた。

「…ハァ…あぁ、そうだ。情報が入ってきてすぐ、守り切れない可能性を考えた。だから放棄した」

「だろうな。現地に残っていた少女も言っていたよ、あんたが住民動かしたってな」

「…じゃあ、住民に被害はなかった…?」

 俺の質問に、ソフィアは首を振るった。

「いや、ゼロには抑えきれなかった。兵力は幾らか失い、民の一部は神界に攫われた。おそらく、神素の為に…」

 項垂れるソフィアに、今度はガイアがため息交じりに話しかける。

「まぁ…そうだな…少なくとも、殺しはしないだろう。神素の生成の為に攫ったのなら、最低限命の保証はされているはずだ。いつか救い出せるさ」

「あぁ…そうだな…」

 まだ思いつめた顔をしていたが、なんとか立ち直れたのかソフィアは顔を上げた。

「よし、じゃあひとまずは休暇だな。特に塔夜とソフィアはよく休むんだ。精神的な疲労は、自分が思っている以上に重いものだからな」

「休暇って…俺は…」

「塔夜」

 強い口調で押され、ガイアの言うことにも一理あったため、それ以上は食い下がれなかった。ソフィアも、もう一言も発することはなかった。

「あ、リュカオンは俺と執務な。まだまだ書類は山積みだからな」

「えぇ、もう十分やったじゃないですか。それに、僕がここに来た目的もとっくに済ませていますし…」

「一番平和な国家で、一番頼りやすいのがお前なの。文句は後で幾らでも聞いてやるから…」

「ほんと、仕方ないですね…」

 俺とソフィアを残したまま、二人して部屋を後にしようとした時、ガイアが振り返って一言だけ放った。

「…そうだ。塔夜、ソフィア。いい機会だから街に降りてきたらどうだ?結構いい店揃ってるぞ。それじゃあな」

「えぇ?あ、ちょっと…」

 言うだけ言ってガイアは部屋を出てしまった。女性との関わり方などよくわからないし、まして複雑な関係の俺たちを置いていくとは。ガイアもなかなかの鬼畜と見える。


「お前…」

 不意に呼ばれて振り返ると、見定めるような瞳のソフィアがいた。ガイアとはまた違う威圧感を感じる、冷たい目だ。

「な、なんだよ…」

「…なぜ、私を助けた?」

「…は?」

 思ってもいなかった言葉に、素の反応が出てしまった。そもそも、助けた実感もなく、ガイアに言われたままの行動だったため、特に理由も思いつかなかった。

「なんでって…強いて言えば、後味が悪いから…かな」

「は?」

「いや、あんたがどんな奴なのか、全然知らないし…それに、人を傷つけるのは、なんというか…気が引ける、から…」

 とても戦う者の言葉とは思えない発言に、ソフィアは驚いた顔のまま固まってしまった。自分でも、戦う理由はただ強くなりたいだけで、大した大義もないまま戦っていたことは恥ずべき事かと、気まずくなってしまう。

 しかし、こちらの心配をよそに、ソフィアは突然吹き出してしまった。やはり変なことだったかと目を逸らしていると、ソフィアが笑いながら話し始めた。

「なにそれ…変な人」

「なっ…変な人とはなんだ。いや…変か…?」

「ぷっあはは…!!ほんと変…」

 ひとしきり笑った後、ソフィアは椅子から立ち上がり、そのまま部屋を後にしようとする。

「お、おい」

 つい呼び止めてしまうと、振り返った表情は再び冷たい無表情に変わっていた。

「街、行くのだろう?」

「へ?あ、うん、そうだな」

「なら、今日はもう休む。お前も、明日は寝坊しないようにしろよ」

「あぁ、分かった…って明日!?」

 こちらの返答も待たずにソフィアは部屋を出ていた。魔王の奴らは、どうも人使いが荒いというか、こちらの気持ちを無視するような気がする。

「まぁ、別にいいけど…」

 独り言を放ちながら、自分も自室へと戻っていった。

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