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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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快楽殺人鬼VS美少女戦士3 繋がれた右手

「思ったより強かったよ、この彼。これなら三人の中で予選をやってもらってもよかったかな」

 神水流は息一つ乱していない。

「さぁ、これでお互いに単騎、一対一だ。それぞれの大切な友人がここに倒れている」

 神水流はジャケットの背中に手を回す。取り出したのは手錠だ。

「さぁ」

 神水流が手錠をムーンライトに投げる。

「さぁ、お嬢さん方、その手錠で互いの手を繋ぎたまえ」

 固まるムーンライトと黒い北極星。神水流は小さく頷いてみせると、指先の水滴を振り払うように右手を振る。

「グアッー」

「ーングッッ」

 羽根と流星キッドがうめき声を上げる。二人の足に銀色のつららのようなものが突き刺さっていた。小さな投げナイフだ。

「手錠を嵌めるんだ、ムーンライト。そして黒い北極星とつなぎ給え」

 逡巡するムーンライト。神水流はまた右手首を鋭く振る。

「アギャッ」

「グフッ」

 倒れている羽根とキッドの足に、もう一本ずつナイフが生えている。

「次は腕といこうか」

「待って」

 ムーンライトが叫ぶ。手に持った手錠を自分の左手にかける。

「よせー 姉御ー 逃げるんだ」

 キッドが苦しげに呻く。

「おやおや、気づいたのかい?もうしばらく眠っていると思ったのに。あぁ、動かないほうがいいよ。ナイフが刺さったまま動くと傷が広がるから」

 キッドはナイフが2本刺さった左足をかばいながら立ち上がる。神水流が「おぉ、健気だねぇ」と呟く。

「姉御、こいつは俺が何とかしますよ。逃げてください」

 ムーンライトは優しく笑う。

「いいから。あんたは寝てな。まだまともに立てないくせにカッコつけすぎだよ」

「すまねぇー 姉御」

 神水流は控え目な咳払いをしてみせる。

「えーと、もうそろそろいいかい?あんまり長引くとこの鬼人の坊やはともかく、おじさんの方は出血がひどくなるよ?」

 羽根は浅く胸を上下させながら、時折苦しげに呻くのみで目を覚ます気配はない。二本のナイフが突き立った足の周りには、黒いボディスーツの上からでも血の染みが確認できる。

「黒い北極星」

 ムーンライトが話しかける。

「あたしも本意ではないけれど仕方がない。お互い恨みっこ無しで行きましょう」

 ムーンライトが自分の右手首にはまった手錠の片方を黒い北極星に差し出す。

「あなた右利きでしょう?いいの?」

 黒い北極星が尋ねる。

「別にいいよ。左も鍛えてるし」

 ムーンライトの言葉に、黒い北極星は黙って手錠のもう一つの輪を自分の右手首に嵌めた。これで互いに利き腕同士が繋がれ自由を失ったことになる。

「おぉ、いいね。フェアな決闘というのは清々しい気持ちになるな」

 ムーンライトは自分の腰の辺りを叩く。

「獲物はバイクに置きっぱなしなの。徒手での格闘を提案するわ。いかが?」

 黒い北極星は首肯する。

「同意します。徒手で、攻撃に使っていいのは左手だけということで。できればあなたが竹刀を使うところも見てみたかったけど」

「ふふ。この距離ではね。竹刀なんて邪魔になるだけだわ」

 神水流が焦れたように言う。

「さぁ、もう始めよう。景気よく行くとしよう!僕の合図で試合開始だ。両者構えてー」


 パンッー


 銃声が鳴り響く。驚いたことに神水流は町中で銃を撃ったのだ。銃声ばかりかオレンジ色の砲火まで夜空に噴き上がった。

 ムーンライトと黒い北極星が互いの右手を繋がれたまま、ぐるぐると右回りに周り始める。

 最初の攻撃はムーンライトだ。掌で黒い北極星の顎を狙う。無論掌にはたっぷり鬼力が乗っている。黒い北極星は仰け反りながら右肩を上げて攻撃をはじく。互いの鬼力がぶつかってパチパチと弾ける。手錠の鎖がジャリンと鳴った。

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