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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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快楽殺人鬼VS美少女戦士4 クライマックス

 二人が動く度、ジャリッジャリッと手錠の鎖が鳴る。まるでバディ物の映画のように、手錠で右手を繋がれた二人。

「ハッ!」

 黒い北極星が気合とともに鬼力を打つ。ムーンライトがこれも鬼力を満たした左手で迎え撃つ。白い飛沫のように鬼力が弾ける。

 正対する二人は互いの右手をたすき掛けに繋がれている。この右手は攻撃には使わないルールだが、防御には使える。

 そもそも繋がれた右手を避けて攻撃しなければならないし、右手を上下に動かしたり、相手を引っ張ったりしてバランスを崩すこともできる。

 互いの身体を鎖で繋いだいわゆるチェーンデスマッチ。しかも二人を繋ぐのは手錠。相手との距離がほとんどなく、勝負はすぐにつくかとおもわれたが、意外にも互いの攻撃はなかなか相手に綺麗には入らず、拮抗した攻防が続いている。

 これには他の要因もある。二人がルールを守りフェアに戦っていること。そして互いに望んだ戦いでなく、相手へのリスペクトと同情、共感を覚えながら戦っていること。

 それらがこの決闘を「命がけの殺し合い」でなく「スリリングな試合」にしている。これは神水流の意図するところでなく、彼の好みではなかった。神水流は感情と本能剥き出しの殺し合いが見たいのだ。

 神水流は明らかに物足らない表情を浮かべている。

「んー、もうちょっとさ、こう、ギラギラドロドロした感じで行けない?爪で掻きむしったり、目や耳に指を入れたり、噛み付いたりさ。そう、ゼェゼェハァハァ言いながら罵りあったりさ。そういうのが見たいんだよな」

 神水流は不満顔でブツブツ言っていたが、不意に「あっ」と声を上げると懐から拳銃を取り出す。

「はい、ちょっとストーップ」

 神水流が声を掛ける。

「なんか面白くないよね?だからこうしまーす」

 神水流の手に再び拳銃が握られる。

「はい、こうしまーす」


 パンッー


 再び銃声。今度は空に向けてではない。倒れている羽根に向って。羽根のふくらはぎ辺りに黒い染みが広がっていく。

「羽根先生!」

 黒い北極星が動きを止め叫ぶ。

「黒い北極星への教育的指導だね。もっと必死にやってもらいたい。全然面白くないよ」

 黒い北極星が歯を軋らせながら神水流を睨む。

「さぁ、時間ないよぉ?早く倒して病院へ行かなきゃだよ?」

「糞っ!」

 黒い北極星が吐き出すように言って、左手を狂ったように突き出す。速い。そしてしなやかだ。互いの右腕を蛇のように蛇行してかわしながら、鬼力をムーンライトに叩き込む。

 ムーンライトもそれを必死に受ける。二人の鬼力がぶつかり白いスパークが飛ぶ。空気が裂ける。空間が歪む。

 明らかに二人のスピードと鬼力のレベルが上がった。闇に弾ける鬼力の珠。花火ともカメラのフラッシュとも違うその光球が弾ける様は、まるで宇宙空間で行われる星間戦争のよう。

「ハァッ!ハァッ!」

 気合いなのか、呼吸が乱れてきたのか、黒い北極星の声が荒々しいものになってくる。

「ヤッ!タッ!」

 ムーンライトが冷静に黒い北極星の攻撃を捌いていく。スピードはほぼ互角だろうか。ただ戦いが長引くにつれて、スタミナ、徒手格闘技術についてはムーンライトの方に一日の長があることが見えてきている。

 黒い北極星の顎先には汗の雫が伝っているが、ムーンライトはまだ涼しい顔だ。スタミナがあるのでスピードも技の正確さも落ちる気配がない。黒い北極星の必死の攻撃も、紙一重ながら全て受け切っている。

「おー、見事だぁ龍美ー じゃなかった、ムーンライト君。お里の鬼人とは思えない動きだよ」

 神水流が拍手をする。

「さて、そろそろクライマックスかな」

 神水流はそう言うと、二人に向かったダッシュし、高く飛んだ。


 キィィンンッー


 綺麗な金属音が響く。

「えっー」

 思わずムーンライトが声を上げる。ムーンライトと黒い北極星を繋いでいた手錠の鎖が綺麗に断ち切られていた。

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