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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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快楽殺人鬼VS美少女戦士1 結界を張る者

「今でも後悔しているよ」

 神水流は芝居でなく本当に悔やんでいるようだった。

「僕の覚悟が足りないために、美しい珠を汚してしまったんだ。永遠にね」

 神水流は一歩、また一歩と黒い北極星の方へ近づいていく。

「僕は愛と正義の執行者だ。美しく輝くものを永遠という枠の中に封じ込めるんだよ。僕はそのために存在するのさ」

 神水流は両手を広げて周囲を見渡す。

「どうだい?今夜は人がいないだろう?なぜだと思う?」

 ムーンライト、キッド、黒い北極星の三人は呑まれてしまったように、ただ目を見開いて神水流を見つめている。

「結界だよ。結界を張ったんだ。ふふ、これは本来闇の鬼人の技さ。今は禁止されているんだ。ムーンライト君なら知ってるだろう?君は鬼門のこともそれなりに知ってるだろうからね」

 ムーンライトは頷いて、

「えぇ」

 と答えるのが精一杯だ。結界のことはムーンライトも知っているが、それはあくまでも昔話に出てくる鬼人の使う魔術といった認識だ。

 昔の鬼人たち、彼らが鬼術士とか鬼道士と呼ばれ、世間から祈祷師や呪術士と同類に扱われ恐れられていた時代の話しに「結界」のこともよく出てくる。

 鬼人たちは身を守ったり、敵を欺いたり、大切なものを隠したりするために「結界」を張ったという。

 細かい技術的なことはムーンライトも知らないが、鬼力の重力や空間に影響を与える特性を利用して、枝道への入り口をほんの少し見えにくくする。道標をほんの少し歪めて見せる。ほんの少し景色をくすませる。そういったことを幾重も積み重ねて人が近づけないエリアを作ってしまうのが「結界術」らしい。

 当然今ではそんなことをする鬼人はいない。そもそも具体的な結界の張り方を教えてくれるところなどどこにもないのだ。

 鬼士院の奥にはそういった技術を伝える人々や文書などが保管されているのかもしれないが、ムーンライトや流星キッドのようなごく普通の鬼人が気軽に目にするようなものではない。

「さて、僕がなぜこんなことをしゃべると思う?」

 キッドが思わずゴクリと喉を鳴らす。

「殺人者であることを自白したばかりか、禁断の技を使える鬼人であることも明かした。なぜだと思う?」

 波音だけが4人を包む。神水流は明るい笑顔を見せる。

「仲間になって欲しい。いや、もう仲間かな?黒い北極星もムーンライトも、僕のことは前から知っている。互いの目的は同じ。協力し合うのは難しくない。いや、むしろ共に手を取り合うのが当然の帰結さ。だろう?」

 誰も答えない。答えられない。ただ息を殺して神水流を見つめるのみ。

「さぁ、仲間になると言ってくれ。街を綺麗に、世界を美しくするんだ。さぁ」

 ムーンライトが呪縛を破るように両手で自分の頬をパチンと叩く。

「無理。神水流さんの仲間にはなれない」

 神水流が芝居がかった表情でムーンライトを見る。

「おいおい、どうしちゃったんだい?ムーンライト?いや龍美君?」

「どうもしない。あんたは犯罪者よ。組めるわけがない」

 神水流は天を仰いで笑う。

「おいおい、警察目線はよそうじゃないか。今の世の中に必要なのはモラルじゃない。力だよ。問答無用に悪を叩き出してしまう力さ。僕らが組めばそれができるんじゃないか」

「あなたは誰かを痛めつけたいだけ。痛めつけて愉しみたいだけだわ。相手は悪人だからって言い訳してるだけ。自分の病気を正当化してるだけよ」

 神水流はポカンと口を開けたままムーンライトを見つめていたが、やがて破顔して笑い声を上げる。

「いや、そんなにはっきり言われたの初めてだな。うーん、痛いところ突いてくるねぇ」

 神水流は笑顔を消してムーンライトを見据えた。その目は青白い炎を灯したように妖しく光る。

「当たってるよ、悔しいけど。僕は楽しいのさ、生命を弄ぶのが。相手の身体を傷つけ壊すのが堪らなく好きさ」

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