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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・20

 あたしたちは弾かれたようにバイクに跨りエンジンをかける。

「いい?無茶は絶対ダメだからね!」

「了解ッス!」

 夜の街に飛び出していく二台の黒いオフロードバイク。操るのはマスクで顔を覆った二人。車体後部には竹刀。怪しい。怪しすぎる。

 まだライトは点けたまま。道路は混雑とまではいかないが、それなりの車が走っている。礼二は車の間を縫うように巧みにハンドルを捌きながら現場へ急ぐ。

「こちらバイクチーム!現場へ向かってる!あと二分で着くぜ!」

 あたしは周囲に気を配りながら礼二の後について走る。礼二は他の車やバイクを器用にかわしながら現場へ急ぐ。

「姉御、次の角を左に曲がってライトを消しましょう」

「OK。でも他の車と歩行者に注意してよ!?」

「合点だ!」

 角を左折しライトを消す。ポツリポツリと街灯のある4m道路。都合のいいことに対向車も後続車両もいない。

「もうこの辺のはずです。姉御、徐行で」

「了解」

 鬼人の感覚を研ぎ澄まして周囲の様子を窺う。微かな人声を感じる。

「礼二、右手の路地!」

「合点承知!」

 路地の手前で一旦停止し、奥の様子を確かめる。


 ドシンッー


 砂袋を叩くような音。続けてウッという呻き声。間違いない。誰かが殴られている。ほぼ同時に、


 ガシッー


 木の軋む音。これもグフッと誰かの呻き声が被る。間違いない。襲撃者だ。

「行きましょう!ライトをハイビームで!」

「OK!」

 あたしたちはアクセルを吹かして一気に路地裏に進入する。2mほどの雑居ビルの隙間。道を塞ぐようにあたしと礼二が並んで止まる。

 黄色いヘッドライトの明かりの中には十人ほどの人影があった。半分ほどは手でライトの明かりを遮りながら、きつい目でこちらを睨んでいる。少年が四人と少女が一人。不満気に唇を尖らせ、何も言わずただギラギラした視線をこちらに向けている。みな手にバットや鉄パイプなどの得物を手にしている。逆光のせいでこちらがよく見えないのだろう。細めた目に疑念と不安が浮かんでいる。

 襲われた側は四人。全員男性。中に礼二と同じ年ごろに見える少年も混じっている。路上に四つん這いになった者や仰向けに倒れた者、壁に押し付けられたもの。一方的にやられていたようだ。どこか焦点の定まらない目でこちらを見ている。

 今夜あたしたち鬼人チームが助っ人に入ることを知っているのは、吉川さん他マウントクリークのメンバー数人だけ。襲撃者はもちろん襲われた自警団メンバーもあたしたちのことは知らない。

 路地の奥は行き止まり。両側には雑居ビルの壁。襲撃者たちはあたしたちをどうにかしないと逃げられない。

 襲撃者の一人が掴んでいた自警団メンバーの胸ぐらを離す。自警団の青年は道路に崩れ落ちながらもこちらに顔を向けている。

 襲撃者の男は秋の稲穂をたくさんくっつけたような金髪に、上半身素肌にデニム地のベスト、下はパツパツの革パンツ。全身から暴力的な雰囲気を放っているが、足は枝のように細い。バイカーズでもツイスターズでもないようだ。ロッカー系だろうか。

「なんだ?ポリ公か?」

 ドフを効かせたつもりだろうが、その声は若干甲高い少年の影を引きずっている。

 あたしと礼二はチラと顔を見合わせる。まさか鬼人風に名乗りを上げるわけにもいかない。「通りがかりのライダーってとこかしら」

「トイレを我慢できなくなってな。でもこれじゃ恥ずかしくて小便もできやしないな」

 四人の男性襲撃者は全員長髪。金に茶に赤に黒。カラフルだ。逆に女性は短髪。頭皮が透けるほどサイドを刈り上げたベリーベリーショート。人形のように可愛い顔にゴツい銀のピアス。五人の襲撃者は全員剣呑な目付きで、手でバイクのライトを遮りながら、ゾッとあたしたちを睨んでいる。

「クソがー 死ねや」

 稲穂頭がボソリと言い、手に持った鉄パイプを大きく振りかぶり、こちらに向かってダッシュしてくる。

 

 ヒュンー


 風切り音とともに鉄パイプがあたしに向かって振り下ろされた。



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