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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・18

「えー、何これ!?」

 あたしは思わず抗議の声をあげる。礼二がシッと口元に人差し指を当てる。

「声が大きいスよ姉御。まぁ落ち着いてください」

 夜の路上。あたしと礼二はマウントクリークの先輩、吉川さんの運転するワンボクックスカーの中にいる。あたしは助手席に、礼二は後部の貨物スペースに体を押し込んでいる。貨物スペースには二台のバイクが積まれている。

「とりあえず素顔晒すわけにもいかないでしょ?」

 礼二は困り顔で手に持ったマスクを私に見せる。真っ赤なバタフライ型のマスク。それに同色のベレー帽。

「襲撃者は里人ですから。鬼風の薫りまでは分からないでしょうから顔さえ見られなきゃいいわけですし」

 あたしは呆れ顔で抗議する。

「そういう問題じゃないでしょ!それに何よ!この服は!コスプレ大会じゃあるまいし!」

 とりあえず対襲撃者パトロールを渋々OKしたものの、礼二に渡された「変装用」衣装にあたしは呆れ返った。

 礼二の用意したパトロール用衣装は、黒のピカピカに磨き込まれたエナメル製ジャケット。V字に開いた大きな襟と金ボタン、金モール飾り、金のショルダーパットまで付いている。それに同じく黒エナメルのミニスカート。

「だって鬼袴ってわけにはー 鬼人だってバレると困るでしょ?かといってダンス衣装とかバイカーズファッションだとツイスターズかバイカーズだって思われちゃうし」

「いいじゃないよ、それで。バイカーズやツイスターズが協力してやる夜警でしょうが」

 礼二はまあまあとあたしをなだめながら、

「こういうのってどこの誰だか分かんないからいいんじゃないですか」

「こういうのって何よ」

 礼二はちょっと迷って、

「えーと、正義の味方?」

 あたしは思わずブーッと吹き出してしまった。

「もういい。あたし帰る」

「ちょっちよっー 待ってくださいよ姉御、姉御にしかできないスよ、美少女戦士の役なんて」

 え?美少女戦士?

「おう、そうとも。なんせマウントクリークの女子チームはなんかこうヤンキーとかレディースとかのカテゴリー出身だしな。気高い美少女戦士役となりゃ龍美ちゃんだって」

 吉川さんがブンブンと激しく頷きながら言う。

「そうそう、そうですとも姉御。この礼二、切に、切に申し上げます。どうか真面目に頑張ってるバイカーズとツイスターズの皆を助けてください」

 むぅー まぁこれだけ頼まれちゃうとなぁ。無下に断れないかなぁ、美少女戦士の役。

「ま、しょうがないか。言っとくけどさ、今回だけだからね?もうやんないからね?び、美少女戦士の役なんてさ」

「ありがとうございます!そうとなったら急いで準備しなきゃ!もう仲間がパトロールを始めちまう」

 あたしは礼二と吉川さんに車の外に出てもらい、狭い車のなかで服を着替える。エナメルジャケットとスカートを身につける。おや、靴まである。足首までのショートブーツ。質感は同じエナメル系だけどウレタン素材で柔らかく足にフィットする。

「姉御、いいですか?」

 礼二が断ってからドアを開ける。

「バイクを降ろします」

 荷台からスロープを架けてバイクを降ろす。いつも練習に使うバイクと違って、ライトにウインカー、ナンバープレートまで付いている。

「はは、プレートは偽物っス」

と礼二は笑うけど、本物そっくりに見える。一体どこでこんなもの手に入れたんだろう。

「おお、龍美ちゃん似合ってるよ。アイドル歌手でいけるよ」

「ほんとほんと。姉御、これも」

 礼二が何やら膝掛けみたいなものと棒を手渡してくる。マントと竹刀だ。え、竹刀!?

「なんかセンスない武器ね。サーベルとかじゃないの?こういう格好の時って」

 礼二はシレっとした顔で言った。

「俺たちは悪ガキどもを指導するわけですし、竹刀がぴったりですよ。それに剣だと大怪我させちゃいますから」

 

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