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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・17

「自警団!?」

「そうッス」

 礼二はコクリと頷く。

「うちの兄貴達だけじゃないんです。この二ヶ月の間に十件以上、人数で言うと五十人近くがやられてますから」

「うへぇー 怖くて夜の街に出られないね」

「そうなんすよ。警察は事件が起これば対応してくれますけど、やられるのをただ待ってるのもね。駅周辺や公園、これまで襲撃のあったところを中心にみんなでパトロールしようってことになって」

 何となく相談内容が分かってきた。

「俺、鬼人だから、やっぱパトロールの先頭に立たなきゃなって思って。他のチームにも何人か鬼人がいるんで、みんな手伝ってくれることになって」

 うーん。美味しいピザを持つ手が止まってしまう。

「そりゃ、礼二の気持ちは分かるけどさ。あたしら未成年だよ?高校生と中学生がやる仕事じゃないよ」

 礼二はテーブルに視線を落とし言葉を探す。

「姉御の言う通りなんですけどー 危険がないかって言うと、やっぱ危ないし。分かっちゃいるんですが。兄貴がやられたってのもあるけど、何とか力になりたくて。バイカーズもツイスターズも荒事に向かないやつも多いし。鬼人メンバーも掻き集めても五人もいないんですよ」

 厨房から礼二のお母さんが顔を突き出して尋ねる。

「龍美ちゃん、もう一枚食べるかい?」

「ありがとうございます。いただきます」

「ソーセージとペパロニでいいかい?」

「はい!」

 あたしは明るく笑顔でおかわりを所望した。周りを気にしながら声を落とす。

「絶対ヤバいって。もしその襲撃者と出くわしてごらんよ。たとえ相手がクズ野郎たちでも鬼人が一般人に怪我させたりしたらただじゃ済まないよ」

 どうしようもない不良生徒でも、行き過ぎた体罰で怪我をさせれば教師は処分される。鬼人が里人に怪我をさせても同じ。たとえ里人側に非があったとしても、鬼人側も無罪放免とはいかない。日本国の法律は基本里人のための法律なのだ。過剰防衛罪を適用される可能性が高いし、鬼力による直接攻撃が立証されれば銃刀法違反を適用される可能性もある。これでも鬼人警官の娘だから「弱いものいじめ」を咎められ罪に問われる鬼人をたくさん見聞きしてきているのだ。

 その考え方の裏返しが、鬼力は人が幸せに生きるためのもの。夢々人を傷つける道具にしてはいけないのだという鬼道の教えにつながる。

「大丈夫ッス、姉御。俺に考えがあります」

 あたしはちょっと嫌な予感がした。こういう時の礼二の考えにはあまり感心しないことが多いから。

「バイクっすよ。俺たちバイク得意ですから」

「バイクぅ?」

 礼二は得意げに頷く。

「バイクでもって風のように現れるわけです。で、相手をやっつけて風のように去っていく。警察が来る前にね」

 あたしは呆れて目を丸くする。

「何言ってんの?気は確か?」

「もちろん。それにー」

 礼二は少し言い淀む。

「なによ?」

「海猫も襲撃に一枚噛んでるみたいなんです。お友達も絡んでるみたいです」

「本当!?」

 あたしは思わず声を上げた。ちょうどソーセージとペパロニのピザがやって来る。

「ありがとうございます」

「これ食べたらお家まで送っていくけら」

 あたしはお母さんに笑顔でお礼を言い、遠慮なく焼きたてのピザのピースを手に取る。お母さんが厨房に戻るのを待って、礼二が懇願する。

「お願いします姉御。未成年だからって俺たちだけ黙って見てるなんて真っ平ですよ。やりましょうよ」

「うーん、一応これでも警察官の娘なんだよ?」

 礼二がテーブルにつきそうなほど頭を下げる。

「お願いします姉御。それにもう一つ考えがあるんです」

「考え?何ィ?礼二の考えってロクでもないことが多いんだよな」

「まぁそう言わずに。ね?姉御」

 礼二はニヤリと笑ってピザの皿をあたしに押しやる。あたしは仏頂面のまま、礼二を真似てピザにフレンチフライをどっさり乗せて、ケチャップとマスタードをかけてバクリとやった。あっ、美味っ!

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