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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・3

 結果的にあたしはミカのちょっと虫のいいお願いを聞くことにした。

「メンバーにはならないけど今度見に行くわ。それでいい?」

 ミカは大喜びで、

「ありがとうルミ!鬼人が味方になってくれればうちのチームも肩身の狭い思いをせずに済むわ!」

 ミカは自分に都合のいいことだけ聞こえる耳を持っているらしい。それと話しているうちに分かったのは、どうやら声を掛けた鬼人はあたしだけではないようだ。他の鬼人生徒は上手に断ったのだろう。

 それでもあたしがミカの言うツイスターズの様子を見に行くことにしたのは、父から不良チーム同士の乱闘の話しを聞いていたから。

 バイクや車を乗り回し、盛り場で小競り合いを起こす若いダンスチームの話しは父から聞いていた。

 父にしてみれば高校一年生のあたしを筆頭に、中二、小四と思春期の子供三人が無軌道な行為に走ったりしないか心配だったのだろう。

 自宅で晩酌をしながら赤ら顔で、駅前や繁華街、公園に集まっては喧嘩や揉め事を起こす若者グループの話しをしているのを聞いたことがある。

 もっとも父は自分の話しを黙って大人しく聞いてくれる飼い犬のペロに対して話しかけていたのであり、自分や弟に説教していたわけではないのだが。

「なぁペロ、ほんとに連中、大人の話をまるで聞こうとせん。ほんとに困ったもんだよ。なぁペロ?」

 隣にちょこんと座った柴犬のペロに話しかける様子は滑稽でありながら微笑ましく、かつ悲哀を感じさせるものだった。ちなみにペロは使鬼(鬼人同様に体内に鬼虫を飼う動物の総称)ではない。ご近所のブリーダーからいただいたごく普通の柴犬だ。ペロは父に寄り添うと言うより、父の夕餉のおこぼれが欲しかったのだろう。

 次の土曜日。あたしは貴重なお小遣いを使って電車に乗り、ミカから教えられた港の近くにある波止場公園にやってきた。本当はお金のかからない自転車で来たかったのだけれど、自宅からかなり遠いため、いかな鬼人の脚力をもってしても少々難儀だったし、道もよく分からなかったから。

「やぁ、キュートなゴブリンだね。よろしく。ダンって呼んで」

 目の横でピースサインを決める男。横にはミカが寄り添っている。梨の皮みたいな色の髪をモップのように長く伸ばしたダンはミカより二つ三つ年上に見えた。細身の黒いパンツに赤いシャツ。黒のジャケット。バイクではなく車に乗っている。赤いスポーツ系のオープンカーだ。突然雨が降ってきたらどうすんのだろう。

 ミカは派手な化粧に、透け透けのレース地のトップス、フワッと広がったターコイズブルーのスカート、頭には着物の帯みたいな大きなリボン。

 あたしは紺のトレーナーにブルージーンズ。足元はノーブランドのスニーカー。

「ルミ、予備の衣装があるよ。着替える?」

 ミカが風船ガムをクチャクチャやりながら言ってくれたが、

「ありがと。でもいいよ。あたしは見てるだけだから」

 と断る。

 この波止場公園に集まるグループが好きなこと。それはバイク、車、ダンス、それに恋と喧嘩と器物破損、交通違反、未成年飲酒に校則違反。

 グループの中で、どちらかと言うとバイク愛の比重が高いとバイカーズ、ダンス愛の比重が高いとツイスターズということになる。

 バイカーズはバイク乗りが多くなるので自然革ジャンにブーツスタイルが主流となり、ツイスターズはダンスメインだから服が汚れないように車やスクーターが多くなる。もちろん車好きのバイカーズもいるし、革ジャン派のツイスターズもいる。あくまでも大まかな区分けをするとそうなるという話し。

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