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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・2

 ミカは辺りを気にする素振りを見せる。この話を誰かに聞かれはしないか。あたしと話しているところを誰かに見られはしないか。ミカにとってはどちらも避けたいことらしい。

「バイカーズよ」

 ミカは言った。

「バイクに乗った乱暴者集団。たちの悪いバイカーズチームに目をつけられてるの」

 ミカは大きな目をグリグリ動かしながら熱弁を振るった。いかにバイカーズが凶暴で始末に負えないか。いかに自分たちダンスチームが迷惑を被っているかを、「でね、でね」を連発しながらまくし立てる。

「でも、ダンスチームの人もバイクに乗るんじゃないの?革ジャンだって着てるし。あたしよくわかんないし。どっちもバイカーズに見えちゃう」

 あたしが本音を言うと、ミカは慌てたようにブンブンと顔の前で手を振って「違う違う」と否定し、

「バイカーズとあたしらは全然ちがうよ。連中は暴力と反抗が目的なの。とにかく法を破ったり、乱暴を働いたり、誰かを殴ったりすることが目的なの。踊るのはついでなの。ダンパでナンパする時に踊るぐらいじゃない」

 あたしはダンパでナンパという里の言い回しの意味が分からず、極めて無邪気に「ダンパデナンパって何?」と尋ねた。ミカは困った顔になり、

「そっか、ルミは鬼人だもんね。鬼人は何て言うんだろ?ダンパはダンスパーティーのこと。ナンパは、えーと、男子が可愛い女子に声をかけることよ。バイカーズの奴らはこんな感じ、ヘイ、ベイビー、俺のバイクに乗らないか?とか、よう子猫ちゃん、俺とジルバ踊らないか?とか」

 何しろあたしは警察官の家庭に育っている。男女のことにはとんと疎い。

「バイクに乗せてくれるって親切だし、踊りに誘うのって不良なの?」

 ミカは顔を赤らめて困った表情になる。

「バイクに乗らないかっていうのはー そのう、もっとエッチな意味なの。俺に乗らないかっていうことよ。俺とジルバを踊ろうっていうのもそう。つまり、ベッドで激しく踊らないかっていう意味なの。バイカーズは不良で下品だからすぐそういうことを言うのよ」

 そしてフンと鼻を鳴らして少し自慢気な表情になる。

「あたしたちツイスターズはそんなことしないの。仲間とダンスで盛り上がるのが目的よ」

 ミカのいうダンスをメインにしたグループのことをツイスターズというらしい。

 あたしにしてみれば、どちらも男子は革ジャン、女子はヒラヒラスカートに巨大リボン、ピカピカのカスタムバイクを乗り回している。どこがどう違うのか良く分からない。

 話の流れ上、どっちも一緒じゃないのとは言えず、黙って話を聞く。ミカはあたしの沈黙を自分に都合よく理解したようだった。

「あたしらに絡んでくるバイカーズはさ、男子も女子もパッとしない連中なんだけどしつこくて。それにー」

 ミカは言葉を切ってチラとアタシの手元を見た。あぁ、そういうこと?ミカの話し、何となく分かったかも。

「相手のメンバーのなかに鬼人がいるの。何かと偉そうに言ってくるからやりづらくて」

 やっぱり。対抗して自分のチームにも鬼人を入れようということか。

「ルミがうちのチームに入ってくれたらちょっと安心だなって。ね?お願いルミ」

 お願いねぇ。これまで話したこともなかったのに。

「誰かと揉めたり喧嘩したりするつもりはないんだ。悪いんだけど用心棒なら他の人に頼んでくれない?」

 ミカは慌ててあたしを引き止めにかかる。

「待って待って、用心棒とかじゃなくてさー 相手に鬼人がいるからさ、こっちも何かあったら鬼人がいるぞって感じでー チームにいてくれて、相手があたしらにちょっかいかけたりできなくなればいいの」

 そういうのを用心棒と言うんじゃないのかなと思うけど。

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