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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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帰館

 待ち合わせ場所に着くと、鏑矢先生がもう先に待っていた。少しは顔色も良くなった様子だ。

「ねー、また来週ね?みんなで練習してダンスコンテスト出ようね?」

「ダンスパーティーもそうだけど冬休みが待ち遠しいよ」

 僕と直生、竜興君とツバメさんがああだこうだと別れを惜しむもので、鏑矢先生とユウト、ミムラは二十分近くも待たされることになった。

「じゃあね!」

 遠ざかる直生を見送って振り返ると、ユウトとミムラが楽しそうに笑っている。鏑矢先生も笑顔。良かった。随分と復調したみたいだ。

「あんたらさ、学生の本分は勉強だからね?浮かれ過ぎるのは良くないよ」

と鏑矢先生がため息混じりに言う。ここは素直に「はい」と答えておく。自分でもちょっと自覚があるから。

「ねー、来週も出かけようよ。ねーったらねー」

 ツバメさんがユウトとミムラにしつこく絡んでいる。ユウトとミムラよりもまずは鏑矢先生にその気になってもらわないとー と考えていたら、あのギタリスト、礼二さんを思い出した。

「そうだ先生。礼二さんってご存じですか?」


 ギクッー


 物凄く分かりやすく鏑矢先生の体が揺れた。あれ?何かマズかったかな?

「そうそう、ダンスチームの演奏メンバーに鏑矢先生のこと知ってる人がいてさ」


 ギクッー


 再び鏑矢先生の肩が震える。

「うん、ほら先生、前に院外調査の帰りにドライブインに寄ったことあったでしょ?あの時ドライブインにいた人がダンスチームにいてー」

 鏑矢先生の顔色が再び青ざめていく。空気を読みながら配慮のできる性格のユウトがミムラを小突いて「黙って」のサインを出す。

 そのユウトの努力も虚しくツバメさんが続けて言う。

「そうそう、龍美の姉御は元気かって」


 ギクッギクッギクッー


 今にも胸をかきむしって倒れるのではないかと思うほど身体を痙攣させる鏑矢先生。

「だ、大丈夫ですか?先生」

 さすがに心配になった僕らは駅の改札前にあるベンチに鏑矢先生を座らせる。

「あたし何か飲み物買ってくる」

と駆け出していく。僕とユウトは先生の手を取って鬼力をそっと送り込む。

「だっ、大丈夫よ、大丈夫。もー平気よ」

 駆け戻ってきたミムラの差し出すレモンサイダーをグッと呷る鏑矢先生。

「運転、大丈夫かな?」

 心配顔のツバメさん。僕らは待ち合わせ場所まで電車でなく部の車で来ている。

「先生、大丈夫?何ならあたしらが運転しようか」

 心配そうに鏑矢先生を覗き込むミムラ。ミムラもユウトもエデンで運転訓練を受けていたらしく、バイクはもちろん車の運転もできるらしい。

「大丈夫。無免許の二人に運転させたりしたら大変。今度はあなたたちが停学になっちゃうわ。さぁ帰るわよ」

 そう答えて健気に笑う鏑矢先生。僕らはそれ以上は何も言えず、先生に付き従って駐車場へ。帰館の途に着いた。

 帰りの車の中は静かだった。ツバメさんは来週の外出許可の話をしたかったのだろうけど、さすがに鏑矢先生の様子を見て我慢したようだった。

「じゃあ、みんなまた月曜日にね」

 帰館後、疲労困憊の様相の鏑矢先生。あわよくば明日の日曜日も外出しようと目論んでいたツバメさんは見るからにしょんぼりしている。人のことは言えない。僕もひょっとして明日も直生に会えはしまいかと考えていたから、ちょっとー いや、相当ー その実物凄く残念だ。

「あっ、先生ー これ預かりました」

 僕は礼二さんから預かっていたお店の名刺を先生に渡す。

「お父さんお母さんがやってらっしゃるお店だから、自分に連絡がつくからって」

 鏑矢先生はそっとカードを受け取り、小さく微笑んで言った。

「うん、知ってるよ」



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