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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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ギタリスト

 龍美の姉御。その意外な言葉の響きに一瞬言葉を失う僕ら。ギタリストさんは僕らの方へ近づいてくる。

「ほら、前に会ったろ?ドライブインで。覚えてねーか?」

 ん、そう言えば。徐々に記憶が蘇ってくる。確かにそんなことあったな。院外調査の帰り道、立ち寄ったドライブインでカスタムバイクに乗った一団と出くわしたっけ。

「あぁ、あの時のー」

「おぅ、思い出してくれたか。元気なのか龍美の姉御は?」

 僕ら三人はちょっと顔を見合わせる。

「龍美の姉御って、鏑矢先生のことー?」

 ミムラが確かめると、

「そうさ、鏑矢龍美の姉御さ。俺っちは礼二ってんだよろしくな」

 礼二さんは二本指でちょこんとこめかみ辺りをつついて挨拶した。

「ところでお前さんたちは龍美の姉御とはどんな関係なんだい?バイクチームかい?ドライブインでは姉御も何だかしゃべりづらそうというか、訳アリ風というか。俺っちも確認しそびれちまったしな」

 僕らはどう答えていいか迷いつつも、

「えぇまぁ、先生と生徒って感じですかね」

「先生と生徒!」

 礼二さん両手で頭を抱えるポーズでクルンとターンする。

「先生かよ!龍美の姉御が?そうか、そうかよ!俺っちの聞き間違いじゃなかったんだな?」

 両手を広げて大げさに喜ぶ礼二さん。と、思ったら今度は手で目元を覆い涙ぐみ始める。

「そうか、先生ー 龍美の姉御はとうとう夢を叶えたんだなー そうか、そうなのかよ。俺の空耳じゃなかったんだな。そうかよ」

 礼二さんはシャツの胸ポケットから深紅に黒の水玉という派手なハンカチを取り出し涙を拭い、思い切り鼻を噛む。

「嬉しいぜ。龍美の姉御が先生ねぇ」

 礼二さん目頭を押さえハンカチを丁寧にたたんでポケットにしまう。少し声を落とし、

「時にお前ら鬼人だよな?分かるぜ、俺っちも鬼人の端くれだからな」

 僕らは頷く。

「はい。今日は神戸で院外活動だったので。鏑矢先生はちょっと体調がすぐれなくてここにはいないんですが」

 礼二さんピクリと眉を上げる。

「今、院外って言ったか?お前ら、ひょっとして鬼士院から来たのか?」

「えぇ、まぁ」

 礼二さんがリーゼントを振り乱しながら「なんてこった」と天を仰ぐ。

「まさか、姉御は院のー 錬成館の先生なのか?」

 僕らはますます戸惑いながらも頷く。

「なんてこった!なんてこったよハニー!姉御が錬成館の先生!ブラボーだぜ!とびきりブラボーだぜ!ドライブインで聞いた時はまさかと思ったけどよ、本当なんだな!?」

 大声で叫ぶ礼二さん。僕らは何だか決まり悪くて仕方がない。

「おぅ少年少女たち、一緒に飯食いに行こうぜ。俺っち自慢のホットサンドイッチとシェイクをご馳走するからよ。姉御の話しを聞かせてくれよ」

 何だかちょっと困ったことになった。今日は表向きは甘味研究会の院外活動だが、その実態はもう全くもってトリプルデートだから。あんまり鬼士院がどうしたとか、鏑矢先生がどうしたとか言って欲しくない。

「申し訳ありません。せっかくですが」

 僕は礼二さんに頭を下げる。

「今日はもう院に帰らないといけなくて。鏑矢先生には礼二さんのことお伝えしておきます」

 礼二さん目に見えてがっかりした様子。

「そっかよ… まぁしゃうがねぇ。みんな、またダンス見に来いよ。週末は晴れりゃここで踊ってるから。それからこれ、うちの店ーつっても、親父とお袋がやってんだが、ここに電話くれりゃ連絡つくからよ」

 お店の名前が書かれた名刺を受け取る。「77(セブンセブン)カフェ」という店らしい。

「ありがとうございます。礼二さんのギター演奏、凄くカッコよかったです」

 と伝えると礼二さん照れたように笑う。

「そっかぁ?俺っちも鬼人の端くれ、少年の指のギターだこを見逃しちゃいないさ。ギター練習、頑張んなよ」

「はい、ありがとうございます」

 僕らは礼二さんやダンスチームの人たちに挨拶してその場をあとにした。

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