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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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姉御

 ダンスコンテストは二週間後の日曜日。毎週末といっても実質来週の土日と大会前日の土曜日の三日しかない。

「来週も再来週も外出するんじゃ鏑矢先生参っちゃうんじゃない?」

「えーっ、そんなこと言わないでさぁ。お願いみんな」

 ツバメさんがミムラの肩にすがりつく。

「でもさ、僕らだけだと外出できないよ。僕らあくまでも院外調査の補助員だもの。調査員の鏑矢先生がいなきゃ」

「そう言わずに頼むぜ。俺も虹原も今はわがまま言いづらい立場だしな。甘味研究会から誘っもらわないと週末立て続けの外出はキツイぜ」

 とにかく鏑矢先生に頼んでみることになる。僕らは時間の許す限りダンスチームのパフォーマンスを愉しむ。

 ダンスと一口に言ってもなかなか奥が深い。特に男女ペアで踊るロカビリーダンスは、ただリズムに合わせて身体を動かしていればいいというものではない。相手の動きとシンクロしないといけないし、コンビ技も多い。

「ねぇ、ダンス大会あたしも出た〜い」

 直生がワクワク顔で僕を見る。

「ねぇねぇ、来週末みっちり練習してさ、あたしたちも大会出ようよう」

と僕の腕を揺さぶる直生。

「それいいね。俺たち三組でチーム戦にエントリーしようぜ。俺もダンスは初心者だし、チーム戦なら心強いぜ」

 ユウト、ミムラと顔を見合わせる。ミムラは出る気満々の顔。

「とにかく鏑矢先生に相談してみよう」

 もうタッキー&ツバメ組とミムラは出場が決まったかのような盛り上がりだ。

「ところでさ」

 ユウトが宙に鼻先を突きだしてクンクンと鼻を蠢かせる。

「鬼風、感じない?」

 全員目を閉じて鼻をツンと上に向けてクンクン。ちょっと詳しい人が見ればこの仕草で鬼人だとバレてしまう。

「あ、ほんとだ」

「ステージの方からだよ」

 じっくりとダンスチームを観察する。

「あの人かな、ほら薄いピンクのシャツにワッペンをたくさん貼ってる人」

 黒の細身のコットンパンツに黒のブーツ。ピンクのストライプのシャツに犬をデザインしたワッペンをこれでもかと貼り付けている男の人だ。僕らより二つ三つ年上に見える。

「うん、そうだね。パートナーは里人みたいだね」

 曲が終わり、最後の決めポーズを取るメンバーたち。メンバーの一人がマイク片手に観客に向かって語りかける。

「今日は俺たちストレイドッグスを見に来てくれてどうもありがとう。今日ラストの曲だ。良かったらみんなも踊ってくれ」

 バンドメンバーが再び交代。さっきの上手いギタリストもいる。

 曲はギターソロから始まった。ポップでメランコリックな音色がサイダーの泡のように弾けて会場を包む。

 さっきは風が弱いので気づかなかったけどこのギタリストも鬼人だ。ギターの旋律に鬼風が乗ってなんとも心地良い。

 チームの一人が一番前に立って、観客にダンスの振りを教えてくれる。みんな見様見真似で踊り出す。

 僕らもペアを組んで踊る。ユウトとミムラは動きがとても自然で様になっている。タッキー&ツバメと僕と直生もそれなりに楽しく踊ることができた。体裁を気にさえしなければ、好きな人と踊るダンスは最高に楽しい。

 やがて曲が終わり、観客たちが一斉に歓声を上げて拍手する。チームメンバーが観客に向かって別れの挨拶をしてこの日のパフォーマンスは終了。観客たちは三三五五帰り始める。

 各チーム片付けに入っている中、女子三人はダンス衣装の観察に夢中になっている。

「うーん、でも大会までに自作するのはちょっときついかなぁ」

「神戸にああいう可愛い服売ってるお店、たくさんあるよ」

「えー、行きたーい、来週行こうよ」

 などとキャアキャアやっている女子。その時だ。あのギタリストさんが荷物を片付けていた。一瞬目が合うと、ギタリストさんが「おや?」という顔をする。こちらに近づいてくるギタリストさん。

「お〜い、そこの少年少女、お前さんたち確か龍美の姉御の連れだよな?」


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