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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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防波堤のダンスステージ

 服装という意味では、今日のユウトとミムラはよく似たファッションだ。二人ともストレートのブルージーンズに身体にピタッと沿ったハイネックニット、ユウトは濃紺のスタジアムジャンパー、ミムラはクリーム色のPコートを着ている。

 普段あまり意識したことないけど、二人は院内の高級アパートメントに住んでいる。付き合ってるんだろうか。まったくそんな素振りは見せないけれど。

 竜興君は黒の細身のコットンパンツにブーツ、赤い開襟シャツに黒のベスト、黒の革ジャンという出で立ち。

 ツバメさんは細かい水玉の入った茶色のロングスカート。白いニットに茶のコート。赤いセルフレームの伊達メガネ姿。

 普段なら院外活動の際は黒のレザースーツか館の袴姿だが、今日の僕らは神戸の町に溶け込んでいる。人混みを歩いていてもチラチラと視線を投げられることもなければ、お年寄りや小さな子どもが駆け寄ってきて、ティッシュにくるんだ小銭や、ミカンや栗の入った小袋を手渡してくれることもない。

 正直これはかなり楽。居心地が良いなと感じる。時折周囲から薫ってくる鬼風に「あぁこの人鬼人だな」とか考えながら澄ましたまま歩きすぎる。周りの里の人たちはそのことに気付かない。直生にその事を話すと、

「そういう感覚なんだ。向陽台は服装にあんまり厳しくないし。そもそも里人の生徒も多いから周りはあんまり気にしないんだ。お布施貰ったこともこれまで二三回しかないよ」

とのこと。

 錬成館では常に鬼道正しく世のため人のためにあることを求められるから、院外では周りから見て鬼人です、錬成館生ですとすぐ分かる服装でなければならない。周りから見られてるって、やっぱり緊張感を生むんだな。

 目的の公園に近づくにつれてポニーテールにフレアスカート姿の女子や、リーゼントに細身のパンツ姿の男子の姿が目についてくる。

「ほら、あの公園さ」

 竜興君が指さす。風に乗って音楽と人声が聞こえてくる。海浜公園の大半は芝生だけど防波堤から15メートルぐらいがコンクリート敷になっている。

 この灰色のコンクリートゾーンがダンスエリアになっている。今、このダンスエリアには赤や青や緑、黄色にピンクの丸い朝顔みたいなスカートがくるりくるりと回っている。

 十組以上のダンスチームがめいめいお気に入りの音楽に合わせて踊っている様子はなかなかに壮観。各チーム数組のカップルが踊っていて、それを見ているそれぞのチームのファンもいるから、ダンスエリアは結構な混雑状態だ。

「うわぁ、やってるやってる。もっと近くで見ようよ」

 ツバメさんが竜興君の腕を引いてダンスエリアに。僕たちも後に続く。

「うわー、楽しそうだね。あたしも踊ってみたいな」

 ミムラは靴を鳴らしてステップを踏み始める。

「みんな上手いしファッションも可愛いね。コンテストではこんな服着なきゃだね」

「既製品も売ってるけど、有力チームなんかはチーム内に衣装係がいてダンサーに合わせて手作りするらしいぜ」

 竜興君が教えてくれる。

「あっ、ねぇねぇ、あのチームは録音じゃなくて人が演奏してるよ」

 直生がチームの一つを指さす。そのチームをもっと良く見ようと場所を移動する。

「凄いファンの数だね」

「何だか人気チームみたい」

 各チーム、レコードやカセットテープなどで音楽を流す中、そのチームは揃いの衣装を着たバンドトリオが演奏している。

「うわぁ上手いや、あのギターの人」

 一応僕も甘味研究会の楽器担当だし、演奏の腕前はともかくとして演奏を聞く耳だけは自信がある。濃いブラウンのコットンパンツに幅広のサスペンダー、白いシャツにボウタイ。髪型は全員一糸乱れぬリーゼントスタイルだ。ベースとドラムも上手いけれど、ギター奏者の上手さは別格だ。

 みんなで数曲を楽しんだ頃、バンドチーム三人が別のメンバーと交代する。さすがに演奏も体力勝負。休憩しながらでないと保たないのだろう。

「でも凄いね。やっぱりみんなめちゃくちゃ上手だね」

「あぁ、ここに集まるのってダンスに自信のある奴らばかりだからな。ま、大丈夫だって。大会までにじっくり練習しょうぜ。甘味研究会の皆んながいれば毎週末集まれるぜ」

 竜興君がそう言って僕らに向かってピースサインをして見せた。


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