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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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鏑矢先生、風に当てられる

 仏頂面とは正にこれのことといった王道の仏頂面を晒しながら、鏑矢先生がテーブルに片肘を突き、頬杖を突いたままシェイクをすすっている。

「あ~あ、こうなるとは分かってたけど、もう少しどうにかならないもんかね、この状況」

 鏑矢先生は目の前で展開されるカップルの親愛表現と感情確認行動に当てられ、船酔いをしたような顔つきになっている。

 土曜日の兵庫藩は神戸。めでたく外出許可の下りた坂田之山さんと直生。僕ら甘味研究会部員三人と鏑矢先生、ツバメさんの七名は、神戸の中心にある阪都電気鉄道三宮駅で待ち合わせ、神無月孤狼以来約二週間ぶりの感動的な再会を果たした。

 人で溢れかえる駅改札前で、今か今かと向陽台鬼塾生二人を待ち構える僕とツバメさん。ミムラが言うには、改札の向こうから直生の姿が見えた時は、まるで長らく消息不明であった肉親を迎えるが如く、二組の、周囲の困惑をまるきり無視した再会劇が繰り広げられたらしい。え?、そんなに大げさだったかな?控えめな感じで直生に再会の喜びを伝えただけなのに。

 お目当てのダンス見学は午後にして、午前中は神戸市内をブラブラすることとなった。もっともユウトに言わせると、

「ブラブラしてたのは僕とミムラだけ。君ら四人はラブラブで、鏑矢先生はもうクラクラだったよ」

と、ユウトらしからぬダジャレで僕らを皮肉った。うーん、そうかなぁ?人前でラブラブなんて恥ずかしいと思うな。みっともないよね、そういうの。

 さて、市内を歩き回り、直生と楽しい時間を過ごす。おっと、もうお昼かぁということで、神戸バーガーのお店でお昼ごはんとなったわけだ。

 神戸ビーフと淡路島玉ねぎを使った神戸バーガーを頬張り、直生が「シュンカ、口の横にソースがついてるよ」と言いながらナプキンで拭いてもらうというお決まりの儀式も済ませる。

 ちなみに竜興&ツバメチームは、タッキーが

「俺ピクルス苦手なんだよな」

「えー、もう子供なんだから」

とツバメさんがピクルスを手で摘んでパクリとやるというバージョンだった。いや竜興君、ついこの間決闘を妨害し、白金の虹ヶ原さんと闘った相手とは思えない(てい)たらくだよ、まったく。

 さてこのように、ごく自然に、さりげなく、恋人風をびゅうびゅう吹かせる僕らのせいで、鏑矢先生はすっかり風当たりをしてしまったようだ。

 街ゆく人々は僕らが振りまく幸せの鬼風にニッコリ笑顔で見守ってくれているというのに。鏑矢先生ったらもうだらしないな。

「ふぅー」

 鏑矢先生は深いため息をつき、

「あたしゃもう疲れたよ。ダンスはみんなだけで見に行っとくれ」

と、若干やつれた顔でのたまう。

「四時に駅の改札前で集合ね」

 鏑矢先生は腕時計を指差し集合時間を確認すると、

「さて、港の船でも見て心を落ち着けるよ」

とフラフラと歩いて行く。大丈夫かなぁ、鏑矢先生。クラクラしたりフラフラしたり、鬼人なんだからもっとシャンとしてもらわなきゃ。

「さて、じゃ行くか」

 竜興君が言って席を立つ。ダンスチームが集まっているのは、少し離れたところにある公園らしい。

 ユウトとミムラを覗く四人でキャアキャア言いながら神戸の街を歩く。今日は甘味研究会の案件ということで館の袴姿ではなく私服だ。寮の先輩ケントさんに服を選んでもらった。

 本日の僕のコーデはまずお得意の柄物の長袖Tシャツ。柄は東柳斉社楽の浮世絵。赤黒のチェック柄のウールシャツ。実家の兄のお古のモッズコート。靴は萬さんに借りたワークブーツだ。ケントさん、

「悪くないんだけど、そのTシャツがなぁー まぁお前らしいっちゃらしいからいいか」

と合格点をくれた。

 直生はふんわりゆったりしたオフホワイトのバルーンパンツとカフェオレ色のニット、赤いハーフコート。もう「可愛い」のひと言しか出てこない。

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