プロローグ2
「人の振り見て我が振りなおせーと里では言うんですけど、自分がそんなことになってるなんて。自覚なかったなぁ」
「その諺は鬼門でも使うよ。鬼仁共通だね」
と鏑矢先生。
「でもまぁシュンカの気持ちも分かるけどね」
とツバメさん珍しく僕のことを擁護してくれる。心の余裕はこんなにも人を変えるのか。よい勉強になったな。
「ダンスパーティーかぁ。懐かしいな」
鏑矢先生が遠くを見る目つきで呟いた。
「鏑矢先生ダンスパーティー行ったことあるの?」
ミムラの問いに「ま、まぁね」と目線を逸らす鏑矢先生。あまり突っ込んでくれるなということらしい。
「でもダンスパーティーってあんまり聞きませんよね?」
「うん、院内じゃなくて里のイベントだもの。京都アリーナであるのよ。ダンスダンスダンスナイトin京都って言うイベントなの」
坂田之山君から一緒に行かないかと誘われたのだという。
「向陽台鬼塾の生徒は里のイベントなんかにもどんどん参加するらしいし。ダンスイベントなら鬼人がオミットされることもないしね」
里のイベントには今だに鬼人の参加お断りのものが多く残っている。特にスポーツ系のイベントはその傾向が顕著だ。
「コンテストに出るのよ。ダンス用の衣装を着てね」
なるほど。初めてできたボーイフレンドから初デートに誘われて舞い上がっているのか。
「シュンカも出れば?直生ちゃんと」
僕の頭の中で何かがパチンと弾ける。直生とダンスパーティー。楽しくないはずがない。僕はヒラヒラのスカートをクルクルと回しながら踊る直生のイメージに顔をふやけさせる。
「あ〜あ、シュンカがまたポワポワになっちゃったよ」
「ほらほら、ラングドシャが具無しのお好み焼きになっちゃうよ。混ぜて混ぜて」
僕は慌ててボウルの中身を混ぜ始める。甘味研究会の今日のスイーツはラングドシャと卵たっぷりのクッキーだ。
「今週末さ、タッキーと神戸にコンテストの練習がてらダンスしに行くの。ダンス好きの集まってる海辺の公園があってさ。シュンカも直生ちゃん誘って一緒に行かない?」
僕の頭の中でたちまちバラ色の図が展開される。可愛いダンス衣装姿の直生。海辺の公園。
「この季節海辺は寒いよぉ。ダンスは室内にしてまずは普通に神戸でデートしたほうがいいよ。神戸で甘い物とコーヒーでも飲んで、その後ダンスチームを見に行くといいんじゃない?」
と鏑矢先生。
「ちょうど冬の甘味研究会のおもてなし会のメニューも考えなくちゃいけないしね。みんなで行きましょう」
え、来るの?という僕の表情を読んだ鏑矢先生、
「そりゃ、甘味研究会の院外活動ってことにしないと、簡単に外出許可なんて出ないわよ」
「そうよシュンカ。あたしも甘味研究会への協力ってことで許可貰うんだから。シュンカだって直生ちゃんに会いたいからみたいな理由じゃ院外に出られないわよ?冬休みはまだ先なんだし」
ツバメさんも当たり前のように言う。うーん、そう言われるとその通りかも。
「でも坂田之山君は大丈夫なんですか?彼も寮に入ってるんでしょ?」
「向陽台は自由な校風なのよ。規則に縛られるんじゃなくて、いかに規則の範囲内で楽しく過ごすかを考えるわけ。例えば校外学習って理由をつけて校外に出かけて付き添いの教師を巻いちゃうとか」
そういうのを自由と呼ぶのだろうか。とすると直生も理由さえあれば外出できるわけだ。神無月孤狼の反省会とかなんとか理由をつければ許可されるだろうか。
「その顔は直生ちゃんにどうやって外出許可を出してもらうか考えてるね」
鏑矢先生が笑う。
「向陽台に知り合いの先生いるから頼んであげるよ」
「えっ!?本当ですか!?」
「後で電話してみるわ」
「わーっ、ありがとうございますっ!」
持つべきものは理解ある顧問だ。




