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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第9章 鬼類、他校生と交流す
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週末のご予定は?

 帰寮すると、先に戻っていた鶴丸が興奮気味に僕を出迎える。

「おーシュンカ、今日凄かったって?」

「もう鶴丸さ、主語述語をちゃんと言えよな。院内の仕事に就けないよ?」

「作家先生は細かいねぇ。虹ヶ原のことに決まってるだろ」

 やっぱり今日の武道授業での虹ヶ原VSミムラの話しは館内中に広まってるらしい。ちょうど館から帰ってきた萬さんが僕の肩を叩く。

「シュンカ、今日晩飯食いながら報告な?」

「萬さん、シュンカ先生には主語述語丁寧語を駆使してお話しないと聞いてもらえないスよ」

 萬さんは「なんだ、それ?」と言って不思議そうな顔をしたが、

「まぁとにかく大ニュースだ。名鬼門令嬢虹ヶ原美緒、鬼類を破る。こりゃ俺たち鬼人にとっちゃ大ニュースだろ?」

 なるほど。やっぱりそんな雰囲気で伝わってるのか。実際、現場で見てるとそんな華々しい勝利じゃないんだけど。いや、人の噂というのは恐ろしい。聞く人しゃべる人の願望込みで伝わっていくからどんどん形が変わっちゃう。

 玄関先でワチャワチャやってるうちにトビーさんも帰ってくる。

「なんだシュンカ、早速虹ヶ原さんの話しか?まぁ後でゆっくり聞こうじゃないか」

 トビーさん玄関先に腰を下ろしてブーツの紐を解きながら、

「時にシュンカ、お前はどっち派だ?鬼類派か?鬼人派か?それとも大和派か?」

「え?唐突になんです?」

「この話しは目線によって見方が全然違うからな。特にお前は鬼人であり準鬼類であり大和の子でもあるわけだ。この話をお前がどう捉えるか。その方が重要だ、うん」

 トビーさんは飯の時間まで今日の復習でもするかなと見え見えの嘘をついて部屋に戻っていった。

 うーん、トビーさんていい加減だけど時々深い事を言う。準鬼類か。やっぱり僕ってそういう位置づけ、見られ方なのかな?鬼人で準鬼類で大和民族。むーん、確かにそうなんだよなぁ。

 その日の夕食時。僕はできるだけ客観的に虹ヶ原VSミムラ戦詳報をみんなに伝えた。

「シュンカお前さぁ、もうちょっとドラマチックに話せよな」

と文句を言う鶴丸。トビーさんが、

「そう言うな鶴丸。シュンカはできるだけ正確に起きたことを伝えようとしてるんだ。我々が自分で今回起こった事を判断できるようにな」


 翌日。僕は一晩かけてトビーさんの問いについて考えた。僕は鬼人か、準鬼類か、大和民か。

 放課後、ユウトとミムラと一緒に甘味研究会部室に向う。虹ヶ原さんも一緒だ。

「もしよければ押し相撲の練習、もうしばらく続けさせて下さい」

 そう言って頭を下げた虹ヶ原さん。虹ヶ原さんは武道の授業の自由組手でミムラから一本奪ったものの、その後はやはりなかなかミムラに勝てないでいる。それも当然かもしれない。虹ヶ原さんが勝ったのはある意味狙いすましたカウンター攻撃が決まったもの。虹ヶ原さんの狙いが分かってしまえばミムラも警戒するようになる。

 僕は昨日から考えていたことを虹ヶ原さんに言ってみることにした。

「虹ヶ原さん、今週末は院長誕生日があるから三連休だよね?実家に帰ったりするの?」

 虹ヶ原さん少し戸惑いながら、

「えぇ、どうしようか考えてたんだけどー」

「甘味研究会はそのまま院内に残って合宿するんだけどさ。まぁ合宿っていっても部室に集まってスイーツ作るだけなんだけどね。もし予定がなければ一緒にどうかなって思って。武道メインの合宿じゃないけど」

 虹ヶ原さんは驚いたようだったが、少し考えてから言った。

「ありがとう、誘ってくれて。でも、もしよかったらだけど、みんなでうちに来ない?うち小さな道場もあるし。もちろんキッチンもね」

 と思わぬ展開ながら、三連休の週末甘味研究会は虹ヶ原さんの実家で合宿することになった。

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