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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第9章 鬼類、他校生と交流す
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授業と戦闘

 結局、虹ヶ原さんはミムラと三本手合わせをして、三本とも敗れた。もっとも惨敗という印象には程遠く、善戦するも最後は鬼類特有の鬼風の扱い方にしてやられた格好だ。

「さぁ、皆んな手を止めて〜 終了、終了ですよ〜」

 鳴子が鳴るやいなや、孫崎先生が大声で叫ぶ。その顔には紛れもない安堵の表情。とにかく事故なく終わったこと、虹ヶ原さんが意外なほど善戦したことでホッとした様子だ。

 道場を出ようとすると、

「甘味研究会はちょっと待って」

 と孫崎先生に呼び止められる。孫崎先生は他の生徒が道場から捌けるのを待ってから僕らに尋ねる。

「あのさ、今日のミムラと虹ヶ原さんの練習、事前に何か話でもあったの?もう一度挑戦したいとかなんとか」

 ミムラは「ううん」と首を振る。

「今日突然だよ。あたしもちょっとびっくりしたもん」

「そうー」

 孫崎先生は少し言い辛そうな顔で、

「ミムラ、今日手を抜いたりしてないよね?」

 ミムラは首を振る。

「前やったときと同じ。100%本気ってわけじゃないけど手は抜いてない。それは虹ヶ原さんも同じだと思う」

 つまり互いに武道の授業で許される範囲での本気で戦い、虹ヶ原さんが結構ミムラを追い詰めたということらしい。

「前回よりずっとやりにくかったよ。うーん、なんて言うの、研究されてるというか、対策されてるというか」

 孫崎先生が「ふぅん」と頷いて、

「とにかく武道練以外での手合わせはダメよ?」

 孫崎先生、初授業のことで懲りたのかとても慎重になっている。

 僕らは武道場から教室に移動しながらさっきのミムラと虹ヶ原さんの手合わせについてあれこれ意見交換する。

「玉香苑の決闘の時も思ったけど、虹ヶ原さんてやっぱり強いよね」

「うん、強いよ。鬼力に頼らない戦い方がちゃんとできるし。ほら、ちょっと鬼力の強い鬼人って技より鬼風って感じになるから。あたしらにはあぁいう方がやりやすいしね」

 ミムラの言う事は良く分かる。鬼人はどうしても鬼力で決めたがる。突き一つ、蹴り一つで十分決められるところでもドーンと鬼力を叩き込んで決めたがるところがある。ま、そこが鬼人の鬼人たる由縁だろうけど。

 鬼類の二人が鬼人に対して圧倒的に強いのは、この「鬼力ドーン」を簡単にいなしてしまえるからだけではない。武道でなく戦闘に長けた二人は、相手の戦い方を見切るのがとても上手いんだ。

 僕が最近孫崎先生を負かすことができるようになってきたのもそれと同じ。単に体を透明にして鬼風を透かしてしまうだけでなく、鬼人の戦い方が分かってきて、その裏をかけるようになってきたからだ。

 そういう意味では、虹ヶ原さんは逆に鬼類の戦い方が分かってきたということかなと思う。

「互いに何度も戦うとそうなるよね」

 ユウトがサラリと言う。

「互いに相手のことが分かってくると互いの攻撃が決まりにくくなる。虹ヶ原さんは実際に手合わせをしたのは一度だけだけど、ずっと僕たちを研究してたんじゃないかな。僕らがどう戦うかが見えてきたんだと思う」

「そうだね。よく考えて準備してきてる戦い方だったよ」

 ユウトもミムラもあまり勝負にこだわる様子を見せない。

「実力が伯仲してくるとやっぱり気になる?」

と聞いてみる。

「ううん、全然。だって何度も手合わせするから自分の事を研究されるんだし、何度も手合わせする相手は自分の身近にいる人、つまり味方だから」

「武道の授業は授業だからさ。本当の戦いじゃないもん」

「うん。本当の戦いだったら目的は相手を戦闘不能にすることだけど、授業は違うから。みんなで切磋琢磨して、競い合って、チームとして仲良く団結するのが目的だし」

 うーん、やっぱりユウトとミムラは僕なんかとはステージが違うというか、レペルがずっと上なんだなと思う。

 その日寮に帰るとトビーさんから、

「聞いたぞ、虹ヶ原さんをまた負かしたらしいな」

 寮生たちはもう武道場での一件を知っており、僕は手合わせの様を逐一説明する羽目になった。

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