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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第9章 鬼類、他校生と交流す
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ミムラVS虹ヶ原

 互いに一礼して構えるミムラと虹ヶ原さん。

「ちょっとシュンカ!止めなさいってば!」

 孫崎先生が僕の道着を送襟絞かと思うほどにグイグイ引っ張る。

「だ、大丈夫ですって、孫崎先生」

 僕は孫崎先生を落ち着かせようと大きく深呼吸して見せる。僕に合わせて孫崎先生がヒィハァと息を吸い込む。

「ほら、二人とも全然ピリピリしてないでしょ?」

「そんなこと言って何かあったらー あぁ、どうするのよシュンカっ!うぅ、お腹痛い」

 孫崎先生の心痛、腹痛を他所に、向かい合う二人。ユウトが二人に尋ねる。

「準備いいかな?じゃ、始めっ!」

 ユウトの拍手で組手が始まる。武道場内の全員が練習を中断して二人に視線を注いでいる。

 ミムラが羽根のように軽いステップを踏み始める。いつものミムラのスタイルだ。一方の虹ヶ原さんもいつも通り。両手を挙げの位置まで上げて左足を前に出す、右利きのオーソドックスな構え。床から数ミリほど浮いた踵と床をしっかり噛んだ爪先が、ミムラの動きに合わせて前後左右に動く。派手さはないが堅実にして王道。基本にして究極といった感じだ。

 虹ヶ原さん、始めてミムラと戦ったあの時と比べると、今日は少し様子が違う。無駄に動かないし自分から仕掛けてミムラを崩そうとしたりしない。

 ミムラも虹ヶ原さんの動きを見ているが、慌てて仕掛けることはない。いや、仕掛けられないのか。今日の虹ヶ原さん、ごく自然体でありながら隙がないというか捉えどころがない。

 先に仕掛けたのはミムラ。軽く下段に蹴りを入れるフェイントから素早くステップを踏んで手刀を振り下ろすーと見せて、これもフェイント。虹ヶ原さんは僅かに反応したものの崩れない。


 オオー


 声にならない声が道場内に満ちる。前回と違って、明らかに虹ヶ原さんが善戦しているからだ。

 孫崎先生は僕の背後でオロオロしつつも、

「あっ!上手い!」

とか、

「おうっ!そう来るかっ!」

とかブツブツ言いながら、時々僕の背や脇腹を小突く。

 まだ二人とも鬼力を使っていない。虹ヶ原さんからは鬼風の高まりは感じるものの、まだ鬼力を乗せた攻撃を出していない。ミムラも同じ。ミムラからは鬼風の微かなそよぎすら感じない。二人ともまだ小手調べの段階。本気を出すのはこれからだ。

「ハッ!」

 ミムラが気合と共に左の突きに乗せて白い雪風のような鬼風を放つ。虹ヶ原さんを直接狙わない。足元に叩きつけ、虹ヶ原さんを動かすことを狙った攻撃。

 が、虹ヶ原さん慌てない。虹が原さんも鬼力を体の中で撓めてミムラの鬼力を受ける。虹ヶ原さんは鬼類のように鬼力をやり過ごしたり透過させたりできないから受けるしかない。でも虹ヶ原さん鬼力は滅法強い。守りを固められたらそう簡単に崩せない。

 二人の試合は膠着状態になりつつある。虹ヶ原がじっくり構えて無駄に攻めず、ミムラの隙を狙うことで、どちらも攻め手を欠く状況だ。

 ミムラは少し距離を取って一旦呼吸を整えると、再び距離を詰め白銀の鬼風を放つーと見せかけて風を止める。虹が原さんがミムラの鬼力を弾こうと体内で高めた鬼力は肩透かしにあった格好で、虹ヶ原さんの鬼力のバランスが崩れる。

 ミムラはその隙を見逃さず「やっ!」と白銀の鬼力を右の掌底で虹ヶ原さんに入れる。もちろん鬼力も突きも本気ではないけど、虹ヶ原さんは大きくバランスを崩して床に崩れる。

「大丈夫?」

 ミムラの問いに笑顔で頷く虹ヶ原さん。起き上がると、

「もう一本お願いできる?」

 ミムラも笑って、

「もちろん」

 と返した。二人がまた向き合って構える。白金の皆んなが輪を作って二人を取り囲む。ユウトが「始めっ」と手を叩いた。

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