[Mission-078]
前回までのMission!
ようやく調子を取り戻した昴流の反撃が始まる。
互いに一歩も引かぬ激戦の末、戦いを制するのはどちらか!?
[Mission-078]
踏み出した一歩が砂を巻き上げ、大地を震動させる。
振るう腕が風を切り裂き、大気を震撼させる。
巻き上がった砂塵に機体からあふれ出した粒子が混ざり、それらが物かって不規則に稲光が起こる。
操縦席内で鳴動している音楽が、俺の機体を奮い立たせる。
機体はもう限界近いと言うのに、摩耗を感じさせない理想的なレスポンスで、操縦桿の動きに追従してくれる。ならばそれに応える様な戦いをしなければ、申し訳が立たない。
「Nobody was looking at that sky――♪」
機体を全力で稼働させ過ぎた所為か、それとも機体の損傷が激しくて漏れているのか、満タン近くあったS粒子残量が早くも尽き始めている。だが目の前の一撃一撃に集中しなければ、そもそも一瞬先すら無い。
飛び掛かると同時に繰り出される、爪による敵の渾身の一撃を、咄嗟に操縦桿を倒し、機体のバランスを崩しながら、地面を転がるように回避する。敵の爪が地面に突き刺さり、砕くと同時にこちらも地面を蹴り込み、敵の懐へと肉薄する。
〈たかが地球の戦士が!〉
こちらの剣を、敵は大地を砕いた衝撃で飛び上がる事で回避する。
〈この俺様を!〉
的な回避した動きのまま、ムーサルトの如く回転しこちらを吹き飛ばす。
〈容易く狩れると思うなよォォォ!!〉
そして着地と同時にこちらへと体当たりを敢行する。それに対して俺は、機体に纏わせておいたシートを敵の眼前に広げるように翻した。
〈くっ!?〉
敵はシートを前に突進を躊躇う。
そう、視覚情報をメインで戦うという事は相手の動きを細かく見て、一瞬の動きも見逃さないという事だ。しかしそれ故に、如何なる動作も目に入ってしまう。先程視界を奪われた経験から、敵は俺の手に持ったシートを警戒せざるを得なくなったわけだ。こうなれば、ダメージを与えられず防御にも使えないただのシートが、十分に牽制の武器として機能し出す。
「Nobody was looking at that sea――♪」
再び敵の前にシートを翻す、敵は警戒して距離をとる。その動作に合わせて俺は拳を突き出して攻撃を加える。刃を避け反撃しようとした敵に再びシートを翻る。
〈オノレぇぇぇ! 俺様をコケにしやがってぇぇぇ!!〉
敵が憤ってシートごと俺を惹き殺そうとつっかかって来る。そうなればむしろ思うつぼだ。闘牛士の如く、シートを眼前にカーテンの様に翻しとっさに横へと機体を退避させる。敵機がシートに突っ込み、俺を見失った所で背後から刃で攻撃を仕掛ける。
〈くそォォォ!〉
「I will finally reach the border sometime――♪」
よし、このまま一気に止めを! と思った所で妙な感覚に襲われた。
何だ、あと一歩で止めをさせそうだと言うのに、妙に体に抵抗を感じる。
このまま拳を振り下ろせば、敵を倒せるのに、曲の流れがそれを否定するのだ。そんな違和感に苛まれていると俺に抱き着いていた観言が急に声を発する。
「昴流、尻尾!」
咄嗟に機体を捻ると、まさに死角から敵の尻尾が、先端にS粒子の刃を展開してこちらに突き立たんと迫っている所だった。俺は機体に急制動を掛け、下から機体の操縦席を狙う一撃を紙一重で避けた。操縦席のすぐ手前の装甲が削られる音が響く。
「The beating of the soul plays existence proof――♪」
避けた直後に、機体のバランスを立て直し敵を見つめるが視線の先にもう敵の姿はなかった。一瞬の後に機体に衝撃が襲い掛かる。
モニター正面に暗い影が掛かる。
敵はこちらに奇襲を仕掛けると同時に、飛び上がり上から押し潰して来たのだ。正面の装甲を前足で抑え込まれる。
こうなると機体のサイズ差の関係で跳ねのける事が出来ない。
すぐさまに手に持った剣を突き出すが、刃は敵の尻尾の刃に弾かれ、彼方へと飛んで行く。そして敵機は俺の機体を蹴飛ばすように跳ね上げた。
ブースターを起動させようと操縦桿を弄るが、今までの無理が祟ったのか僅かな噴出で落下の衝撃を和らげる程度しか稼働しない。機体の両足も踏み付けられた衝撃で、ついに故障したらしく満足に動かない。そのまま機体は仰向けの状態で、最初にこいつと戦った森林地帯に落下した。
〈フハハハ……所詮地球の戦士などこの程度!〉
こちらよりも何倍も攻撃を加えていると言うのに、敵機に動きに支障をきたす様な損傷は見受けられない。なるほど流石は防御特化と言うだけはあると感心する。
敵は最後の一撃を加えようと、身体を屈め飛び上がった。
残りの粒子残量では剣を生成する事は出来ない。それに機体も損傷が激しく歩く事も飛翔する事も出来そうにない。片腕ももう完全に破損し動かなくなった。
残った腕で活路を見出そうと必死で伸ばすと、自律椀部挙動追従の指先に何か堅い感触が触れた。見やると手の先に砂に埋もれかけた何やら棒状のものが見える、これは――。
「It has begun to already work――♪」
飛び掛かって来る敵に向かって、シートを翻す。
〈見苦しい悪あがきだ!!〉
「The meaning that came here――♪」
敵機は構わず、シートごと俺の機体に爪を立てる。その衝撃で地面が揺れる。シートの下で機体を捻り何とかその一撃を躱した俺は、必死に手を伸ばしてソレを手に取った。
シート越しに、敵機は俺を抑え込む。俺の機体に次の一撃を避ける術は残されていない。勝ち誇ったような口調で、敵が問いかける。
〈さぁ何か言い残す事は?〉
「そうだな、やっぱり手前ぇ――」
言葉と同時に、手に持ったテイル・ランスを展開しシートの下から敵機の土手っ腹に突き上げた。
「――腹が隙だらけだぜ」
テイル・ランスの先端に最後の粒子を込めて刃が展開される。比較的脆い敵の腹部を切り裂き、内部を貫き、背中へと抜け出る。
〈GUOOOAAAAAAAAAA!!〉
敵機はスリットから強く光を発光させ、最後まで殺気を消さずこちらへと大口を開ける。しかし唐突にスリットの光は途切れ、力無く項垂れた。
俺は、テイル・ランスに貫かれた姿勢で停止した敵機を、地面に投げ捨てる。
そして、大きく深呼吸すると最後のフレーズを口ずさむ。
「I feel it with a whole body――♪」
それと同時にお気に入りの曲が終了した。
[アルカの手記-078]
「よし準備出来たな!」
「まーお菓子作りっつっても、フライドポテトっスけどね」
「それで、どうすれば良いか?」
「えーっと、先ずはじゃがいもの皮を剥くっスよ、そんでスライスして、油で揚げる、で塩で味付けして完成っスね」
「何だ簡単ではないか」
「じゃフライドポテトは姫様に任せるっスね、僕はこっちでクッキーでも作るっスよ」
「ふむ、これがじゃがいもという奴か、では皮を剥くのだな……む、全自動皮むき器が用意されていないぞ?」
「いやほとんど手順ないんスからそれくらい手動でやってくださいっスよ、じゃないと手作りじゃなくなるっスよ」
「む、これが皮むき器という奴か」
「まぁ皮むき器で怪我はしにくいっスけど、一応気を付けて。あとじゃがいものスライスは薄く切ってチップス状にするのも良いッスけど、ちょっと厚く切って食感を残すのも美味しいっスよ」
「ふむ、これ作り方を聞いて思ったのだが、じゃがいも以外にもチップスに出来るのではないか?」
「あ、良い事に気づいたっスね、ニンジンとか玉ねぎとかもスライスして揚げると、野菜チップスになって美味しくてヘルシーっスよ」
「ではそれらも切るとするか」
「あーちょっと、分厚すぎるっスね」
「こうか?」
「それじゃちょっと小さ過ぎるっスね、薄くスライスするんスよ、こう輪切りっスかね?」
「あーもう面倒臭い、全て細切れにしてはいかんのか!」
「もういっそ、それを小麦粉と水で溶いた衣に付けて掻き揚げにでもするっスかね?」
[続く]




