[Mission-072]
前回までのMission!
SE部隊による異星人への攻撃チームに選抜された昴流は格納庫で、準備を整える。
異星人の兵器に対して、圧倒的に不利な機体性能で何処まで食い下がれるか。
出撃の時が来る!
[Mission-072]
システムオールグリーン。射出口の解放を確認。エンジン始動。ブースター推力安定。
その瞬間俺の身体は機械の一部となる。
任務に準じて、いかなる相手をも打ち倒す。
主翼と推進機で追いかけまわし、60mmの銃弾で襲い掛かる。
無慈悲で無機質な空の狩人だ。
積み重ねた訓練を手足と指先に集約して、僅か600秒の曲芸を披露する。
戦う事に特化した感覚が、己に告げる。
ここは闇夜の狩猟場。
食うか食われるか、全ては己の腕次第。血も涙もないサバイバル。
未練も後悔も、歓喜も悲哀も、生も死も、全てを飲み込んで羽ばたく時だ。
「KRⅢ-F01(スパロー)、F1(フォックストロットワン)、出動!」
先に出動した五機を追いかけるように、機体が滑走路を駆ける。操縦席に軽微なGが掛かり、やがて浮き上がるような感覚と共に機体が地面を離れて行く。
飛び出した先は夜空だった。
三日月が嘲笑うかの様に宙に浮かぶ。
それに並ぶように高度を上げて、先に出撃した機体の編隊に加わる。直後に通信が入って来た。
〈未確認機が相手だからって恐れる必要は無い! とりあえずターゲットを補足したら、予定通りプランAで攻め込むぞ。予備隊の二人は作戦区域に入ったら高度を上げて見学していてくれ!〉
〈ビビッて操縦をミスらないようになひよっこ共!〉
〈見学だからって気を抜くなよ、流れ弾には気を付けろ!〉
〈流石に戦闘が始まったら面倒見てらんねぇ、後は此処で頑張れや!〉
各々でエールを飛ばした後に、推進機を吹かして俺とメイを置いて加速していった。直後にモニターにターゲーットマーカーが表示される。モニターの表示を拡大させると、獣型の機動兵器が海上を駆け抜けるようにして迫って来ていた。
〈相変わらず奇怪な姿だなこいつらは〉
横に並んで飛ぶメイが呟く。
「そうか? 動物とか好きそうだけどな?」
同じ狩る側としては気が合いそうだと思うんだが。
〈肉食型は食いでが無いから嫌いだ〉
そういう問題だろうか。
とりあえず戦場の邪魔にならないよう機体の高度を上げて、先輩達の戦いを見守る事にした。
SE隊員はアローヘッド編隊で果敢に敵機へと肉薄していく。そして戦闘のKRⅢ(隊長機)が主翼下部に懸架したミサイルを発射した。
異星人の機体に誘導兵器は効きづらく、無誘導兵器も簡単に避けられると言うのに何を無駄な事をと思った矢先、隊長機が機関砲を発砲し射出したミサイルを虚空で撃ち抜いた。その瞬間、ミサイル内に充填されていた煙が噴出し敵機の周りを白く染め上げる。煙はよく見れば無数の煌めく粒子が含まれており、煙の中は電波などが遮断されてKRのセンサーでも見通せなくなっている。なるほど電波欺瞞煙か。しかも対KR用に用いられる強力な奴だ。左右に展開した機体も続けざまにミサイルを発射し、敵機の周囲を煙で覆う。
こうなれば敵機は突如として周囲が煙で覆われ、センサーも満足に機能せずまさしく目を奪われた状態だ。流石に動きを止める敵に向けて今度は旋回しながら、SE隊員達は対KR用アサルトライフルや40mm機関砲を撃ちまくる。さらにはロケットランチャーも取りだし、煙に包まれた敵機に爆炎をお見舞いする。
何と容赦の無い、対テロ戦術としてもオーバーキルな火力ではあるが……果たして異星人の機動兵器相手にどこまで効果があるものか。
〈どうだやったか?〉
〈これを喰らって立ち上がるっつーなら、人類の作った物じゃねぇさ〉
〈ちょっと待てよ、チャフの所為でこっちのセンサーも効かないんだ!〉
〈まて、中から何か反応が……〉
SE隊員が注目する中、案の定と言うかやはりと言うか。煙を吹き散らし、機械的な翼を広げて異星人の機動兵器は無傷なまま姿を現した。そして翼を翻すと上昇し、SE隊員のKRへと襲い掛かる。
〈うおおおお!!〉
咄嗟に隊長機が機関砲で反撃を行う。しかし異星人の外装に40mm弾は容易く弾かれてしまい、隊長機に獅子型の敵の爪が食い込む。
派手な爆発は起きなかった。
それも当然だ、これはシミュレーターでも映画でもないのだから。異星人の機動兵器の爪に抉られたKRⅢは装甲が拉げ、無数の火花と共に虚空にて上下に絶ち切られた。力無く墜落していく様は、不謹慎ながら殺虫剤にやられた蚊を彷彿とさせた。
こうして人類史で初めての異星人、機星とKRの正式な対決は人類側のあっさりとした敗北で幕を閉じたのだった。
モニター端に表示されたパイロット生命維持の画面では、パイロットの生存が表記されていた。KRシリーズのコクピットは頑丈さが売りで、このくらいの高度ならば墜落しても大丈夫だろう。
〈A1(アルファワン)!? くそぉ!〉
〈仇を撃つぞ!〉
〈[フラカーン]隊の意地を見せてやる!〉
一瞬遅れて、他の隊員が敵機に銃口を向ける。
無数の銃弾が撃ち込まれるも、獅子型機はそれをものともせず、翼を翻して旋回する様に次々と隊員の機体に襲い掛かっていった。各機とも直撃は避けたものの、鋭い爪や牙に機体を大きく破損させ、後退を余儀なくさせられた。
〈どうする昴流? このまま見学を続けるか?〉
「見学って何を見りゃいいんだ」
通信越しにメイへと皮肉を漏らす。
元から人類の兵器が通用するとは思って居なかったが、実際の戦いでこうも圧倒的な差があるとは。これは一刻も早く何か理由を見つけて、この機から脱出しアルカ達と合流しないといけない。
獅子型機はゆっくりと滑空する様に海面に降り立つと、翼を畳んだ。そしてもうここに脅威はないとばかりに疾駆を再開させる。
機星が向かう先には俺達が出てきた基地があった。
〈こちらB1(ブラボーワン)、A1戦線離脱により作戦指揮を引き継ぐぞ! このままでは基地を襲撃される、もう一度プランAを決行する!〉
そう言って後方に控えていた機体が前に出て、主翼下に装備したミサイルを射出する。
左右の機体も続いてミサイルを発射し、敵を再び煙へと閉じ込める。
そこに、メイから通信が入った。
〈これはチャンスだ〉
「何?」
〈次にあの機体が出た時……私がこいつで狙い撃つ!〉
そう言ってメイ機は、プロペラントタンク上部に保持されたKR用狙撃銃に手をまわし、機体に装備させる。ブースターを最大限に噴出させ、煙の奥の敵機に狙いを定める。
〈この中ではこれが一番火力が出る、あの獲物は私が頂くぞ〉
「よせ……!」
俺の静止を聞かず、メイは敵機に距離を詰めていく。よほど集中しているのか俺の声はもう届いていないようだった。そしてどうやら緊張模しているらしい。いつものメイならば自分の腕に自信を持って距離に余裕を持たせているのだが、今回は明らかに近づき過ぎている。
嫌な予感がした。その瞬間俺は予感に従って全力でペダルを踏み込み機体を加速させる。
煙から敵機が飛び出す。翼を広げ、踊り出すその様はサーカスの曲芸にも似た優雅さを持つ。敵は軽く翼をはばたかせ上昇する、その先には丁度狙い撃とうとしていたメイの機体があった。
〈この距離なら……!〉
メイ機の狙撃銃が、120mm徹甲弾を射出する。弾丸は綺麗に敵の頭部へと飛翔し、そして着弾直前に不可思議な障壁に阻まれて弾けた。
これが敵機の防御機構か、正面からの攻撃はほぼ無効化される様だ。
直後に、獅子型機のスリットの光が、銃口を向けるメイ機を捉えた。
〈しまっ!?〉
KRのフレームすらも叩き折る爪が繰り出される。
「うおおおおおおおお!」
その間に、俺は自機を無理やりに潜り込ませる。手にしたKR用ダガーを敵機の爪にぶち当てる。それと同時にメイ機を蹴り飛ばし爪の範囲外へと押し出した。
直後に、敵の爪の鋭さに押し負けてダガーが圧し折れ、機体の装甲に食い込んだ。何とか回避行動をとった物の、コクピット直撃を避けるが精一杯で機体の頭部を含めた上半身のほとんどが拉げ捻じ切られた。
操縦席と動力炉、そしてメインブースターは何とか無事だった。しかし頭部などのセンサー類や主翼等が根こそぎ破壊されては、飛ぶ事すらままならない。
海面が迫ってくる中、俺はコクピットで叫んだ。
「アルカぁぁぁ!」
その瞬間、俺の身体はコクピット内から消え失せた。
[アルカの手記-072]
「おお、見よフリスよ何だこれは!?」
「なんスか、露商で何か見つけたようっスけど」
「何でも大地の精霊とか何とか、こんな者が居るとは地球は計り知れんな!」
「ああ民芸品の仮面っスか、こういうの嵩張るんであんまり買わないで貰いたいんスけど、っていうかもっと実用品を探そうっスよ」
「む、見よ、あっちの壺だが、妙に心惹かれるぞ!」
「ああちょっと、そんな身の丈もある様な壺何処に置くンスか! ってあーもう聞いてない、姫様って一般の人が見向きもしないようなガラクタを集める趣味があるんすかねー」
「おおーい、見てみろ! 祈りの像だと! これは買わずにはおれんな!」
「だからー、インテリアにしてももうちょっとエレガントな奴を―、そんな民芸品で埋め尽したらファルアタート内が訳の分からない原住民の占有地みたいになるじゃないっスか!」
「おおなんと! 神に祈りを捧げる為の祭壇だと! これは是非とも必要ではないかー!」
「……当人がポンコツだから惹かれ合うんスかねー」
[続く]




