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[Mission-071]

前回までのMission!


 南の島でのバカンスは、異星人の襲撃を受けて一変した。

 未曽有の一大事に大混乱となるSE本部で、Cクラス一同は自分達がSE部隊と一緒に出撃するという事を知らされるのであった。

[Mission-071]



 身体は1メートル四方の箱の中。

 手に握る操縦桿とペダルで、神経を機体と繋げる。

 もはや身体の延長線上、俺の乗るKRⅢ-F01(スパロー)は俺と一心同体と言っても過言では無い。

 ICエンジンの脈動を体に感じながら、推進剤が機体に廻るのを耳に聞く。

 実機と言う存在が、細部まで俺に入り込んでいくのを感じた。

〈我が戦士(エイン)の事情は理解した。確かに地球の民の技術が何処まで機星に通用するのかは興味がある〉

「上手く不時着したらすぐにそっちに転送してくれ、機星の出撃準備は済ませておいてくれよ」

〈分かっている、では作戦の成功を祈っているぞ!〉

 打ち合わせを終えて携帯端末を切ると、外部通信が入っているのに気付いた。流石にアルカとのやり取りを外部に聞かれる訳にはいかないので通信をOFFにしておいたのだ。

「はいはいこちらパイロット昴流……」

〈ちょっとっ! あんた状況分かってる!? 時間が無いのよ? 細かくやり取りとかしなきゃいけないってのに外部通信切って何やってたのよ!〉

 コクピットに残響が残る様な声量で、観言が文句を言ってくる。

「そりゃ……出発前の精神統一? に決まってるだろ、何せ実戦なんだからさ」

〈そうかしら? 誰かに密かに連絡でもとってたんじゃないのぉ?〉

 むぅ流石観言、何気に鋭い。

〈ハッハァ、通信をOFFにしたら何処とも連絡は取れないじゃないか、それに今は通信異常が起きてて携帯端末は繋がらないよ?〉

 芦屋が俺の証言を肯定してくれる。悪いが俺の携帯端末は異星人の超技術による魔改造を受けて、極一部に限り何処でも通信可能となっている事を彼らは知らない。

〈それもそうよね、ってそんな事してる場合じゃなくて! で、稼働の反応性はどう?〉

「ああいい感じだ、しかしちと関節周りが重いかな」

〈ハッハァそれは仕方ないねぇ、流石にいつも通りの安全性度外視仕様じゃ出撃許可が下りないよ〉

〈反応の悪さはこっちでサポートするわ、今回全体のナビゲーターはしなくていいから余裕あるし〉

「これで高周波ブレードがあれば文句は無いんだけどな」

 一応パーツ倉庫を探してもらっては見たが、いつも愛用しているKR用のロングブレードはここには置いていなかった。

〈そもそも存在自体が結構レアな装備なんだよね、とりあえず何とか見つけたダガーで我慢するしかないねぇ。だいたい今回は見学なんだから、近接戦闘は想定しなくてもいいんじゃないかい?〉

「そこは気分の問題だ、戦場に丸腰で出る兵士が居るか」

 所謂お守り代わりってやつだな。

〈意外に厄介な性癖だねぇ、それでもあちらよりはマシだけど〉

 芦屋の言うあちらとはもう一人のパイロット、メイの事だろう。

 現在メイのチームは、倉庫から引っ張り出して来たKR用120mm徹甲弾狙撃砲を装備して何とか飛翔出来る用にと機体の軽量化とブースターの出力強化に悪戦苦闘している所だ。機体の稼働時間確保に外付けのプロペラントタンクまで装備すると、もう外見だけでも三倍は肥大化している。

 アレに比べたら俺の我がままなんて可愛いもんだと思うね。

「あんなんで飛べるのか?」

〈仕様上は問題無いはずよ、むしろ苦労してるのは射撃時の慣性相殺よね〉

 確かにあんな機体で砲弾なんか撃ったら機体の方が吹っ飛びかねない。そもそもKRⅢは航空戦闘機の発展系で、機関砲等で細かくダメージを与えていく物だ。あんな一撃必殺の大物を運用する様には設計されていない。それでも恐らくメイなら飛ばすのだろう。あのクラスメイトがこの程度で飛べなくなるなら、そもそもパイロットに指名されたりはしないはずだ。

〈あっと、今回一緒に行動する第一部隊、機動高速空兵[フラカーン]隊からパイロットに通信が入ってるわよ〉

 ほう、正規SEの隊員がこんな出撃間近に見学の専科生に何の用だろうか。

 回された通信回線に応答してみる。

「はいよこちらF1(フォックストロットワン)」

〈……E1(エコーワン)、何か用か?〉

 俺に続いて、メイも不愛想に返事をする。

〈緊張しているのかな学生たち! 声が小さいぞ?〉

 うわ暑苦しい、苦手なノリだ。

〈私はA1(アルファワン)、このチームのリーダーだ! 今回君達も私の指揮下に入って貰うぞ!〉

〈俺はB1(ブラボーワン)だ、出しゃばらずにちゃんと後ろに控えていろよ!〉

〈それで俺はC1(チャーリーワン)だ、ま、緊張せずにね〉

〈こちらはD1(デルタワン)、しっかしそこのお嬢さんでっかいな、いくつだい?〉

 唐突な問いかけに、メイは流石に答えに詰まった様だ。

〈……それは機体重量か、それとも私の年齢か身長か?〉

〈そりゃ勿論胸のサイズさ!〉

〈おいおい学生相手にセクハラか!〉

〈悪いな、こっちじゃ女性隊員に出合い頭のセクハラは挨拶みたいなものでね〉

〈いや、別に気にはしない、Dだ〉

 言うんかい。

〈ハハハ! いいねぇお嬢ちゃん出世するよ!〉

〈それに比べてもう一人の方はパッとしないな、少年いくつだい?〉

 何のサイズを答えりゃいいんだよ!

〈ノリ悪ぃな少年! そんなんじゃ出世できないぞ!〉

 大きなお世話だ。

〈まぁそー言うわけだから、戦闘は俺達に任せて君達はその雄姿をしっかりと目に焼き付けとけばいいさ!〉

 とりあえず馬鹿らしくなるほどの世間話だった。通信が切れた事を確認して、思わず溜息を吐く。

 俺の思い違いかもしれないが、SEの正規隊員と言うのは地球でもトップクラスのエリートだ。それもKRⅢのパイロットともなれば、誰もが憧れる英雄である。はず、何だけどなぁ。

「自信満々なのか、それともある意味で馬鹿なのか……」

〈両方でしょ、映画とかに出てきそうじゃない? 余裕がある大人ってちょっとカッコいいかも!〉

 観言は妙にテンション高めだな。そんなに正規隊員で収入が安定してて、その上エリートで結構イケメンでマッチョなのがいいのか。趣味悪ぃな。

〈っとー、システム改良したから読み込んで!〉

〈ハッハ―、こっちも準備OKだ!〉

「じゃ同時に組み込むか」

 コクピットコンソールからオートメンテナンスを起動させる。すると機体周辺の床や壁が展開し、四分割されたリング状の機器がせり出し機体を囲む。リングが機体を囲むと同時に内側から無数の作業アームが飛び出して、機体の外装やフレームを分解していく。そして床から新たなリングが現れ機体を囲むと、芦屋が選択肢し調整したフレームと外装が作業アームによって機体に取り付けられていく。

 コクピット内では、観言の調整したシステムが操縦系統内を蹂躙していく。不用なシステムや必要なシステムを次々と破壊し、俺だけに沿った新たなシステムへと書き換えられていく。物の五分と経たずに、このKRⅢは俺専用機と言っても過言では無い仕様へと姿を変えた。

〈じゃー出撃準備エリアへの移動申請しとくから〉

〈ハッハ―推進剤の充填と、機体の稼働チェックはしておくよ〉

 機体の調整が終わると、最後に軽くカラーの塗り替えが行われた。

「……何の皮肉だよ」

 俺の乗るKRⅢは、黒く塗られていた。

 あの機体を彷彿とさせる黒だ。

〈あら、あんたには似合うと思うけど? 星空みたいで〉

 観言の言葉に改めて色を見直すと、黒く見えた機体は実際には蒼と黒のグラデーションで塗られていて、宇宙の如く雄大な色合いを見せていた。まるで大気と虚空の境目の様だ。確かに俺に似合うかもしれない。

「じゃこの色に負けない働きをして来るかな」

 俺はコンソールのシステムチェックが完了したのを確認して、セットされた携帯端末から落としたばかりの新曲を再生する。心にズンと来る重低音に、気持ちを委ねていると。

〈ちょっと! マジの任務中くらい静かに出来ない訳!?〉

 いつもの様に観言が文句を言ってくる。

「いやいや観言さん、こういう時こそ普段通りの方が実力を発揮できるというモノですよ」

〈ともかく恥ずかしいから止めなさい!〉

「いや一回聞いてみなって、感動するから!」

〈あ、ちょっと! コクピットの通信回線勝手に使って私の端末に変なモン送らないでよ!?〉

 俺のお気に入り(たましい)を酷い言い様だな。

 戦いが終わったらじっくりと話し合う必要がありそうだ。




[アルカの手記-071]


「ふむ、アレだな」

「おやどうかしたっスか姫様?」

「ばっかんすちょっと飽きたな」

「えええ、何を急に!?」

「いやだってな? そもそもこの南国の島というロケーションが普段とあまり変わり映えしないし、お勧めの料理もあらかた食べたし、アウトドアスポーツは何か面倒臭いし、買い物もこれと言って欲しい物無いし」

「はぁ……まぁ日常がほとんど休日な姫様にはあまり刺激的では無かったかもしれないっスね、でもまだまだっスよ!」

「ほうこれ以上我の心を揺さぶる物がここに在るとは思えんが……?」

「我々は今の所、パンフに乗っている事しかやって無いっス。つまり他人に言われたことをしているだけ、受動的に楽しんでいるに過ぎないっスよ。ここからは自分で色々と見つけてみるッス」

「ほう、なるほど。確かに他人に言われた事をやって見るのと、自分で面白そうなことを見つけるのでは楽しみ方が変わるかもしれんな」

「って事でここからはパンフを見ないで、自分達で色々と決めて遊ぶっスよ!」

「なるほどそれは面白そうだ、さてでは部屋で寝転がって菓子を貪りながら漫画やゲームをする事に匹敵する楽しみを見つけようではないか!」

「それは何か方向性の違う楽しみっスけど……」



[続く]

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