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[Mission-068]

前回までのMission!


 鬼教官からの抜き打ち海中実機任務を無事に終えたCクラス一同。

 ようやく怒涛の訓練が終わりを告げつ。日も暮れ疲れ果て、あとは寝るだけといった所なのだが、誰かが「キャンプファイヤーだ!」と叫ぶのであった。

 昴流達のバカンスはまだまだ終わらない!

[Mission-068]



 キャンプファイヤーには色々と諸説があるが、この辺の先住民の行う呪術的な儀式が起源ではないかと言われている。その所為もあってかどうかはさておいて、申請をしてみたら意外にあっさりと許可が下りてしまった。そこで俺達男子生徒は急遽砂浜に木材を組み上げると言う誰得な労働に従事する事となったのである。

 この課外学習を通じて分かった事だが、うちのクラスは何かと騒ぐのが好きの様だ。丸太を嬉々として組み上げている様子を見ると、そう思えて仕方ない。

 フレックスや六郎が元気に木材を組み上げる中、俺と芦屋、ジェスティは辛うじて立っていると言った様子だった。エンジニア勢はエンジニア勢で別件でSE隊員たちに色々と絞られたらしい。

「おーい、バーベキューの準備これで良いか?」

 声を掛けてきたのは委員長だ。足を負傷しているのでキャンプファイヤーの組み上げには参加出来ず、その横でバーベキューセットを組み立てている。ちなみにこれも言い出しっぺはフレックスである。

「お待たせ―食材買って来たよー!」

 ここで買い出しに出ていた女子達が帰ってきた。

 いつの間にか女子達は過ごしやすい南国の気候に合わせた私服姿に着替えている。

 観言は丈のやや短い白いワンピース姿という清楚系と元気系の中間を攻めるようなバカンススタイルで、委員長の元に買って来た肉や野菜を置く。

「もっちろんお菓子も買って来ましたですよー♪」

 シルビアはスラックス系の丈の短いパンツに、[STEAM PUNK]とか書かれたシャツに身を包む。両手いっぱいにお菓子類の入った袋を、委員長が組み立てたテーブルに置いた。

「飲み物も用意しましてよ、正直言えばカクテルなど頂きたいのですけれど……」

 フリルの付いたチューブトップとスカートをエレガンスに着こなし溜息を吐くのはカレンだ。彼女もテーブルに飲み物の入った袋を置いた。

「……蚊取り線香も用意出来てる」

 そう呟いて、フード付きのパーカーに短パン姿の百川が、買って来た蚊取り線香に火を付け始める。蚊取り線香の毒性分は昆虫や甲殻類には効果があるが、哺乳類や鳥類には無害と言った優秀な代物で、原始的ながらこういった除虫対策の無い屋外では今でも重宝されている。

「必要そうな物はとりあえず買って来ましたが、他に欲しい物はありますか?」

 葵はふわっとした長袖のシャツにロングスカート姿で、委員長に問いかける。

「まぁこれだけ揃えば何とかなるだろう。そろそろ火を入れるか、おい薪をちょっと用意してくれ」

「そんな、足を怪我しているのに空鷹さんがやらなくても……」

 自ら率先して動こうとする委員長を心配して、葵が近寄る。現在委員長は足を負傷しており、高性能な歩行補助ギブスを装着しているので歩行等に問題は無いが、激しい運動は大事をとって制限されている状態であった。

「いや訓練に参加できなくて体力が余っていた所だ、むしろ身体を動かさないと調子が悪いくらいでな」

「そうですか、あまり無理はなさらないでくださいね」

「分かってるさ……おいフレックス! 木を組み過ぎだ!」

「ハァッ分かってねぇな! こういうのはデカいほど派手で楽しいンだよ!」

「ほどほどにしないと許可取り消されるぞ」

「ッチ、六郎―2,3段降ろすぜー」

「ああ了解した」

 今度は組み上げた木材を降ろし始める。その間に委員長は、準備したキャンプセットに火を熾し始める。薪に火が灯ると同時に。

「にくにくにくにく!」

「あらあら、野菜も食べないと栄養が偏りますよ?」

「……野菜は嫌い」

「……むしろ壮絶な遭難から帰還した直後くらい、バランスを気にせず好きな物を食べたいですわ!」

 女性陣が火に殺到し、思い思いの食材を焼き始める。途端に当たりに香ばしい匂いが立ち込め始めた。

 そこに。

「む、私の分を置くスペースが無いな」

 ふらりと顔を出したメイが呟いた。

「あら、皆さんもうちょっと網を空けましょう、あんまりぎゅうぎゅうだと火の通りも悪いですよ」

「いや、いいどの道その大きさでは収まりきらないだろうからな」

 そう言ってメイは頭上に掲げた巨大な甲殻類の殻を地面に降ろす。

 ってかそれ今朝の巨大ヤシガニじゃねぇか!

「折角あっちに巨大な火が用意してあるんだ、そっちで焼こう」

 そう言って巨大ヤシガニを再び掲げて、キャンプファイヤーへと進む。

「うおこっち来ンじゃねぇよ! 神聖な火に何しやがる!?」

「何を言うかこの大きさだぞ、このくらいの火で燻らなければ中まで火が通らんぞ」

 メイはこの怪物ヤシガニをやはり食おうとしているらしい。腹を壊すだけで済めばいいが。

 ある程度バーベキューが進んだ所で、満を持してキャンプファイヤーに火が灯った。

 ここはSE隊員の訓練地も兼ねているので、砂浜周辺は夕暮れには照明が灯る。その為キャンプファイヤーの魅力を大きく損なっている。それなのに皆空高くまで火の粉を上げるキャンプファイヤーに大盛り上がりだ。あと、何気に巨大ヤシガニの身が焼けて良い匂いを醸し出しているのに腹が立つ。

 ジャングルでは明かりの確保や猛獣を避ける為に必要な火ではあった。しかし今ここはSEの駐屯地であり、フェンスに囲まれたこの敷地内は安全が保障されている。それなのに何故こうも人は火を熾したがるのか不思議でしょうがない。火は人類の文明の証と言うらしい。しかし軌道エレベーターを使って、大空に瞬く星々にまで手を掛けようとする人類が今さら火を崇拝すると言うのもどうなんだろうか。

 もしかしたら理屈ではないのかもしれない。

 この原始的な根本的な、そして圧倒的で魅惑的な、闇夜を照らす熱を纏った光が人類にはまだ必要なのかもしれない。これから光の届かない宇宙へと出向いて行こうとするからこそ。

 もしくは、これからの先が一寸先も見え無い闇だと感じているからこそか。

 煌々とした火はやがて緩やかに勢いを衰えさせていった。

 用意された肉や野菜を食べきり、締めの焼きそばも皆の腹に収まった。さらにはメイが獲ってきた魚介類も骨や殻をテーブルに残すのみ。

 流石にお腹いっぱいだ。

「あーん、これ来週体重ヤバいかも!」

「遭難と合わせてプラマイゼロですよ」

「どうせ明日も訓練ですのよ、こういう時くらい良いじゃありませんの」

 女性陣はその上テーブルに買って来たお菓子類を広げて談笑している。

 気が付けば時刻は深夜に近くなっていた。砂浜を照らす照明も落とされ、洸に燻るキャンプファイヤーの明かりが薄ぼんやりと俺達を照らす。

 そろそろ解散かと思った所に、何やら色々と荷物を抱えたフレックスが姿を現した。

「っしゃ! 花火やンぜ!」

 そう言って様々な花火を地面に広げた。

「わーなんか久しぶり!」

「今時花火なんてよく見つけてきたな?」

「祭りで使うらしい、この辺では結構売ってたぞ」

「ここは花火とかしていい場所か?」

「アアン、訓練で実弾とか撃ってンだからいいンじゃねぇの?」

 そういう問題でもないと思うが。

 打ち上げるタイプの花火は配給祭などの式典の際に使われることがある。しかしこういった手持ち花火は最近ではめっきりと姿を消し、俺も手に取るのは久しぶりだった。

 何でも模擬戦などで敵弾の着弾演出等に使われるらしく、この辺では結構販売されているようだ。

 俺にとって火薬とは戦いの道具だ。

 人類の大半の歴史でも火薬の役割は兵器利用であった。本来の工業利用よりも、如何に高威力で相手を倒すかが研究された歴史の方が長いほどだ。

 その火薬が、祭りの道具とは。

 いずれはKRも、この様に兵器以外の運用がされるようになるんだろうか。

 果たしてその時、俺は満足にKRを動かす事が出来るだろうか?

 ……いや。戦う事は人類の本能だ。結局未だにKR用の火薬兵器を人類は作り続けている。こんな思考に意味なんかはない。戦う事に理由なんか無い。ましてKRの居場所は戦場の他はないのだ。

 まったく平和を心から望んでいながら、平和に成ったらで不安を覚えているんだかな。

 この矛盾にもやはり理由なんかはない。全ては本能の赴くまま、成すがまま、気ままに生きて行くだけだ。

 クラスメイトは童心に帰って花火を撒き散らして騒いでいた。

 俺も混ざろうかと踏み出したところで不意の気配に振り返った。そこに今まで姿を見せなかったアルカが立っていた。

「どうしたんだ突然、何だお前も花火やるか?」

 俺の問いにアルカは首を振った。

「我が戦士(エイン)よ、またお前の力を借りる必要がある」

「は、え、いきなり何を……!?」

 戸惑う俺に、アルカは宣言する。

「新たな機星が姿を現した、再び戦いの時だぞ! 全てはスフィアの元へ(オルシャルドリターントゥスフィア)!!」

 そして彼女の言葉が嘘でない事を証明するかの様に、砂浜に警報が鳴り響いた。



[アルカの手記-068]


「さぁバカンスも夜に突入だ!」

「夜の部っスね! 何処と無くアダルティーな響きがするッス!」

「して、バカンスの夜とは何をするモノか?」

「そうっスね、夜は夜でカジノとか、バーとかダンスホールとかナイトプールとか色々と楽しむ場所があるっスよ」

「お勧めはどれだ?」

「姫様なら格式高く夜公会とかお似合いっスけど、こっちの風習に合わせるなら現地の音楽を鑑賞しつつ食事会とか、あ、カジノもいいっスね、姫様割と勝負運高そうですし。僕的には昼間は人目が多すぎて避けたけどナイトプールでひと泳ぎも捨てがたいっスね」

「絞り切れておらんぞ」

「むしろ全部やっちゃうっスか? 折角のバカンスですし! ここは朝まで騒ぎましょうっス!」

「……なんかやけにテンション高いなお前」

「そりゃ僕は潜入任務とかで夜に活躍する事が多いっスからね、夜型なんスよ!」

「そう言えばトカゲは夜行性か……」



[続く]

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