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[Mission-067]

前回までのMission!


 課せられた訓練を終えれば自由時間だと息巻いたCクラスの前に、またも教官が立ちはだかる。

 今度はKRの実機を使った海中任務のお手伝い。果たして昴流達はバカンスを堪能する事が出来るのか!

[Mission-067]



 全天周囲モニターが映し出す景色は何処までも蒼が広がっていた。

 上から下に行くにつれて濃厚になり、眼下はもはや深い闇となっている。

 南海と言うと、珊瑚礁の広がる熱帯魚が舞う海を想像するかもしれないが、そういうのは割と浅い近海の光景である。KRが動き回れる様な深い外洋では、ただひたすらに広い蒼一色の世界であり、そこに生き物の気配はほとんどない。

 ある程度まで潜って上を見ると、KR四機を余裕で格納出来る大型輸送艦がまるで木の葉のように小さく海面に映った。それを雄大な光景と思うか、人類のちっぽけさに慄くかは人それぞれだろう。

 下を見ると底の見えない闇が広がっていた、そしてモニター画面に表示されたマーカーはさらに下へと俺達を誘導する。既に周囲は完全に暗闇で可視光は届かなくなっている。モニターの光景はセンサーが周囲をスキャンして処理した映像に切り替わった。

 機体を潜らせ続けると、ぼんやりとこれからサルベージしようとしている物体が浮かび上がってきた。

 それは巨大な船だった。

 全長400mはありそうな装甲艦である。甲板各所に砲塔が取り付けられ、レーダーやカタパルトを搭載した時代遅れな戦艦である事が窺える。

〈また随分と古い型だな……〉

〈なんだ軍艦か……お宝は期待出来そうに無い〉

〈軌道エレベーター紛争の時の艦だなこりゃ……〉

「今さらこんな旧型艦なんて引きあげてどうするんだかな、ヤ○ト作るんじゃあるまいし」

 まぁその辺は研究者の事情が色々とあるんだろう。飛行空母や宇宙船が作られている現在だからこそ、この手の海上を移動する船を改めて研究する意味があるのかもしれない。下手をすると今の火星は逆に船が作れないらしいからな。

 俺達の乗っていた大陸間輸送艦[ウォーターストライダー]ですら地球では骨董品扱いだ。木星の衛星をテラフォーミングしたら一面が海となり、帆船が造れず苦労していると言う噂があるくらいだ。

〈指揮艦032-AFSE0245より任務の詳細が届きました。パイロット各員に置くります〉

 観言の音声が響き、モニターの端に任務の詳細が表示される。

 それによると、現在は沈没した戦艦を引き上げる際の衝撃で崩壊しない様に、格子状の檻で固定している様である。詳細任務をモニターに反映させると、戦艦の周りをSE隊員の操るKRⅡが忙しなく動き、棒状の固定具を填め込んでいるのが判る。

〈訓練生諸君! 試運転は済んだかい? ならそろそろ手伝ってくれ。送ったデータの通り固定具を組み込む簡単な仕事だよ、喧嘩せず仲良く取り組んでくれ!〉

 SE隊員から気さくな指示が飛んでくる。

 簡単に言ってはくれるが、慣れない機体操作に加えて、水中と言う初めてに近い状況、その上で機材の組み立てと言う結構な難易度の作業である。これは気合を入れないと足手まといになりかねない。

 水中でのKR操作は人通り目を通してあるので、後はこの緩慢な動作に慣れるだけだ。後は機体のエネルギーに加えて酸素残量を気にする必要があるが、概ねKRの操縦という事には変わりない。

「ならば俺が臆する理由はないな!」

 操縦桿を握り、機体に体の感覚を馴染ませる。いつも感じている機体の外気が風では無く水に変わっただけだ。機体の鈍重差は水の抵抗、上手く流れを掴めば緩和される。気持ちを陸地から水中へ、歩くのでは無く泳ぐような感覚に切り替える。機体は体の延長線上、センサーやカメラアイに神経を繋ぐ。スクリューや方向舵を手足の様に動かして、俺は一匹の魚となる。

〈昴流はもう使いこなしたのか!〉

〈相変わらず[箱入り貴族(ノーブル)]は機体の順応が速い!〉

〈いや無駄な動きが多いだけじゃねぇか? オイ泳いでねぇで仕事しろや!〉

 分かってるよ。棒っ切れ填め込みゃいいんだろ。

〈ちょっと昴流! 設置場所ずれてるわよ!〉

〈まったくこれだから男は駄目ですわね〉

〈……下手くそ〉

 くっそ、やっぱり水中だと思ったようには動かせない。っていうかナビゲーター達言い過ぎじゃね?

 自律椀部挙動追従(ハンドモーショントレーサー)で棒状の固定器具を掴み、モニターの指示に合わせて組み上げる。椀部の挙動は問題無いのだが、機体の制動が難しいのだ。ちょっとしたスクリューの角度の違いや、他の機体の起こした波に煽られて機体の位置がすぐにずれる。位置調整するにもスクリューでは細かい調整が出来ず、結局大きく旋回するしか無く煩わしい。

〈オラ手前等作業が遅れてっぞ、そんなんじゃ日が暮れても海の底だぞ!〉

 教官が追い打ちを掛ける様に、尻を叩いてくる。

 普通こう言った細かい作業を行う場合、機体に水中制御用バランサーが組み込まれているのだが、何処を探しても見つからない。恐らく教官が事前に抜いておいたのだろう、従って今回は全部手作業だ。

〈教官! 流石にシステムサポート無しでは夜までに終わらせるのは……!〉

〈情けねぇなぁ、俺の頃はそんな便利なシステムなんざ無かったぜ〉

 それは絶対嘘だ。少なくとも十年前にはKRⅡのサポートシステムは出来上がって立って授業でしっかりと習ったぞ。

〈昔はなくても今はあるんだから使えばいいンじゃね!〉

〈むしろ、これだとKRⅡよりも作業用潜水艇の方がはるかに扱いやすいぞ!〉

 KRⅡは地上運用を基本とした機体である。水中用装備という事で外装などを流線型にはしているが、こういった細かい作業の場合は明らかに作業用の水中艇の方が安定性は高い。サポートシステム無しでやるなら、いっそ潜水服でパワーアーム扱った方が手っ取り早いのである。

〈ほら文句言う前に手ぇ動かせや!〉

 手はひっきりなしに動かしてるんだよ、位置が勝手にずれるだけで!

 結局、沈没船を格子状に覆うのに八時間を要した。

〈諸君のおかげで、何とか次のフェイズに進めるよ〉

 SE隊員の人が労ってくれるが、本来ならば今日中に次のフェイズに進む予定だったので、随分と時間を押してしまった様だ。機体の調子に悪意があるとはいえ、それを乗り越えて貢献できないのはひとえに腕が未熟だからと認めざるを得ない。

〈明日は軽く船体を持ち上げて、下に合金繊維で編み込んだシートを広げる、そしてシートごと船体を持ち上げる予定だ〉

 そう言えば、片方の艦の甲板に、巨大なシートが折り畳まれてあった。合金製のシートは、軌道ステーション付近でスペースデブリを回収する為に使われている物の様だ。非常に強靭に編み込まれ、成層圏から墜落する機体を包み込んでも破れないとか。

 船をシートで包み込んで、輸送艦で引き上げる予定のだろう。今日の作業はシートで包んで引き上げる際に、船が圧し潰されない為の補強だったのだろう。

 とにかく、ドっと疲れた。

 浮上の指示が出され、KRⅡを輸送艦に戻し、再びモーターボートに乗せられ元の砂浜に戻される頃には、既に日は沈み始めていた。

 一応今日の訓練はこれで終了し、俺達は自由時間という事になった。

 だがしかし慣れない作業に、パイロット以外のクラスメイトも疲れ切っていた。誰もが歩くのも億劫そうで、今にも倒れ込みそうに砂浜をトボトボと歩いている。これでは自由時間を楽しむ余裕などありはしないだろう。

「っしゃー! キャンプファイヤーやろうぜ!」

 訂正、一部の生徒を除いて。





[アルカの手記-067]


「さて次は買い物だな!」

「そうっスね、むしろ女子としてはこっちがメインと言っても過言ではないかと!」

「しかし買い物だろう? 普段している事ではないか?」

「分かって無いっスね姫様! こういうリゾート地の店っていうのは、基本的に他所では手に入らない物ばかり売られているんスよ」

「ほう、置き物にキーホルダー、お香にペナント……あまり実用的でないものが多いな」

「それこそ分かって無いっスよ、こういう時こそ無駄な物を買うんスよ、そして何でこんなの買ったんだろうって後悔しつつ思い出に残していくのが醍醐味なんスよ」

「ほう面白そうだ、どれ我もやって見るか。ではこのキーホルダーはスミスのお土産にしよう」

「ナビゲーターサーヴァントにキーホルダーって物凄く猫に小判っスけど」

「そして我が戦士(エイン)にはこの鮭を咥えた獅子の置物を!」

「姫様の戦士(エイン)ここに来てますけどね」

「なに? 一緒に来ている者にはお土産は送らないと言うのか!?」

「まぁ一般的にはっスけど」

「ならば……スタッフ一同で来ている我は一体誰にお土産を買えばいいと言うのだ!?」

「えー……自分に?」



[続く]

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