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[Mission-066]

前回までのMission!


 さぁバカンスだと息巻いた昴流達であったが、その目論見は立ちはだかる松田教官に阻まれる。

 教官の指示で、仕方なく訓練を強要させられるCクラス一同は果して、バカンスを堪能する事が出来るのだろうか?

[Mission-066]



 島の外洋に、二隻の巨大な船が停泊している。

 この大陸間輸送艦[ウォーターストライダー]は、KR関連の資材や時に本体などを海路で運送する為の大型艦である。SEの駐屯地には航空機の離着陸に対応していない箇所もあるので、そういった場所への資材を輸送や、海洋上でKRの運用を行う際に、移動拠点としての役割も担うのである。

 アリッサが通信で呼び出した[アームストロング]君が巨大ヤシガニを砂地に沈め、俺達が砂浜の往復を終えて、水泳に移行しようとした頃合いに、松田教官は帰ってきた。

 そして何処からともなくモーターボートを呼び寄せると、俺達を連行するように乗せた。そうして俺達は海洋上に浮かぶこの大型輸送艦へと連れ込まれたのだ。

 輸送艦の甲板には、水中運用装備のKRⅡがずらりと並んでいた。

 水中運用装備はKRⅡ-[M00b(フィッシュ)]と呼ばれ、気密性、耐圧性に優れた装甲と、スクリューによって水中での圧倒的高機動を誇る。ただし潜水深度には限りがある為、(KR系統の基本的な欠点ともいえるが)専用の潜水艦に水中運用の点では劣る。

 輸送艦の甲板には水中運用装備のKRⅡが四機ずつ、合計八機が用意されていた。松田教官はボートを一隻の輸送艦に接舷させると、甲板上のSE隊員に手を振った。

「今回は忙しい所に無理を言って悪かったなぁ」

 乗船用の収納式タラップを上がると、教官は申し訳なさそうに隊員に声を掛ける。

「いえこちらこそ! 上と連絡が取れなくて困っていた所でしたので。あの噂の松田さんと一緒に任務に当たれるなんて光栄です!」

 SE隊員の人は笑顔で松田教官と握手を交わした。

 どうやら通信異常はまだ続いているらしい。こんな事をしていていいのだろうか。まぁこの辺はかなり平和らしく、日常的に上とやり取りはしていないのでそれほど問題にはならないらしい。

 それにしても、こちらでは鬼教官として知れ渡っている松田教官だが、他所では別の顔があるようだ。

 他のSE隊員も松田教官に握手を求め手を伸ばす。

「あの伝説の松田さんにご指導いただけるとは光栄です! 及第点を貰えるよう努力します!」

「あまりの厳しさに、一個中隊を解散に追いやったって話は本当ですか?」

「今の第3から第8部隊までの司令官は松田さんの教え子だとか! 尊敬します!」

 いや、あんまり違う顔でもないのか。SE全体に知れ渡るレベルで、どんな傍若無人を働いたんだこの人は。

「今日の俺はお守りだよ、連絡した通り課外学習っつー事でこいつ等を補佐に着けて今回の任務に当たってくれ。まぁ役には立たんと思うが新任隊員をこき使う要領で存分にパシってやんなぁ」

俺達の嫌な予感は的中したわけだ。

 KR専科は地球防衛軍(SE)の下部組織ではあるが、直接の関わりはほとんどない。これはKR専科が地球圏の、さらに詳しく言えば軌道エレベーターの管轄であるのに対して、SEは火星圏の管轄である為だ。とは言っても全く無関係と言う訳では無く、そもそもKR専科の卒業生の多くがSEに所属したり、活動見学等を推奨していたりする所から見ても良好な関係と言えよう。今回の任務もその一環の様な物で、水族館や動物園などで飼育員の餌やりを体験するのと同じような感覚で、現場の空気に俺達を触れさせようとしているのだろう。

 今この部隊が行っているのは、大昔に沈んだ船のサルベージであった。

 広大な海には、代償様々な船が行方不明となっている。その中には財宝などを大量に積んで沈んだ船も多い。旧文明時代の探索技術ではそれらを見つけ出すことは容易では無かったが、今の技術を持ってすれば不可能ではない。ただ今の時代に、旧文明時代の財宝を見つけた所で大した儲けにはならない。

 この場合は学術的な、人類史的な意味での価値ある品を見つけ出す目論見があるのだろう。むしろ現在のSEは、そう言った名目を掲げる事でしかKRの稼働許可の降りないほどに平和ボケしていると見るべきか。

「では君達にはサルベージの手伝いをお願いしよう」

 現役のSE隊員は、俺達にKRⅡを四機与えると、ナビゲーター達を引き連れて甲板を降りていった。

 事前の説明も何も無しに甲板に取り残された俺達パイロットは、流石に困惑した表情を浮かべて互いに顔を見合わせる。

「まさかいきなり実機に乗れと言うのか?」

「水中用装備は一応シミュレーターで扱った事はあるが……」

「って言うか手順とか教わってねぇンだけどよ」

「……ぶっつけ本番でやって見ろって事だろ」

 あの教官の新派なだけはある、どうやらとことん俺達をこき使うつもりらしい。ちなみに余談だがアルカは着いてこなかった。っていうか教官を炊き付けた後、目を離したら何処かに行ってしまっていた。これだから神出鬼没の異星人は始末に悪い。

 さて、とりあえず実機を前に駄弁っていても始まらない。俺達パイロットのやる事は何処でもそうは変わらない、要するに機体を指示通り動かせばいいだけだ。とりあえず俺達は宛がわれた機体に乗り込み、機動準備に取り掛かった。

 俺達が全身操縦席につくと同時に、機体を乗せた甲板が沈み込んだ。まぁこれから向かうのが水中なので、専用の出入り口に案内されるのだろう。その間に携帯端末を(KR専科指定の水着には、携帯端末を目立たずに保持出来るポケットが以下略)操縦席に取り付け、機体の状況を把握する。

〈水中発射口に機体格納を確認、これより隔壁を降ろして注水を開始します。作業員は速やかに退出してください〉

 機械音声の警告と共に、俺達が連れて来られた格納庫に水が放出され始める。水はどんどんと注がれ、やがて部屋全体を水で埋め尽くした。

〈注水を完了しました。発射口を開放します〉

 正面の隔壁が展開され、そこから先は深い青色の海中の景色が広がっていた。

 言うまでも無い事だが、地上と水中ではKRの操縦方法は大きく変わる。

 地上ではオートバランサーによる重心移動と、操縦桿やペダル操作である程度感覚的に動かす事が可能だ。しかし水中では重力こそ働くとはいえ、移動は基本的にスクリュー等の推進機関に頼る事となる。それも単にスクリューの向きを変えればいいと言う訳では無く、海流や機体に掛かる水の抵抗などの計算に入れなければならず、かなり慣れが必要となる。

〈とりあえずじっとしててもしょうがない、船から出よう〉

 委員長が率先して、機体を船外へと運ぶ。スクリュー操作だけならば足を負傷している委員長でも、操縦桿の操作だけで機体を動かせる事が出来る様だ。もっとも基本動作に限るが。

〈なんて事だ……装備に狙撃銃が用意されて無い……〉

 サルベージ作業の何処にそんな物騒な装備が必要だと言うのか。メイは気落ちした様子で委員長に続く。

〈おっしゃぁ! 俺が一番多くの敵を倒して目立つンだよ!〉

 続いてフレックスが威勢よく飛び出していく。こいつに関してはそもそもサルベージと言う言葉の意味すら知っているかどうか疑わしい。

「さて……と」

 俺も操縦桿を握って動作を確かめる。

どうにも動作がもっそりとしていて反応が鈍い。水中なので機体に抵抗が掛かっているのは分かるのだが、それ以前に操作感度がかなり低く設定されているようだ。まぁ感度が良ければいいと言う訳ではないのだが。特にこういった水中などではちょっとしたことでパニックに陥りやすく、暴れて被害を大きくしない様に機体の反応を下げると言うのはよく聞く話だ。サルベージ作業という事で、機体の調整もパワー重視なのだろう。

 しかしこれは俺好みとは言えない。こんな機体反応では迫りくる魚雷を華麗に避けて敵艦に特攻すると言ったアクロバティックな操縦が出来ないじゃないか。もっともサルベージ作業でそんな状況になる事はまずないのだが。

 沈没船に眠るお宝を守る伝説のクラーケンとやらでも現れて、突発的な戦闘状況にでもならないかなぁ。そんな淡い期待を抱きつつ、俺も皆に続いて大海へと機体を泳がせた。



[アルカの手記-066]


「さて次はアクティビティとやらだな!」

「そうっスね」

「で、アクティビティとは何の事か?」

「まぁリゾート地での遊びの事なんで、遊べばいいっスよ」

「ここではどのような遊びが流行っているのだ?」

「海に囲まれてるっスから、海の遊びっスね、潜ったり泳いだり板や船に乗って波に乗ったり」

「色々と疲れそうだな」

「そりゃ遊びは疲れるモノっスよ、それで姫様どうするっスか? 折角だから泳ぎます? 潜ります? 波に乗ります?」

「その辺は、普段の場所でも出来そうだから今わざわざやる必要はなさそうだな、他には無いか?」

「えっとパンフレットによると、ビーチバレー、水上スキー、グライダー、後はフィッシングっスかね」

「ふぃっしんぐとな? 何やら甘美な響きだな、よしそれにしよう!」

「姫様渋いっスね……後絶向いてないと思うっスけど、釣っスよ?」

「ふ、こう見えても私は昔存在自体が釣りと言われたほどだぞ」

「それ意味分かってますっスか? 褒められてはないっスよ?」



[続く]

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