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[Mission-063]

前回までのMission!


 ジャングルで遭難中の昴流達。

 負傷した委員長を現地で作った担架に乗せて運ぼうとした時、未知の獣と遭遇した。

 ここは生きるか死ぬかのサバイバルの真っ最中。はたして生き残るのは?

[Mission-063]



 野生の獣というモノを知っているだろうか?

 彼らは決して侮っていい相手では無い。

 それが、檻の中にいるのなら人間の敵ではないだろう。彼等に鋼鉄の檻を破る術はないのだから。油断して檻の中に手足を入れたりしなければ、安全と言える。

 しかし我々が彼らの領域に入った時、人間は何処まで対抗できるだろうか? 銃や防刃繊維の衣服が何処まで役に立つ? 奴らは自然に溶け込み、こちらの隙を探っている。不意をついて襲われれば銃も満足には狙えない、鋭く力強い爪や牙に掛かれば、ナイフを弾く衣服も容易く切り裂かれるだろう。何より体の構造そのものが違うのだ。聞いた話では、丸腰の場合の人間は、野生では猫にすら狩られる存在であるらしい。それだけ、野生の動物と人間では持って生まれた素養が違うのである。

 同じ土俵で戦っても勝ち目が無いのは明白だ。だからこそ、奴等との明確な違いを生かすしかない。俺達には野生動物と比べても引けを取らない、考えると言う力がある。それを生かさずして、この生存競争を勝ち抜く事は出来ないのである。

「罠を仕掛けよう」

 そう委員長が言ったのは、夜が明けてからだった。

 ジャングルに日が差し込み、周囲が見渡せるようになってから俺達は、改めて観言が見たと言う獣の痕跡を探してみた。その結果木に着けられた大きな爪痕を発見したのだ。これにより何か大きな獣が周囲にいる事が明らかとなった。

 相変わらず得体が知れないが、人類が地球の隅々に住んでいた時代はもう終わったのである。もはや地球は未知の惑星のような有様になっているのかもしれなかった。

 委員長の提案に、フレックスは異を唱えた。

「ンなまどろっこしいことする前によぉ、さっさと逃げるなり仕留めちまった方が良いンじゃね?」

 罠を仕掛ける時間を割くならば、その分距離を稼いだりこっちから攻める方が良いと言う訳だ。フレックスらしい猪突猛進な発想にメイが意見を挟む。

「このまま策も無く進めば同じように夜に襲撃を受ける事に成る。それに相手は野生の獣だぞ、こっちの接近を先に感じ取って逃げられるのがおちだ、木の上にでも逃げられたらこちらからは手の出し様が無い、少しは考えろ馬鹿め」

「ああン!?」

 こう木々が生い茂って居ては満足に遠くを見渡す事も出来ない。俺達の持つ電磁パルス銃の射程は精々5~10m程度だ。もともと護身用の武装なので、狙撃には向いていないし大型の肉食動物にどこまで有効化も定かでは無い。

「罠を仕掛けるって言ってもどう言うのを仕掛けるんだい? 生憎と地雷や手榴弾は持っていないんだけどさ」

「罠っていっても、もっと簡単な奴さ」

 そう言って委員長が説明したのは、枝やロープを使った簡単な仕掛けであった。構造自体はメイが食肉を捕まえる為に設置した物と似た様な奴だ。

「別に罠で仕留めなくていい、大型の肉食獣を殺す罠は流石に手間が掛かり過ぎる」

 委員長は、獣の気配を感じたら何人かで囲み捕縛用の罠に向かって誘導すると言う作戦だと説明した。罠に上手く掛ければ動きも止まる、そこに向かって電磁パルス銃で止めを刺すとの事だ。

「そう上手く行くか?」

 フレックスはまどろっこしい罠を使った先方には否定的だ。正面から突っ込んで強引に状況を打開する英雄思考なんだろう、この場合は蛮勇だと思うが。

「罠は二重三重に仕掛けるつもりだ、それに俺達Cクラスの連携が、野生動物一匹に負けると思うか?」

「違ぇねぇ!」

 まったく委員長は、俺達の士気を高めるのが上手い。

 こうして皆は委員長の指揮で、罠を張り巡らせる事にした。そのついでに集めた食糧で空腹を見たし準備を整えていると、いつの間にか太陽は仕事を終え、月が顔を出し始めていた。

 夜が牙を剥く。

 しかし俺達も容易く屈するわけにはいかない。

 日が沈み切る前に熾した松明が、俺達の周りを洸に照らす。携帯端末の明かりでも良かったが、ここで使い切る訳にも行かない。それに燃え上がる炎は不思議と俺達に立ち向かう勇気をくれるようであった。

 暗闇の奥から、ガランガランと鳴子の音が響く。

 これは枝にロープを張り、木の板を吊るした物で鳥脅しとも呼ばれている。昼間の内に仕掛けて置いたもので、本来は音で動物を驚かせ追い払う為の物だ。しかし音に怯えて逃げ出さない相手の場合は、その動きを把握すると言う用法になる。

 ガランガランと言うジャングルでは聞きなれない人工的な音はどんどんと近づいているようだ。

 一際大きな焚火を中心に、俺達は複数のチームに分かれて対象を迎え撃つ事にした。

 獣がこちらに襲い掛かってきた場合、俺の樹で迎え撃つ事に成る。もし迎撃に失敗した時の保険として、傍らには木刀で武装した六郎が控えている。いつの間に日中に太い枝を削って作りだしたらしい木刀に俺が興味を示すと。

「……言っていなかったが、剣術の心得がある」

 とさりげなく答えた。なるほど、構える姿がどうりで様になっていると思ったら。

 他のチームは、フレックスと芦屋、メイとカレン、そして中央の罠の付近には動けない委員長と、女子達、そしてその護衛にジェスティが居る。

 仲間の位置関係を思い出していると、森の奥から電磁パルス銃から発車される独特な電磁音が響いた。同時に通信から。

〈こちら3班! なんかでっけぇ獣が居た! そっち行ったぞ!〉

 どうやらフレックスのチームが遭遇したらしい。

「相変わらず引きが良い!」

 鳴子の音は激しく、そして確実にこちらへと向かっていた。咄嗟に音の方に向かって銃口を向けるが、松明からすぐ向こうは真っ暗闇だ。しかも鬱蒼と木々が生い茂っていてまともに狙いを付ける事が出来そうにない。戸惑っていると、スッと六郎が松明を俺に渡してくる。

「……持っていろ」

 その口調には有無を言わせぬ迫力が籠っており、俺は反論できず松明を代わりに掲げる事にした。六郎は木刀を両手で構え、鋭く闇の向こうに視線を合わせる。俺には何もない暗闇にしか映らないのだが、そう言った訓練を積んでいたのか六郎には向こうから迫る気配を感じとったらしい。茂みが激しく揺れると同時に六郎が木刀を振るった。

 まるで黒い風が駆け抜けるようだった。

 いつの間にか鳴子の音は俺達を通り過ぎて、他のチームの方へと向かっていった。

〈……こちら4班、獣と遭遇、取り逃がした〉

 状況を報告し、獣に勇敢に立ち向かった六郎の方に視線を向ける。

「大丈夫か?」

 松明の明かりで見る限り、六郎にけがは内容だった。しかしあの一瞬の交差で六郎の木刀は半ばから拉げていた。

「手応えはあった……だが、武器が脆かったな」

 苦々しくそう言って、折れた木刀をその場に捨てた。

 って事はちゃんとした剣とか刀だったら、今この場に獣の両断された死体でも転がっていたんだろうか。それはそれで遠慮したい。

〈こちら2班、敵と遭遇した、罠に誘導したぞ!〉

 通信から味方の近況が報告される。そろそろ罠に掛かる頃だろう、後は罠に掛かった獣を電磁パルス銃で蜂の巣にすれば終わりだ!

 俺達は松明を手に、罠の仕掛けられた場所へと急いだ。

 

 そこでは早くも、委員長が矢面となって獣を迎え撃っていた。

 委員長の傍らでジェスティが電磁パルス銃を構えているが、獣に怯えて腰が引けている所為か狙いが定まっていない。

 獣は唸り声を響かせながら、ゆっくりと焚火の光の中に姿を現した。

 暗がりに溶け込む様な黒い体毛、猫科を思わせるスマートな体形、そして鋭い爪と牙。それらは肉食動物の特徴としてはよく見かけるものだが、しかし記憶のどの動物にも当てはまらなかった。

 獣が飛び掛かろうと身体を潜ませる。そのタイミングで委員長が手元のロープを素早くナイフで切った。次の瞬間、上から落ちてきたパラシュートを加工して作った網に黒い獣は見事に捕らわれる事に成る。

 獣は地面で少しもがいた後、茂みへと逃げていった。

 一先ずの脅威が去った事で、委員長の背後にいた女生徒達とジェスティから安堵の吐息が漏れた。

「よし、後は2~3班で追いかけて止めを刺せば完了だ。まだ気を抜くなよ!」

 委員長は冷静に次の指示を俺達に与える。

「皆さん怪我はありませんか?」

「っしゃ、後少しじゃねぇか! とどめは俺が頂くぜ!」

「油断するなよ、手負いの獣ほど気を付けなければいけない」

 確かにメイの言う通りだ。網に捕らえただけでは殺せない。ここは電磁パルス銃で確実に止めを刺しておきたい所だ。

「ちょっと可哀想かも」

 厳しい事を言うがこれも自然の掟である。俺達が無事生き残る為にも、ここで手を抜く事は出来ない。

 電磁パルス銃は強い電磁波と電気で対象を攻撃する武器で、本来は電子機器を無効化するための兵装だ。生き物にあてれば気絶くらいはさせる事が出来る。

 殺す場合は最大出力を至近距離で当てなければいけない。網に絡まって動きの悪くなった今なら、障害物が多いこの森の中でも電磁パルス銃を当てる事が出来るはずだ。

「後は任せるぞ」

 委員長は動けないので追撃部隊である俺達が後は頑張るしかない。

「ああ」「大丈夫だって!」「善処する」

 獣の逃げた方向に向かって、俺とフレックスとメイは銃と手製の槍を手に駆け出した。

 近く決着の時が訪れそうだ。



[アルカの手記-063]


「そうだ、いっそ我もばっかんすに行けばいいのだ!」

「また唐突な思い付きっスけど悪くはないっスね。現地調査と言う名目で、リゾート地を回ろうっスよ!」

「む、普段は色々と戒めるのに珍しく乗り気だな?」

「いやーやっぱずっと船内に居るんで暇で暇で」

「思えば隠れ潜む事を重視し過ぎて、この星の事をまったく調べていなかった、この機会に色々と探って行こうと思う」

「おお、姫様にしては珍しく建設的な意見っスね!」

「我にしてはとはどういう意味だ?」

「それで何処に行くんスか?」

「ふむ、調べた所。大体地球の民はばっかんすには南国へ行くのが基本らしい」

「南国っていうと?」

「まぁ暑い所だな。あと島とかだ、赤道付近に集まる習性があるらしい」

「暑くて島で赤道直下って、普段僕らが居る所じゃないっスか」

「うむ、だからここは逆に考えて寒い所に向かうと言うのはどうだろうか?」

「えーそれはちょっと」

「なんだ急にやる気を失くして?」

「だって寒いと僕冬眠しちゃうっスから」

「ああ、トカゲ基準だったな……」



[続く]

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