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[Mission-061]

前回までのMission!


 ジャングルで遭難中の昴流達。無事Cクラスのメンバーと合流を果たし、自分達の環境改善に勤しむ。

 しかしこのままでは、授業が遅れるばかりと気づき、脱出を決意するのであった。

[Mission-061]



 昔[ジャックと豆の木]とか言う物語があったらしい。

 不思議な豆を撒いたら、翌朝には天にも届くほどの樹が生えたとか言う作り話である。しかし、今目の前に聳える高さ100mに届きそうな巨大樹がマメ科の植物だと聞いて、あれはもしかしたら作り話では無いかもしれないと思ったりした。

 ジャングルには様々な植物が生えており、ほとんどは平均しても70~80mの巨木だ。その為宇宙まで伸びている軌道エレベーターも、樹木に遮られて窺う事は出来ない。

 その中でも一際大きくて白い木の前に俺達は居た。この樹は昔、精霊が宿ると言われて伐採すると祟られるとか恐れられていたらしい。

 周囲が巨大な樹で覆われているならば、一番高い樹に登ればいい。俺達はCクラスの中でも運動能力の高い鷹空とメイの二人に、軌道エレベーターまでの道のりを確認して貰っている。

「見えるか―?」

「確認した! ここから北の方角だ!」

「20~30kmって所だな」

 地上からの声に、樹上の二人が大声で答える。

 一応訓練で木登りくらいは特訓しているが、それでもこの高さの樹を何の迷いも無くスルスルと登っていく二人には唖然とするしかない。

 登山とかを趣味にしている委員長はまだわかるが、メイは一体何で鍛えているんだ。家庭菜園に木登りの秘訣でも隠れているんだろうか。

 樹上の雄大な光景に憧れなくも無いが、地上から100mも離れた高所は流石にノリでは登れない。普通木登りは一人一本で行う所を、二人で登ったのも不慮の事故の際に互いを支え合う為だ。

 そう思っていた矢先、樹上で何やら動きがあった。

「キャッ!?」

「危ない!」

 枝を折ってメイがバランスを崩したらしい。それを空鷹が何とか支えたようだが、一カ所に重量が掛かり過ぎている。メキメキと枝がしなりやがて連鎖的に折れ始める。

 地上の皆が思わず息を呑む。

「わ……」

「動くな、支える……!」

 空鷹が何とか太い枝に足を絡めた事で、落下は阻止する事が出来た。

 落ち着いた所で、二人は紐を使ってゆっくり降りてくる。

「だ、大丈夫!?」

 空鷹はメイに支えられテナントか地上に降りるも、すぐに座り込んでしまった。

「私は問題ないが、私の所為で空鷹が足を負傷した様だ」

「いや、これは俺が勝手に捻った怪我だ、誰かの所為じゃない」

「診せてください」

 すぐさま副委員長の葵が掛け寄って診断を始める。彼女はCクラスの保健委員的な役割も担っており、携帯端末の拡張機能も医療系で占めている。端末のスキャンモードを足にあてて骨折などの有無を確認し始める。

「……折れてはいないようですけど、ひびくらいは入っているかもしれません」

「じゃぁ脱出は諦めた方が?」

「いや、助けが来る保証も無い。軌道エレベーターの方角は分かったんだ、俺を置いて皆で救助を呼びに行った方が速いだろう」

 いや委員長、ここ等辺に何が潜んでいるかもわからないのに置いていくのは無理な話だ。

「昨日切った木材でイカダを作って河を下るのは?」

「まだ増水の影響で流れが速い、空鷹がこの様子ではもし転覆したら泳げないだろう」

「そう言えば上で何があったんだい? メイにしては珍しく動揺していたようだけどね?」

「ああ……これを見つけてな」

 そう言ってメイがポケットから何やら布をとりだして見せた。

 それは血に塗れた、衣服の切れ端である。

「枝に引っ掛けるようにして、衣服があったんだ。思わず触れたら血が付いていて……ちょっと動揺してしまった、空鷹すまない」

 珍しくメイが、自分の失態を悔やむように顔を俯ける。

「気にするな……」

 空鷹は優しく声を掛けた。

「え、ちょっと待ってその血って、誰の?」

 少し遅れて観言が、メイの差し出した布に慌て始める。それもそうだろう、あのメイだって枝から落ちかけたのだ。ここに来て急にこんなサバイバル目いたものが出て来れば誰だって動揺する。

「誰かが襲われた記憶が無ければ、俺達じゃない事は確かだ」

 それは確かに獣に襲われた衣服であった。

「これを見つけた場所の近くに、獣の爪で引っ掻いた様な傷跡もあった」

「って事はだよ? もしかして」

「今はこの服と血が誰の物かはどうでもいい、一つ言える事は」

 空鷹が、冷静に告げる。

「この高い樹の上を悠々と上る凶暴な獣がこの辺りにいるって事だ」

 全員の表情が緊張で強張る。

 ようやく俺達は、生きるか死ぬかのサバイバルの最中に居る事を思い出したのだ。

 ここはいざとなれば教官が守ってくれる様な安全な場所では無い。生きる為には行動をしなければ、そして時には戦い、相手の命を奪わなければならない大自然と言う戦場の中なのである。

 俺もまた、あの時の。異星人の機動兵器のコクピットの中で感じた肌がざわつく感覚を思い出していた。

「パラシュートと枝で担架を組めないか?」

 俺の提案に皆が頷き始める。

「そうだな、そうすれば空鷹くらい運べるだろ」

「皆すまない」

 空鷹の言葉に、俺は肩を竦めて言い返す。

「まぁいざと成ったら囮として置いていくよ」

「……そうならない事を願おう」

 とりあえず丈夫そうな枝をいくつか見繕い、それとパラシュートを組み合わせて、怪我人を運ぶ担架を俺達は作り上げた。そこに足を負傷した空鷹を乗せる。箱ぶ役目は男子で交代する事にした。

「それで、拡張機能に銃の機能を付けているのは居るか?」

 委員長が全員を見渡して問いかける。

「俺はパルスガンを」

「ああ僕も」

「俺も付けてるぜ!」

 俺とジェスティとフレックスが手を上げる。

「じゃあ携帯端末に拡張パーツを付けて、いつでも撃てる様にしてくれ、後お前達の携帯端末は非常事態に備えて極力使わない様に」

 恐らく獣が出た時に備えての事だろう。

「そう言えば、昴流は以前遭難された事がありましたわよね?」

「え、あ、ああ……」

 唐突にカレンに名前を呼ばれて、慌てて頷いた。確かに遭難はしたが、それをこの場で言う必要があるんだろうか?

「なら、こういった状況には慣れているんじゃありません? 皆の先導をお願いされてはくれません事?」

 確かにあの時と状況は一緒だが、しかしこういうのに慣れってあるんだろうか。

「そうだな、ここは経験者に委ねた方がよさそうだ」

 何時に無く自信なさ気のメイが、俺に携帯端末をマッピングモードにして手渡してくる。

 皆、期待に満ちた視線で俺を見つめてくる。これは断れる雰囲気じゃないな。

「よし任せろ、この程度の遭難なんざ朝飯前さ、明日には柔らかい布団で寝ようぜ!」

 皆の視線を背中に感じつつ、俺は仕方なく先導役を引き受けて歩き始める。

 なぁに、ここから北を目指せばいいんだろう? 簡単楽勝。こう見えて方向感覚には自信があるんだ。教官もよくあんなアクロバティックな動きをしてて座標を見失わないもんだと感心したくらいだし。宇宙系ミッションでも錐揉み回転しながら宙返りしつつ、所定の侵攻コースに機体を合わせられる自信がある。この空間把握能力を持ってすれば、ジャングル脱出なんてイージーゲームだね。簡単過ぎて欠伸が出らぁ。

 



[アルカの手記-061]


「ふむ[ジャックと豆の木]とは何だ?」

「あー地球にあるお話っスよ」

「どう言う内容なのだ? 豆の栽培の話か?」

「違うっスよ、まぁかいつまんで話すとジャックって人が不思議な豆を手に入れて、その豆から生えた豆の木が天まで届くほどに成長するんスよ、そいで登ってみたら蜘蛛の上の巨人の城に辿り着いたって感じっスかね」

「ほう、相変わらず地球人と言うのは荒唐無稽な話を好むものだな」

「こういった話は何処にでもある物っスけどね」

「ならば我々にもこういった御伽話はあるのか?」

「そりゃ勿論あるっスよ、そうっスね、有名な所では[白姫と黒騎士]とかっスかね」

「どの様な話なのだ?」

「まぁそれこそ良くある話っスよ、姫様とそれに仕える騎士の身分差の恋って奴っスね。それでこの手の話にはありがちな、結末が複数あって騎士が処刑されたり、姫と駆け落ちしたり、現王の不正を暴いて新たな王に成ったりと、それはもう色々と」

「そのような話は聞いた事が無いぞ!」

「そりゃ、この話がきっかけで皇機種に使える騎士は全員女性人格に限定されているとか噂されてますからね。皇機種の方々にはあまり好まれていない話らしいッス、それで派生して[紅の王と蒼の女騎士]とかもありますッス」

「何と、お前達機星に女性人格多いなと思って居たが、そんな理由だったのか!?」

「お話の黒騎士に恨みはないっスけど、まぁとんだとばっちりを喰らったわけっスよ」



[続く]

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