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[Mission-060]

前回までのMission!


 ついに、ジャングルで散り散りになったCクラスの仲間が全員集合となった。

 みんなの力を合わせれば、出来ない事など無いかのように思えたが?

[Mission-060]



「それがですね、電波や光無線による通信がこの辺では一切繋がらないんですよね」

 ようやく合流出来たシルビアに衛星通信が可能かと聞いてみたのだが、返ってきたのはこの様な答えだった。

「おかしいんですよ、磁気異常でも砂嵐が起こってる訳でも無いですし、でも妨害されているかの様に通信がさっぱり通じないんですよ」

 シルビアが言うには、ジャングルに降り立って直ぐに通信は試したのだが、携帯端末に登録されたあらゆる通信手段が繋がらなかったのだと言う。

「こうなると携帯端末の故障も疑いたくなりますが、機能には何の問題も無いと表示されています」

 一瞬教官がこの辺一帯にECMでも展開しているのかと疑った。しかし、流石にそこまでの手間を掛けて俺達に嫌がらせをする意味が無い。それにこの状況下では教官も俺達の様子を探れない。松田教官ならこっそりと俺達の様子を小型の機械などで窺って、高みの見物でも決め込むはずである。となると、今の状況は教官も予想外の事態という事に成る。

「だとしたら、本格的に生き残る方法を探って行かなきゃな」

 思ったよりも深刻の事態かも知れない。

 それだと言うのに。

「追加の木材持ってきたぞ」

「だぁぁもうぅ! 重いってンだよ!」

「ああ、加工したらそこに置いておいてくれ、今から浴槽を作る」

「おおぅい、魚獲ってきたぞ」

「大漁だな! 食べきれない分は燻製にしとくか……」

 元気はつらつな委員長の指示のもと、我等Cクラスは豊かな暮らしを求めるべく拠点を改造しているのであった。

「浴室のデザインはどうしますか?」

「檜とまでは言いませんが、木造のゆったり出来るお風呂が良いですねぇ」

「あ、なら露天にしましょうよ! 間を板で区切って!」

「ハッハァ、そんな大量のお湯をどうやって沸かすんだい?」

「ああ大丈夫だボイラー室も後で作る予定だから」

「ドラム缶でもあると便利なんだがな……まぁ無いならないなりに何とかするさ」

 いやいやいや、お前ら頭おかしいのか。住み良くしてどうする。

 委員長は根は真面目で一生懸命なのだが、たまに一生懸命さや努力の方向性を間違える事がしばしばおこる。

 しかし通信が通じないか。軌道エレベーター付近でそんなことは基本的にあり得ない。軌道エレベーターは宇宙への簡易な移動手段であると同時に、地上における情報の集約点でもあるからだ。そしてこのような非常事態は今回が初めてと言う訳では無い。先週にも俺達の軌道エレベーター付近で起きたのだ。だから皆取り乱さずに冷静に受け入れていられるわけだ。確かあの時は異星人の襲来が原因だったが、今回も? いやまさかな。

 委員長に指示されて身体を動かしている内に、気が付けば日が暮れていた。

 家の改築はまだ途中ではあるが、一時的にパラシュートを組み込む事でこの場は凌ぐことになった。日中に女子が集めた食材を薪にくべて全員で輪になって座る。

 やはりシチュエーション的にはキャンプにしか見えない。Cクラス全員が揃えば、もうしんみりとした雰囲気は何処かに吹き飛ばされてしまい、騒がしい声がジャングルの夜に木霊する。

「おぉうい! その魚俺がキープしといた奴だぞ!」

「ハハァ? 名前でも書いておいたのかいぃ?」

「食事中は静かにしろ」

「まぁこんな場所だし立章騒いでも問題ないだろ、それに魚もまだ沢山あるしな」

「やっぱさぁ! ここはでっけぇ櫓組ンでキャンプファイアーだろ!」

「薪を無駄に燃やすのは賛成しないな」

「でもさ大きな煙を立てれば、軌道エレベーターからも発見されやすくなるんじゃ?」

「ここら辺は木が高く密集している、燃え移って火事になる危険があるな」

「それに沈下する為の水も用意出来ない、残念だがキャンプファイヤーは見送りだな」

 何人かの生徒から不満の声が上がる。何故そこまでしたがるキャンプファイヤー。

「それで家の方は何処まで進みましたか?」

「ああ、もうすぐ屋根の修繕が終わる所だ、風呂や離れは後回しにして、先に必要最低限の箇所を作った方が良いな、六郎、水路を引けるか?」

「……竹があれば楽なんだがな、それよりは木製の貯水タンクを作った方がいい、定期的に雨も振るようだしな」

「今の内に地下室も掘っておこう、家の拡張に合わせて地盤を補強する必要もある」

「……最終的にどんな家になるのか心配だわ」

「そりゃ勿論敵兵の襲撃を迎え撃ち、航空機の爆撃にも耐えうる頑丈な家を目指すさ」

 戦時中か! どうすれば俺達以外誰も居ないこんなジャングルの中で、こうもサバゲー脳がフルスロットル出来るんだろうか。

「贅沢を言えばテレビが観たいね」

「通信異常が起きてますからねー、この辺はどの周波を探しても何も拾えないですよ」

「携帯端末を改造してアンテナでも作るか、いずれは通信異常も収まるだろう」

 そんな何でも現地調達で作ろうとするな。ってか通信異常収まったら助けを呼べ!

「それよりも安定的な食糧調達の為に手ごろな動物を飼ってはどうだろうか?」

 メイは農耕に次いで畜産を始める気らしい。正気かこいつ?

「あ、それいいかも! 私兎飼いたい!」

 観言、愛玩用じゃないんだからな? 後で喰うんだからな? その時になって後悔しても知らんぞ。

「野生の動物は飼育には向かないぞ、弱るか病気になって早死にするだけだ、捕らえてすぐに食べた方が良い。活きの良い内に食べるのが一番おいしい」

 六郎が火の勢いを調整しながら、畜産には反対の意見を述べる。

 まぁそんな感じで、全員前向きに生きている様だ。

 そう言えば、こうやってクラスメイトで火を囲むなんて事今までやった事が無かったな。

 外出してもいつも訓練や実技で、こうやって笑い合うような事は無かった。クラスメイトととは言っても、全員火星へ行くための足掛かりとか踏み台とか、蹴落とすべきライバル関係と言う意識が何処かあり、一歩踏み込む事が出来なかった。こうして輪になって楽しく過ごす日が来ようなんて今まで思いもしなかったな。

 火は暗闇を明るく照らす。それを見ていると抱えていた不安や恐怖が薄れる様な気がした。そうだ悩みも弱音も、全部こうして焚火にくべて燃やしてしまえばいい。それらは灰と共に天まで昇って行く事だろう。

 そうすればきっと、俺達はもっと強くなれる気がする。

 そして願わくば、ジャングルからの脱出にもうちょっとやる気を出してくれれば言う事無しなんだが。

「それにしてもよー、今頃他の連中は何してんだろ―なァ」

 焼かれた魚を頬張りながら、フレックスが何となく話題を振る。

「時期的には合同演習が近いな」

 委員長の呟いた合同演習とは、我等KR専科における伝統行事の一つである。A、B、Cの三クラス合同での演習なのだが、実質クラス対抗の攻防戦となっている。その成績はもれなく成績や今後の進路にダイレクトに響くものであり、時期が近づくとどのクラスもその練習や作戦に励むのである。

「じゃあその訓練かしら?」

「今回全クラスに実機配備されたからね? もしかしたら今回は実機を使っての演習かもねぇ?」

「え、まだチーム連携のプログラムとか出来上がってないんだけど」

「現在の装備に対する問題点もまだ検証し終えていませんね」

「おいおい大丈夫かよ?」

「もしかしてこうしてのんびりサバイバルしている余裕ないんじゃない?」

「ってか、このままここで過ごしてたら除籍って事に成るかもしんないじゃん!?」

 ようやく全員に、こうしてのんびりして居る訳にはいかないと言う意識が芽生えたようである。

「…………よし」

 その一言で、委員長がDIYをする日曜の父親のような穏やかな目付きから、軍人が放つ鋭い目つきに変わる。

「今日は早く寝ろ、明日はこのジャングルを脱出するぞ」

 ようやくいつもの委員長が戻ってきたようである。

 出来れば、損得勘定からとかでは無く自発的に戻ってきてほしかったが。

 




[アルカの手記-060]


「皆で一緒に何かすると言うのは良い物だな」

「そう言えば姫様は常にお一人でしたっスね、こういうのは傍目には楽しそうに見えるっスけど、人との関係とか結構面倒臭いっスよ」

「ほう、そういうお前は合同で何かした経験があるのか?」

「まぁ僕等兵器っスから、複数人で任務をこなした事はあるっスよ、いや協調性のある機星とは仲良く出来るんスけどね、誰とは言わないっスけど、中には我が強かったり自己中な奴とかが多少は」

「大変なのだな」

「そうなんスよ、特に騎士関連の人達は仕切りやだし、聖騎士の方々は基本的に動かないわで、結局あくせく働くのは僕等兵士階級ばかりでー」

「上の者の命で下の階級が働くのは当然ではないか?」

「まぁ一番のトップがこれなんでしょうがないとは思うんスけどねー」



[続く]

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